第4話 追放

朝日が昇り始めた頃、ラフティは村の広場に立ち尽くしていた。夜明けの光が、焼け落ちた家々と荒れ果てた村の惨状を照らし出している。彼の胸の中では、深い罪悪感と孤独が渦巻いていた。


「なぜ、こんなことに……」


ラフティは拳を強く握りしめた。村長を救うために必死で戦ったが、村の多くの人々は命を落とし、村自体が壊滅的な被害を受けていた。彼を取り囲む生き残った村人達の視線は冷たく、非難と怒りが入り交じったものだった。


「お前が村に災いを招いたんだ!」


「お前が盗賊まがいなことばかりしてるから、こうなったんだ!」


村人達の囁きが次第に大きくなり、ラフティに対する憎しみの声に変わっていった。彼は耐えるように視線を下げ、何も言わず立ち尽くしていた。そのとき、村長が杖をつきながら、重い足取りで人々の間を進んできた。


「ラフティ……」


村長の声は低く、しかしはっきりとしていた。


「お前が私を救ってくれたことには感謝している。しかし、多くの村人が命を失い、村は壊滅してしまった。人々はお前を災いを招いた者だと信じている。このまま、ここに留まらせることはできない…」


ラフティは目を潤ませながら村長を見つめた。


「俺は……ただ村を守りたかっただけなんです」


「わかっている。しかし、今の状況ではお前をここに置くわけにはいかない。すまないが、この村を出て行ってくれ」


村長の言葉が、ラフティの胸を締め付けた。信頼していた人々からの拒絶に、彼は深い絶望感を抱いた。


「出て行け! 二度と戻ってくるな!」


群衆の中から誰かが叫び、その声に他の村人達も同調した。


「お前なんか、もう仲間じゃない!」


「災いを呼び込んだ者め!」


ラフティはもう耐えきれず、無言のまま村を後にした。背後に響く怒りの声が、彼の心に重くのしかかる。涙が滲み、胸が痛むが、立ち止まることはできなかった。


1.城下町への旅路


村を出たラフティは、疲れた体を引きずりながら道を進んでいた。行くあてもなく、ただ遠くに見えるアークレイン城を目指して歩き出す。冷たい風が彼の頬を打ち、心の中の孤独感をさらに深める。


「俺にはもう、帰る場所なんてないのか……」


ラフティはぽつりと呟き、握りしめた短剣を見つめた。妖精から授かったこの短剣だけが、今の彼にとって唯一の支えだった。


しばらく歩くうちに、アークレイン城の輪郭が見え始めた。しかし、何かが違う。通常、城下町から聞こえてくるはずの活気あふれる商人や旅人達の声が、どこからも聞こえてこない。ラフティは眉をひそめ、城下町へと足を早めた。


2.魔物に襲われたアークレイン


城下町が目の前に差し掛かると、ラフティは恐ろしい光景に立ちすくんだ。町の壁には黒い煙が立ち上り、街全体が炎に包まれている。彼の胸は冷え、心臓が早鐘のように打ち始めた。


「まさか……ここも……」


魔物達の襲撃は、アークレイン城やその城下町にまで及んでいた。ゴブリンや他の獰猛なクリーチャー達が町の通りを支配し、逃げ惑う人々に襲いかかっている。兵士達も必死に防衛していたが、数の力で圧倒され、次々と倒れていった。


「くそっ……!」


ラフティは短剣を握りしめ、町へと走り出した。自分の村を守れなかった事が彼の心に重くのしかかっていたが、この町まで見捨てるわけにはいかなかった。もしここでも無力なら、何のために妖精から力を授かったのか分からなくなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る