第2話 死神との対決

ラフティは短剣を握りしめ、村長の意識に飛び込むと、目の前に広がっていたのは漆黒の闇に覆われた異様な世界だった。荒れ果てた地面、空には赤黒い不気味な月が浮かび、影が蠢く恐ろしい光景が広がっている。ここは村長が見ている悪夢の世界だ。


「こんなところで、村長が……」


ラフティは不安を抱きつつも、夢の中で必死に村長を探し始めた。だがその時、不気味な冷気が背後から迫ってきた。ラフティが振り返ると、そこには現実世界で見たあの姿——グリムリーパーが、ゆっくりと浮かび上がってきた。巨大な鎌を持ち、骨の顔がフードから覗いている。その姿はまさに死そのものを象徴しているかのようだった。


「ここまで来るとはな……だが、ここで終わりだ」


死神の声は冷たく、ラフティの心に重く響いた。鎌をゆっくりと持ち上げ、空間全体に死の気配が満ちていく。ラフティは恐怖で一瞬動けなくなったが、村長を助けたいという思いが彼を動かした。


「村長を返せ!」


ラフティは叫び、死神に向かって短剣を構えた。だが、その巨大な鎌が一瞬で振り下ろされ、彼の動きを寸前で封じ込めようとする。ラフティは反射的に身をかわしたが、足元の大地が砕け散り、彼は転げ落ちるように後退した。


「強すぎる……どうすれば……」


ラフティは冷や汗を流しながらも、必死に対策を考えた。しかし、グリムリーパーは間髪入れずに次の攻撃を仕掛けてきた。鎌が何度も風を切り、闇が彼を覆うように迫ってくる。ラフティは素早く身をかわし続けるが、死神の動きは圧倒的で、まるで逃げ場がないかのように感じられた。


「くそっ……このままじゃ……」


ラフティは追い詰められ、体力と精神が削られていく。攻撃する隙は一切見えず、死神はじわじわと彼を追い詰めてくる。さらに近づく鎌の刃をギリギリでかわし続けるが、もはや限界に近い。ラフティの心に、徐々に絶望が広がり始めた。


だが、その時——。


「村長を、助けたい……!」


ラフティの心に、強い願いが再び燃え上がった。村長を救いたいという思いが、彼に新たな力をもたらしたのだ。短剣が突然、光を放ち始め、闇の中で眩い光を放射した。


「これが、妖精が授けてくれた力……!」


光に包まれたラフティは、再び立ち上がり、死神に向かって突進した。グリムリーパーは鎌を再び振り下ろすが、今度はラフティの動きがさらに鋭く、素早くなっていた。彼は鎌の刃をギリギリでかわし、そのままグリムリーパーに突き刺さるように飛び込んだ。


「これで終わりだ!」


ラフティの短剣が、グリムリーパーの闇を切り裂き、深々とその胸に突き刺さった。光が闇を貫き、死神は苦痛の声を上げながら後退した。彼の闇は徐々に薄れ、やがて霧のように消え去り、その存在も薄れていく。


「村長を……守りたかったんだ!」


ラフティがグリムリーパーに刺さった短剣に最後の力を込めると、光が爆発するように広がり、死神は完全に闇の中へと消えていった。


そして、あたりの空気が静まり返った。悪夢の世界は徐々に消え去り、自分の意識が現実世界へと戻っていくのを感じた。


現実に戻ったラフティは、村長の体が安らかに横たわっているのを確認した。彼の呼吸は穏やかで、もう悪夢に囚われることはない。


「村長……」


ラフティは疲れ切って地面に座り込んだ。戦いは終わり、村長を救えたという安堵が彼の胸に広がっていった。しかし、これが始まりに過ぎない事も彼は理解していた。死神は消え去ったが、村を襲った災厄はまだ終わっていない。


「これから、どうなるんだろう……」


ラフティは短剣を見つめ、その光が再び穏やかに輝いているのを感じた。この剣が、これからの道を切り開いてくれるのだろう——そう信じて、彼は再び立ち上がった。

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