第1話 村の襲撃
ラフティが川岸で目を覚ました時、全身が痛みで軋んでいた。だが、痛みよりも先に何か嫌な予感を感じ、急いで水から這い上がる。ラフティは自分の住む村の方角へ歩みを進めると、彼の目に映ったのは遠く煙が立ち上る村の光景だった。
「なんだ……?」
村が燃えている。黒い煙が空を覆い、遠くから人々の悲鳴が聞こえてくる。ラフティは混乱しながらも、夢で見た妖精の言葉が脳裏をよぎる。
「まさか、魔王の軍勢が……」
村へと急ぎ足で向かう彼の心臓は、恐怖で跳ねるように鼓動していた。村の入り口に辿り着くと、そこで目にしたのは、ゴブリンの群れが次々と村人達を襲っている光景だった。短い剣や棍棒を振り回し、家畜を襲い、村人を捕まえては容赦なく殺していく。
「くそっ……!」
ラフティは無意識に腰にあった短剣を握りしめていた。まだ、自分が戦えるのかどうかもわからない。それでも、何かしなければという思いに突き動かされ、恐る恐る前へと歩みを進めた。
1.村の戦士達の奮闘と絶望
村の戦士達も奮戦していた。しかし、数で圧倒される彼らに、勝ち目など殆どなかった。戦士の一人が叫びながらゴブリンを一体切り伏せるが、すぐに別のゴブリンが背後から飛びかかり、その首に牙を立てた。
「ぐあああっ!」
血が吹き出し、戦士の体は無残に倒れた。ゴブリン達は勝利のような奇声を上げながら、村人達に次々と襲いかかっていく。老いた者、子供、逃げ惑う者達が次々と捕らえられ、ある者は命を奪われ、ある者は捕虜として引きずり込まれる。
ラフティの心に浮かんだのは恐怖だけだった。目の前の光景は、これまで彼が経験してきたどんな困難とも違う。彼は盗賊としてのスキルには自信があったが、正面からの戦闘など全く経験がなかった。
「俺は……本当に戦えるのか……?」
足がすくむ。だが、妖精から授かった短剣が手の中で光を放ち、彼の心に不思議な感覚が広がった。
2.初めての戦い
「俺がやるしかない……!」
覚悟を決めたラフティは、手にした短剣を振りかざしてゴブリンの群れへと飛び込んだ。その瞬間、身体が異常な速さで動き出し、まるで自身の力ではないような感覚に包まれる。
一瞬でゴブリンの背後に回り込むと、その首筋を一閃した。ゴブリンは断末魔の叫びをあげ、そのまま地に崩れ落ちる。ラフティはその動きに驚きつつも、次々とゴブリンを倒していく。
だが、次から次へと襲いかかってくるゴブリンに押され、傷を負いながらも必死で応戦するラフティ。何度か死の恐怖にさらされるが、短剣の力に支えられ、村の中央にいた最後のゴブリンを倒した時、彼の身体は限界に達していた。
3.死神の出現
「はぁ…はぁ…」
村は静まり返っていた。だが、その沈黙は不気味だった。生き残った村人は少なく、多くの者が命を落とし、家も燃え尽きていた。ラフティは疲れ切り、地面に膝をついていた。
その時——。
空気が凍りつくような冷たさが、ラフティの背後に迫ってきた。彼は振り返り、目を疑った。
そこに立っていたのは、巨大な黒いローブをまとった異形の存在——グリムリーパー。骨の顔がフードの中から覗き、その手には巨大な鎌が握られていた。彼の周囲には冷たい霧が立ち込め、まるで死そのものが具現化したかのようだった。
グリムリーパーは、村の中央に倒れている村長へとゆっくりと近づいていく。その足元には、すでに倒れた村人達の無残な姿があった。魂を刈り取る者——その名にふさわしく、死神は村長の魂を狙っているのだ。
ラフティは恐怖に凍りつき、その場から動けなくなった。心臓が激しく鼓動し、冷や汗が背中を伝う。だが、このままでは村長の命が奪われてしまう。ラフティは勇気を振り絞り、グリムリーパーに立ち向かう覚悟を決めた。
「やめろ!」と叫び、短剣を振りかざして飛び出すラフティ。しかし、彼の攻撃はグリムリーパーの闇に吸い込まれ、全く効果がない。巨大な鎌がラフティの目の前で振り下ろされるが、彼は寸前で身をかわす。
「こいつには実体がないのか!」
無敵に見える死神の力に、ラフティは絶望しそうになる。だが、その時、彼の中で何かが目覚めた。妖精から授かったもう一つの力——夢の中に侵入する能力。
「もしかして、夢の中でなら……!」
ラフティは短剣を握りしめ、村長の意識の中へと飛び込むことを決意する。夢の中で、死神と対峙する事しか、今の自分にできることはない——。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます