第2話 こいのはなし

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「やぁやぁ、おにーさん。今夜も眠れぬ夜をお過ごしですか?」


「たはは、ごめんね~。昨日に引き続き」


「今日も、幽霊なんかのコイバナっていうか、未練話聞かせちゃって~」


「でー、今日もその続き、なんだけど……」


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「も・し・か・し・て」


「片側から話しかけられるって結構くすぐったかったりする?」


「今日は趣向を変えて逆の耳からお送りしてみようかと思ってみたり」


「アタシはやさしー幽霊なので」


「ねぇ、人の記憶から一番最初に消えちゃうのは声なんだって」


「なのに私は声で誰かの記憶に残りたいっておにーさんに話しかけてるってワケ」


「幽霊になっても死んでも学習しないよねー」


「真っ先に忘れられちゃうもので何かを残そうなんてさ」


「笑えるよね、たはは」


「ん? アタシ、笑い方に癖、あるかな?」


「あー、確かに親友にも言われた気がする」


「ハツミの笑い方好きだなぁって言われて嬉しかった」


「そだね、自己紹介まだだった。おにーさん」


「私ね、ハツミ。天川あまかわハツミって名前でした、かな」


「戒名ってやつ?」


「長くて忘れちゃったんだぁ、だからハツミって幽霊が昔いたなぁくらいに」


「できればで長めに覚えてくれてたら嬉しいな~」


「おにーさん、で、今日もまた早速未練の話をしちゃうわけなんですが」


「恋ってやつは厄介でさぁ。高校で出来た親友を好きになっちゃって」


「一緒に部活とか頑張っちゃったりして」


「好きなのに、傍にずーっと居るのに」


「親友以上にはなれないってもどかしくなっちゃうの分かる?」


「なんかもやーってしてさ、楽しい筈なのに、青春してる筈なのに、だからさ」


「気付かなかったんだよね、恋のモヤモヤに囚われたアタシは」


「病気になってるなんてぜんっぜん気が付かなかった」


「ある日突然倒れてさ。病院で診断されて余命半年、なーんていきなり言われてさ」


「つまんなかったなー……青春も学校もぜーんぶ遠くなっちゃって」


「点滴とかチューブに繋がれて、アタシは病院生活で半年持たなかった」


「お見舞いとか、多分来てくれてたんじゃないかなぁ……」


「意識あんまなくて、覚えてないんだぁ」


「病気だった時の事、死ぬまでの事。苦しくもなんともなかった」


「ただね、モヤモヤ~ってしてた」


「病気のせいだか恋のせいだか分かんないけどさ~」


「最後に好きな人に好きだよって、告白だけでもすれば良かったなーって」


「未練残してこんな風になっちゃいましたとさ」


「おにーさんはさぁ、今も残ってる後悔とかある?」


「それね、あぁすればよかったー、こぉすればよかったーってなる前に」


「どーにかできるならしちゃった方がいいよ」


「やっつけちゃった方が後悔しないよ」


「後悔で未練たらたらで幽霊になっちゃったハツミちゃんからのアドバイス♡」


「そんでね。何もないなら寝ててもいいんだよ」


「うん、おにーさんはピアノがまた弾きたいんだぁ……」


「分かるよ、最初にこの部屋に来たのもさ、窓が開いてて」


「防音室から漏れたピアノの音聞いて」


「あ、懐かしいなぁ、この音すっごい好きだなぁって……」


「それでふらふら入ってきちゃったし」


「んー……おにーさん、そうなんだぁって返事してくれるのは嬉しいけど」


「お目目がとろーんってしてきてるよ。お薬効いてきたみたいだね」


「じゃあ退散しようかな」


「おやすみ、おにーさん。また来るね」


「昨日はいつもより長く眠れてたから……今日は深く眠れるといいね」

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