第3話人生は悲劇か喜劇か
人生は近くで見ると悲劇だが、離れてみると喜劇である
有名な言葉である。人の不幸は蜜の味とも。
この世に誰から見ても「悲劇」である事は少ない。
不謹慎だが、3.11の震災すら世界で見たら喜んでいる人間が多数居る。
海外の有名俳優は「もう一度見たい」と言ったとか何とか。フェイクニュースであってほしいものだ。
私は「不幸体質」とよく言われる。
頑張りを横取りされる事もしばしばだ。
昔働きに出ていた写真店での話。女性の園に男一人。あっという間にイジメの出来上がりである。
その写真店は「クレーマーには飴を」をモットーにしており、ゴネればゴネる程に「サービス券」が貰えたのだ。
「おい、お前!俺はノントリミングで注文したのにトリミングされてるぞ!」
始まった。いちゃもんである。
「お前男だろ。クレーマー対応しろよな」
女性の従業員に押し付けられる。
毎度毎度嫌になる。
だが私以外は「楽しい」のだ。
クレーマーは怒鳴れば怒鳴るほど得をするので怒鳴るのが趣味みたいな人。
女性の従業員は「男」を虐げてクレーマーからも逃れられるのでこれまた「気楽」なもの。
任せられる「男の私」以外はWin-Winみたいな物だ。
明くる日、フランチャイズオーナー希望のご夫婦がいらっしゃった。
普段は顔を出さないお偉いさんが応対する。
ご夫婦は2歳になる娘さんを連れてらした。
女性は「母性本能」が有ると言うから私は安心していた。
だが私の予想に反して若い女性達は娘さんを無視する。さも仕事が忙しいと言わんばかりに…普段なら私に仕事を押し付けるのに。力仕事迄やっている。
普段からそれだけ働き者なら苦労はしない。
お子さんの相手は私がする事になった。
私は別段子供嫌いではないので、動物の鳴き真似をしたり、自費でホットケーキミックスを購入して、据付の炊事場でホットケーキを休憩時間に一緒に焼いてご馳走したりもした。
その様子にフランチャイズオーナー希望のご夫婦は喜んで下さり。
「普段からこんなに親切な接客なのね」
そう仰っしゃる。
「我が社の方針です」
偉いさんはそうやって誇張する。
そうして無事に契約が決まった。
「君、お手柄だぞ!」
偉いさんは契約が取れて点数を稼ぐ。
だが私は「子供の笑顔」が対価だった。
別に昇進や粗品も無いし、下手に褒められたので翌日からの女性陣からのイビリが酷くなったくらいだ。
そんなにイビリをするなら娘さんの相手を少しでもしたら良いのに…
更にクレーマーから粘着されるようになった。
「男を出せって言ってるんだよ!」
等とゴネる。私は従業員のみならず客からもサンドバッグにあった。
私は心を病み、仕事を辞める事になった。
私の退職の日。
5人居た従業員全員が「カラオケに行きます」と言って欠勤した。
私はその日1日一人で業務をこなした。
勿論「遅い!」とクレーマーに粘着される。
普通のお客様にも「申し訳ありません」と謝罪もした。私は何故謝罪をして居るのだろうか?
閉店作業もそこそこに件の偉いさんが退職のやり取りのためにやって来た。
「君、相当イビられていたのだね」
そう言った。
そう言われても退職金が出るわけでもない。
どうだろうか。最高に「笑えて」来ないだろうか?
人の不幸は蜜の味。人に幾ら訴えても私の不幸体質は「笑い」を呼ぶのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます