第5話 闇が再び

魔人となり1ヶ月が過ぎたあたり。いまだにシュバルツァーはカリエスにお世話になり毎日のように鍛錬を続けていた。


「あんた・・・一体いつまでいるつもりだい?さっさと帰んな」

「ほっほっほ。魔法が楽しくてつい長居しすぎたわい」


カリエスに指摘されそろそろ森の奥にある自宅に帰ろうとするシュバルツァー。カリエスはシュバルツァーの謎な子供化が気になるもののいくら調べても分からずしまいには調べる術が無くなったいま、1人での悠々自適な暮らしが恋しくなってきた。ハッキリ言えばシュバルツァーが邪魔だった。


そんな話をしているとすると、なにやら街の方面から騒がしい音が聞こえてくる。


「なんじゃ?いつもよりも騒がしいのう?祭りでもやってるんじゃろうか?」

「そんな話は聞いてないがね?」


不思議に思いカリエスと共にシュバルツァーは外に見に行こうと考えていたその時に家の扉が乱暴に開かれる。


「カリエス様!?カリエス様はいますか!?」


それはとても慌てており急を要する用件である事が簡単に想像できた。2人は顔を見合わせて玄関へと向かう。そこにいたのは騎士甲冑をきた青年だった。


「お助けください!?カリエス様!?このままでは!?」


"街が滅ぶ"。そう口にする騎士に説明されながら街中へと急いで向かう2人。騎士の青年は子供がついて来ていることを気に留める余裕もなく必死に現状を説明する。


「現在は騎士隊長が3人で対応していますが・・・完全に遊ばれている状態でして・・・」


そう悔しそうに口にする騎士。


「騎士隊長であれば魔人にも至ってるであろうに・・・それほどの強さか・・・」


騎士隊長は天騎士の1つ下の階級でありそれには魔人に至る必要がある。ちなみに魔法に目覚めずにその剣術一本で騎士隊長となり天騎士となった者はシュバルツァーをおいて他にいない。


そのシュバルツァーの呟きにようやく騎士の青年が子供がついてきている事に気が付いた。


「あの?カリエス様?この子供は?」

「そんな事を気にしてる場合かい?見えてきたよ。あれだろう?街の危機ってやつは」

「ほっほっほ・・・確かに大きいのう・・・」


騎士の青年の疑問には答えずに誤魔化すカリエス。それは既に目線の先に建物サイズの狼が確認できたから。


「あ!?そう言えばあいつこう言ってました!”我ら四凶カラミティは復活し世界は再び我らが支配する"と!」


四凶カラミティ。この言葉に反応した二人。


「・・・シュバルツァー・・・あんたはどう思う?・・・」

「・・・壊滅させたはずなんじゃがのう・・・」

四凶カラミティの名を騙った偽物か・・・残党がただ騒いでいるだけか・・・それとも・・・」


四凶カラミティ。それはかつて存在した大陸全土に根を張った世界最大の闇組織。人身売買や薬物関係。強盗・脅迫・奴隷・殺人などその他のありとあらゆるすべての犯罪を大陸全土で行ってきた。

四凶カラミティの恐ろしいところは各国の王侯貴族を脅迫などあらゆる手を使い強引に味方へと引き込み各国の中枢に侵食し、まるで幻かの如くその全貌を中々見せることはなかった。


それに加え四凶カラミティには個人としての強さもあった。四凶カラミティには階級が存在し一番下を悪魔デビルと呼称して強さの象徴たる幹部のポジションにいる四人を悪魔王デーモン。さらに悪魔デビル悪魔王デーモンを従え四凶カラミティの頂点に君臨する存在が悪魔総帥サタンと呼ばれた。中でも悪魔王デーモン悪魔総帥サタンのその強さは最強の魔人に匹敵する強さを持っている。


そんな世界を裏から支配していた四凶カラミティもシュバルツァーが5人の仲間たちと共に大陸を旅し続け各国を四凶カラミティの支配から救い、本部を突き止めシュバルツァーら5人の死闘の末に四凶カラミティを壊滅させることに成功した。


「か、カリエス様?あの・・・」


青年騎士が"そんな話してないであの怪物をどうにかしてください"とでも言いたげな表情でカリエス様を見る。


「分かってるよ」


カリエスは言葉を発さずに魔法で宙に浮き狼の化け物を見下ろす。


「とりあえず小手調べとでも行こうかねぇ・・・"氷結細氷ダイヤモンドダスト"」


ブオオオ!


三人の騎士と遊んでいる状態の狼の化け物にカリエスは魔法を放った。その魔法は小さな氷の結晶を無数に集めて相手に放射する魔法であり少しでも掠ればたちまち身体が凍ってしまう。それを繰り出したのは最強の魔人の1人に数えられている【氷結の魔人】のカリエス。その氷を砕くことはそこらの実力者では不可能。


『ハハハハ!おいおいどうした!騎士隊長ってのはその程度・・・ああ?なんだこりゃ?』


騎士隊長三人を相手に遊んでいた男は突然身体が凍りだしたことを不思議がり上空にカリエスを発見した。


『ああ、なるほどなぁ・・・お前か?【氷結の魔人】って言われてる最強の魔人の1人は・・・』

「そういうあんたは四凶カラミティの一員みたいな言葉を吐いてたみたいだが・・・騙りかい?」

『騙り?クハハハハ!そんなもん』


最後まで喋り終わる前に男はカリエスの魔法にて凍らされた。すると歓喜を上げる青年騎士。


「やった!やったぞ!すごい!あの化け物をこんなに簡単に!これが最強の魔人に名を連ねる人の実力か!」


巨大狼の男の相手をしていた三人の騎士隊長。彼らも安堵をしカリエスにお礼を述べた。


「カリエス様。救援感謝いたします」

「あなたがいなければ我々はどうなっていたか」

「さすがはカリエス様です」


しかし周囲と反対に終わったと思っていないのが2名。


「・・・強さは本物のようだね・・・」


そうカリエスが呟くとシュバルツァーが"浮遊フロウト"の魔法を発動して浮きながらカリエスに近づく。


「こやつは儂が預かろう・・・どうやら四凶カラミティが復活したのは本当のようじゃな・・・」

「大丈夫かい?今のあんたで悪魔王デーモンクラスの相手を倒せんのかい?」

「ほっほっほ。やってみるわい・・・もあるしのう・・・」


そんな話をしていると凍り付いたはずの巨大狼の男の氷にヒビが入りだした。


「な!?そんな馬鹿な!?カリエス様の氷だぞ!?」

「そんなことがあり得るのか!?」

「か!?カリエス様!?」


ピキピキピキピキ!


バン!


『テメェで試してみろよ!最強の魔人カリエス・ドリトン!』


戦いはシュバルツァーたちの予想通りまだ終わっていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る