潜入 レプリカ
ハイナは、病院で目を覚ました。ふとそばを見ると、手紙が置いてある。パシェからのものだろう。花もおいてある、あの後また訪ねてきたのだろうか?
「今後しばらく会いに行くことはできない、けれどあなたの回復を祈るわ」
「パシェ……」
ハイナは、手紙をだきしめた。ガシュフィック・トゥループはかわるがわる彼女を監視しており、ほとんどの日監視していたのは、ロジェだった。その夜、ロジェが目を離している間に、ハイナは起き上がりどこかへ行く様子だった。ロジェもすぐに気づき、ドローンによる追跡を始める。
“起きたならそのまま尾行しろ”
そんな命令を受けていたロジェは、ハイナの後を追いかける。ハイナは広場へと差し掛かる。すると、おもむろに“英雄ダイドの像”に近づいた。その結界は、なみの能力者ではこじ開けることのできない結界があった。だがハイナは名刺状のカードを結界に差し込むと、結界がとれ、ハイナは英雄ダイドの剣を盗んだ。そして、“レプリカ”らしきものをそれと取り換えた。
ロジェは意味深につぶやく。
「ハイナは役目を終えた……今度はパシェが頑張る番だね」
ロジェは振り返る。ロジェはハイナがその場を後にするまで見送っていたが、英雄の像の側の路地から男が二人、彼女を監視しているのをみかけた。すぐさま後を追うと、呪文を唱える、手の中に生じさせた“泥”を敵にむかって投げつける。
〈びちゃり〉
ペイントボールの用に張り付くと、彼は目をつぶる、目をつぶると距離を感じることができた、そのまま逃げる二人をそのままにして、イアナに連絡をいれた。
「こちらロジェ、ハイナが計画を実行した」
ロジェは、泥人形を掌の上につくると、泥人形にいった。
「姉さん……あれが人が命を犠牲にしてまで、欲しがるものなのかね」
冒険者ギルドの奥、白いひげを蓄えた、3等身ほどしかない男が三日月型のくちひげをなでている。眉毛も白く、まっすぐに整えられている偉そうな男、アセランだ。
「ふぅぅむ」
彼は悩みながら、資料をみた。
「近頃きな臭いことだらけだ、今までは“キメラ”によって、敵を抹殺してきたが、ここ最近用済みのキメラが数をふやし、街を襲うようになってきた、今のところ魔流穴栓を活用した“爆弾”によって証拠隠滅はできているが……そもそも今回の“敵”は誰なのか」
「ギルド長」
眼帯をした筋骨隆々の男が、彼によびかける、彼は足を机の上にかけ、ある提案をはじめる。
「あなたが用意した手筈は完璧です、我らの従者」
「“ヤガムの眼”は?」
「未だ監視を続けています、ハイルには気を付けた方がいいでしょう、旅人と接触がありましたからね」
「では、第三実験場のキメラは?」
「近頃では“脱走”はありません、“栓”についても首尾よくてにいれ、いままさに、魔力通しがおこなわれ、爆破される瞬間です」
「映せ」
「はっ!」
すぐに、壁のスクリーンにその映像が映し出された。岩のようなものが捉えられた“キメラ”の下にとりつけられ、キメラは吊るされている。そして、“魔力通し”と呼ばれる、術者によるガラス越しの魔力供給が始まると、“栓”とされる岩が爆破して、同時にキメラが飛び散った。
同時に背後から、ヤガムという男が現れ、焦ったように叫んだ。
「ギルド長、大側近失礼します、ボーグ様が街によられるそうです」
「なんだと!?」
ボーグというのは、人々から領主の“大側近”と呼ばれしたしまれているものだ。領主の補佐をし、アドバイスをするとともに、彼単体でも相当な武力を持つとされている。肩幅の広い礼服をきた紳士で、貫禄ある男で、歴戦の兵士だったともいわれている。
「まずいな……このあわただしい時期に……何か情報はつかんでいるか?」
「“ガシュフィック・トゥループ”の件をしらべていらっしゃるとか」
「くそ……問題が広がる前に状況を整理しておくべきだった、ガシュフィック・トゥループすでにこの街についていることは把握していたのだが……近頃の“虚人”の暴動で、手が回らなかったんだ、しかたない、“警報”をだせ」
「しかし、ガシュフィック・トゥループは、あくまで“パゾリティ財団”の指名手配犯です」
「かまわん、賞金にめがくらんだとでもなんとでも、冒険者、英雄の命など、街の何ものにも及ばぬ」
「はっ……ただちに手配します」
ギルド長アセランは、手元のノート型端末に手を伸ばす、そして、“仮面をつけた男女”をみていく。
「“仕事をする間は常に仮面をかける、それは彼らの正義を示すため”ふん、何が正義だ……しかし……仮面の中の顔を、誰も把握できないとはどういう事なんだ」
教会の屋根の上にたち、シスターが街を見下ろす。
「タイムオーバーですかねえ」
シュルのてをひいて、すぐ下の砂場へとおりたった。携帯端末を取り出し、2,3連絡を取り合うと、すぐそばでシュルが自分の手をひいていた。通話を終えた端末をとじると、屋根の上でシスターの手を握っていたシュルは泥団子をさしだしてきた。
「あら、つくってくれたの?ありがとう」
なんのためらいもなく、シスターナナルはそれを口元へと運ぶ。すると団子の中から、暖かいお饅頭があらわれ、土はまるでそれがなかったかのようにきえた。そしてそれをたべるとシスターはほほ笑んだ。
「あら?」
シスターが、砂場の外で貧乏なボロ衣の格好をした少年がたたずんでいることに気付いた。それは5,6歳の少年だろうか、シュルはシスターにむけて作っていた団子を手に取り、彼を指をさすと、シスターもにっこりと笑った。
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