第16話
「皆様忘れ物はございませんか。」
車に荷物を載せて私たちも乗った後に運転手さんが言った。
「大丈夫です。お願いします。」
「かしこまりました。」
今日の運転手さんはお父さんが雇っている運転手さんで、私が合うのは数年ぶりだ。今日お父さんが手配してくれた車は後部座席が向かい合うようにできる車で、小さな部屋みたいにのんびりできる。
一時間くらい高速道路で進んだ後、窓の外を見ると海が見えた。太陽の光が反射してキラキラと光っている。
「綺麗。」
「ね。」
海が見えてきたということは後少しで到着するだろう。私は眠ってしまっているイリスちゃんと女神様を起こして窓の外を指さした。
「わぁ、きれー。」
「素敵ですね。」
向こうの世界だと海はあるけど魔物の巣窟と化しているので黒く濁ってしまっている。山のキャンプもいいけどやっぱり海は夏限定だから海にしてよかったな。
「そういえばグランピングってやつが最近流行っているらしくて。やってみたいんだ。」
スマホの検索画面でグランピングと入力して出てきた画像をアリシアさんに見せる。
「楽しそうですね。なんだかテントも丸っこくてかわいいです。」
「ちなみに今日泊まるコテージはこんな感じで二段ベッドになってるんだ。」
「私上に寝てみたいです!」
「ふふ。いいよ。」
アリシアさんと話していると運転手さんが車を停めた。どうやら到着したようだ。
「到着しましたので、どうぞお降りください。」
「ありがとうございます。」
「荷物は私が運びましょうか?」
「あー、せっかくなので私たちでやりますよ。」
「かしこまりました。では明後日の昼頃にお迎えに上がります。」
「うん。よろしく。」
荷物を車から降ろして運転手さんは車を走らせて帰って行った。人目が無くなってから魔法を使って荷物をコテージまで運んだ。
この一帯はお父さんの土地なので知らない人たちが入ってくる心配もないから安心だ。一応監督者として大人を一人派遣してくれているらしい。まだ来てないようだけど私の知っている人かな。
キャンプ感は薄れるけど一応このコテージには冷蔵庫があるから食材の管理の心配もない。
食材を冷蔵庫に入れ、早速海に入ることにした。コテージでそれぞれの水着に着替える。ちなみに女神様は自分で用意したらしい。
「どうですか?」
水着に着替えてきたアリシアさんが私の前でクルリと一回転して水着姿を見せてきた。水着を買うときに試着はしたけどその時は見せてくれなかったのでアリシアさんが水着を着ているのを見るのは初めてだ。
「うん、似合ってる。かわいい。」
「えへへ。沙月さんも綺麗ですよ。」
「ありがと。」
私は鞄から日焼け止めを取り出した。これも加賀さんに用意してもらったもので、サンオイルもあったけどアリシアさんの肌を焼きたくはなかったので日焼け止めにしたのだ。
「さ、日焼け止め塗るから後ろ向いて。」
手に適量とりアリシアさんの背中に塗っていく。水着の紐の部分も引っ張って塗り残しの無いように入念に塗りたくった。
「じゃあ私にも塗って。」
アリシアさんに日焼け止めを背中に塗ってもらった。顔とかの手が届く範囲は自分でやる。「前も塗ってくれる?」とお願いしたら「無理です!」拒否されてしまった。
日焼け止めを女神様に渡して、浮き輪をとりあえず一つ膨らませてから外に出た。
「暑い.....早く入りましょう。」
「そうだね。」
軽く準備運動をしてから海岸沿いまで歩いた。
「ひゃっ、冷たいです。」
海に足を入れたアリシアさんが可愛らしく声を上げた。いきなり海に入るのはまだ監督者もいないので危険なので波打ち際に座ってアリシアさんと水の掛け合いをして遊んでるとイリスちゃんたちも来た。
イリスちゃんの手には水鉄砲が握られていてそれを私たちめがけて噴射してきた。
「ぐえ。」
「あっはは!お姉ちゃんたちよわーい。」
そう挑発してくるイリスちゃんに私は手で水鉄砲を作ってイリスちゃんに放った。
「きゃっ。やったな~くらえ!」
イリスちゃんも負けじと海水を水鉄砲に装填し、今度は私だけに放ってきた。
しばらく遊んでいると駐車場に車が一台停まったのが見えた。日傘をさしながら夏っぽいワンピースを着ている女性はサングラスをかけているせいで顔が見えない。
「あ、あれって。」
「え?知ってる人?」
「佳澄さんじゃないですか?」
「ええ?」
私のお母さん?確かに身長とか髪型は似てるけど。
「佳澄さーん。」
アリシアさんがそう呼んで手を振るとその女性も振り返してきた。こっちに歩きながらサングラスを外すと顔が見えた。まごうことなき私のお母さんだった。
「お母さん。」
「監督に来てあげたわ~。」
「てっきりお父さんの方について行ったと思ってた。」
「こっちの方が面白そうじゃない?で、初めましてさんが二人いるわね。初めまして沙月の母です。」
「私、イリス!」
「初めまして。女神です。」
「イリスちゃんと女神さん?」
「お母さん。こっちのイリスちゃんは元魔王で、こっちの人は本当の女神様だから。」
「あー。あの異世界がーみたいなやつの世界の人?」
相変わらずなんでお母さんは納得できるんだ。もはや少し怖いよ。
「そう。」
「成程。コテージに一瞬行ってくるから待ってて。」
「うん。」
お母さんは荷物を持ってコテージに行くと、パラソルとレジャーシートを持ってきて砂浜に休憩所を作った。
「私はここにいるから適当に遊んでなさい。怪我とかは気を付けてね。」
「うん。じゃあアリシアさん行こ。」
私はアリシアさんの手を掴んで海の方へ駆けた。ひんやりした海水が気持ちいい。イリスちゃんのことは女神様に任せて、私はアリシアさんの浮き輪を引っ張って泳いだり、浅瀬でアリシアさんに泳ぎ方を教えたりして過ごした。
世界を救ったのでお姫様を頂いていきます。 緩音 @yurune
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