第13話
「それで、お願い事は何?」
家に帰ってきて早速、アリシアさんに聞いてみた。アリシアさんは何か考えるようなそぶりを見せた後、「まだ秘密です。」と人差し指を顔の前に立てた。
「秘密かぁ。楽しみにしてるよ。」
なかなか自分からこれがやりたい!とかあれがしたい!とかすることがないアリシアさんなのでどんなお願い事なのか楽しみだ。
「じゃあ夏休みの予定決めたいから女神様とイリスちゃん呼んでくるね。」
「わかりました。」
女神様たちを呼んでから全員分のコップにジュースを注いで買ってあったクッキーとかチョコレートとかをお皿に盛り付けた。しばらくするとイリスちゃんが女神様と一緒にやって来た。「食べてもいい?」とキラキラした目で訴えてくるイリスちゃんは待ちきれないようだ。
「じゃあテストお疲れ様!あと今日から夏休み!乾杯!」
「「乾杯!」」「かんぱい!」
グレープ味の炭酸飲料を喉に流し込む。シュワシュワしたものが喉を通り抜けていく。
「美味しい。」
普段は砂糖を大量に含んでいるジュースは控えているけど今日から夏休みだしいいよね!アリシアさんたちは初めての炭酸だけどどうかな。
みんなを観察してみるとアリシアさんは恐る恐る飲むと「ん゛~」と初めての感覚にびっくりしていた。対照的に女神様はなんてことないように飲み、気に入ったのかおかわりが欲しいと言ってきた。イリスちゃんは「イリスこれにがて~」と苦い顔をして女神様にコップを押し付けると、冷蔵庫からオレンジジュースを持ってきて自分でコップに注いでいた。
お菓子やジュースを楽しみながら夏休みの話を始めた。
「じゃあ夏休みにしたいことを募集します!」
「雑ですね!?」
「イリス、はなびしてみたい。」
「良いね。採用!」
「やったー。」
「というかよく花火なんて知ってたね。」
「この前テレビでやってたんですよ。ねーイリスちゃん。」
「ねー」
女神様とイリスちゃんはハイタッチをした。本当にイリスちゃんがあの魔王だったなんて信じられない。
「アリシアさんもしたいこととかある?」
「そうですね.....」
アリシアさんは顎に手を置いた。さっきもやってたけど考えるときに顎に手を置くのは癖なのかな。
「沙月さんと一緒ならどこでもいいですけどね......あ、でも水族館に行ってみたいです。」
「水族館?どうして?」
「この前クラスメイトの話が聞こえてきて行ってみたいなって。」
「少し遠出になるけどいいね。」
よしよし、順調に予定が決まって来た。あとは日程とか考えないと。でも私以外は用事はないはずだから忙しすぎない程度にスケジュールを組もうかな。
「じゃあいろいろ予約するものはしておくから楽しみにしといて。」
「はい。」
「はーい。」
「お願いね。」
「じゃあ部屋戻りたかったら戻ってもいいよ~。女神様は予定通りで。」
部屋に戻っていく女神様にアイコンタクトを取る。今日はイリスちゃんの希望でたこ焼きをする。なぜか家にたこ焼きプレートがあってよかった。
5時頃からたこ焼きの準備をして、6時頃に再びリビングに集合した。具材はたこの他にチーズやほたて、あとはチョコレートなんかも用意してみた。イリスちゃんがやけどしないように十分に冷ましてから女神様が食べさせてあげている。
「美味しい!」
イリスちゃんは目を輝かせて言った。たこ焼きをするのは初めてだったから成功してよかったと胸を撫で下ろす。たこ以外の具材もおいしくてすぐに生地が無くなってしまった。
「どうだった?初めてのたこ焼きは。」
「美味しかったです。......チョコ以外は。」
アリシアさんにはチョコ味が不評だったらしい。生地にダシが入ってるから甘いものと合わなかったのかも。今度は甘いホットケーキみたいな生地でやれば美味しくなるのかな。
そのあと片付けをしてお風呂に入り、アリシアさんと一緒にベッドに入った。最近は熱いから大き目のブランケット1枚で寝ている。
「電気消すよ。」
「はい。」
電気を消して私も横になるとアリシアさんが私の胴体に手を回してきた。
「アリシアさん?」
「テストのお願いを使います。私をぎゅっとしてください。」
「そんなのでいいの?」
私は戸惑いながらもアリシアさんを抱きしめた。
「えと、いつまで?」
「んん、もう少し。」
アリシアさんは甘えたさんのようだ。
「ハグくらい言ってくれればいつでもするのに。」
「それは恥ずかしい.....」
暗闇に目が慣れてきて部屋に置かれている机の輪郭とかがはっきりしてきた。まだアリシアさんを抱きしめてるから顔は見えないけど真っ赤なんだろうな。
「お願いは本当にこれでいいの?」
「.......もう一ついいですか?」
「うん。もちろん。」
「呼び方を変えませんか?」
それはお願いというより提案めいたものだった。でも確かにさん付けだとちょっと距離を感じる。イリスちゃんはちゃん付けなのにアリシアさんはさん付けなのもアリシアさん的にはもやってたのかな。
「そうだね....アリシアちゃん。ってのも安直だし.....あーちゃん。んーなんか違うなぁ。」
人にあだ名をつけた経験がないから難しいな。
「呼び捨てでもいいのですよ?」
「アリシア。」
「っ。」
名前を呼ぶとアリシアさんがベッドの上で暴れ出した。
「ちょ、落ち着いて。」
「あ、ごめんなさい。」
「また明日考える?」
「そうですね。そうしましょうか。」
「じゃあ。おやすみ。アリシア。」
そう名前を耳元でささやいてあげるとアリシアさんはまた悶えているのがわかる。ブランケットが引っ張られている。
「お、おやすみなさい。さ、さつき.........さん。」
意趣返しのつもりかやり返してきたけどアリシアさんは恥ずかしがってしまった。私の体温も上がってしまってまだ寝れそうにない。
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