第12話
魔王ことイリスちゃんと一緒に暮らし始めて一週間もするとイリスちゃんも暮らしに慣れたようで朝は眠そうな目を擦りながら起きてきて一緒に朝ご飯を食べ、夜は女神様が作ったかわいらしいパジャマを着てテレビを見たり女神様と遊んだりしている。
ただこの間私たちはというと.....
「そこはこの公式を使うんだよ。」
「んー。数学が難しいです....」
定期試験の勉強に苦戦していた。歴史とか英語とかの記憶でどうにかなるものは私からの記憶を送る魔法でアリシアさんは覚えたらしいが数学がどうにも苦手らしい。
「どう教えたらいいんだろう。」
正直数学は反復とセンスだからあとの一週間をすべて数学に費やすことになりそうだ。ただいい教え方がわからない。
「ちょっと休憩。」
アリシアさんがカーペットの上に横たわった。時計を見ると時刻は21時、勉強を始めたのが18時だったからかれこれ3時間数学を解き続けていたのか。
「飲み物と甘いものでも持ってくるよ。」
確か買っておいたシュークリームがあったはず、と冷蔵庫を開けたがどこにもない。もしやと思ってゴミ箱を見るとそこにはシュークリームのパッケージのごみが捨てられていた。イリスちゃんが食べちゃったのかな。
私の部屋に戻るとアリシアさんクッションを抱きしめて横になっていた。
「甘いもの食べたい?」
そう聞くとアリシアさんは横になったまま体勢を変えて私の方を見るとコクリと首を縦に振った。
「じゃあコンビニ行こっか。」
アリシアさんと一緒にマンションの外に出た。アリシアさんは初めての夜の外出ということで心なしかはしゃいでいる。一応夜なのでできるだけ明るい通りを選んでコンビニに着いた。
「じゃあ好きなの選んでいいよ。」
「やった。」
アリシアさんはしばらく考えに考えた後、カップに入ったアイスクリームを手に取った。
「これで。」
「じゃあ私もそれの違う味にしようかな。」
アイスをカゴに入れて女神様とイリスちゃんにはプリンを一つずつ買ってコンビニを出た。
「今日は勉強終わりにする?」
アリシアさんは数学が苦手だけど他の教科を合わせた合計点なら余裕で上位に入ってくるだろう。所詮といってはあれだけど定期テストだからそこまで根気強く勉強する必要もない。そんな気持ちも込めてアリシアさんに聞いてみると「あと一時間くらいはやりたいです。」と即答された。すごいやる気だな。
「じゃあやる気を出すためにご褒美をあげるよ。もし学年20位に入れたら何か言うことを聞いてあげ」「本当ですか?」
少し食い気味にアリシアさんが反応した。
「う、うん。20位入れたらだからね。」
学年には200人の生徒がいて上位50人は今のアリシアさんなら突破してくるだろう。ただその中でも点数と名前が掲示される上位20名は全教科8割9割は欲しいので今よりもっと勉強しなければならないだろう。
ただアリシアさんの勉強のモチベーションは上昇したようで、その日から学校から帰ってきてから時計が一番上になるまで勉強をし続けるという生活をテスト直前まで続けていた。
そしてテスト当日になった。この学校はテストが二日に別れていて今日は理科と数学で明日が国語、英語、社会だ。
「じゃあテスト用紙を配りますね。」
テスト用紙が配られ、「始め。」という先生の声と同時に紙をめくって問題を解いていく。特に引っかかることもなく解き進めて最後の問題も解ききった。教室の全法にかけられている時計を見ると20分しか進んでいなかった。
(早く解き過ぎた....?)
いつもと同じくらいのペースで解いていたはず.....いつもより勉強時間を増やしたからかな。テスト中に雑念があるのは良くないので雑念を振り払い、ケアレスミスが無いかよく確認をしたり、解きなおしたりして時間を使った。
そのあとの理科も特に困ることはなく一日目は終了した。
二日目も古典に少し時間が取られたものの時間内にすべて解ききることができた。アリシアさんも手ごたえがあったようで、「どんなお願いを聞いてもらおうかなー。」と楽しそうに考えている。私はというとテスト返しがある明後日が夏休み前最後の学校のある日なので夏休みは何をして過ごそうか。夏休みにしたいことを挙げてみることにした。
旅行にプールに....あ、キャンプとかもしてみたい。お父さんからお金ももらっているし、もし足りなくなったらお父さんの仕事を手伝って臨時収入を貰おう。
今から夏休みが待ち遠しかった。
「じゃあ今からテストを返却していきます。出席番号順に呼ぶので取りに来てください。」
「赤池さん―――。」
テスト返しは少し緊張感があって楽しい。成績をキープできてればいいな。
「瀬名さん。」
私の名前が呼ばれたので取りに行く。席に着いてから結果を見るとオール満点だった。流石にびっくりする。春の実力テストでは一位だったものの満点ではなかったので素直に嬉しい。
「これでもう夏休みです。体調管理に気をつけてください。上位20位の掲示は廊下にあるのでみたい人は見て行ってください。では良い夏休みを。」
先生が教室から出て行くと続くようにクラスの人たちも教室を出て行った。私はアリシアさんのところに行き一緒に見に行こうと誘った。
人だかりを避けるために少し教室で待ってから見に行く。満点だから当たり前だが一位は私。アリシアさんの名前を探そうと視線を横にスライドさせると私の名前のすぐ横にアリシアさんの名前が書かれていた。
「え!?二位!?」
驚いてアリシアさんを見るとアリシアさんはかわいらしくピースを両手で作った。しかも得点は私と一点しか変わらない。4科目は満点だったのか。
「じゃあお願いは決まった?」
「はい。でも先に家に帰りましょう。」
今にもスキップをしそうなほど上機嫌なアリシアさんと一緒に帰宅した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます