第3話
ついに元の世界に帰る日がやって来た。王宮のメイドさんやお世話になった人たちに感謝を伝える。もちろん宝石屋さんの店長にも。私たちは最後に王様と王妃様に挨拶をすることにした。
「じゃあ王様。いろいろありがとうございました。時間ができたらまた帰ってきます。」
「ああ。改めて感謝を。勇者沙月よ。アリシアも元気でな。」
「アリシアをどうぞよろしくお願いします。沙月さん。」
「はい!」
「任せてください!」
(じゃあ女神様。お願いします。)
(はーい。)
女神様にお願いすると私たちはまばゆい光に体を包まれた。
あれ?そういえば私はトラックにはねられたんじゃ....
(トラックにはねられる数分前に戻るので安心してください。)
(それなら良かったです。)
「ねえ今女神様と話してるの?」
光に包まれた世界でアリシアさんが聞いてきた。
「そうだよ。」
「私も話してみたいな。」
アリシアさんがそう言うと目の前に女神様が現れた。
「初めまして。アリシアさん。そしてお久しぶりです。沙月さん。」
「女神様。」
「貴女が女神様....って何ですかその格好は。服を着てください!!!」
「え。」
「沙月さんは渡しません!!」
そう言って私の腕に抱きつくアリシアさん。
「そんなつもりはないのですが.....わかりました。」
女神様の体が光ると女神様は服を来た。胸元は依然として開いているがまぁ許容できる範囲だろう。
「さて、じゃあそろそろ地球に着きます。一応私の力でアリシアさんの戸籍も用意したのでそのあたりは気にしないでください。」
「ありがとうございました。」
「では。私はここで。」
女神様が消えた。と思ったら私たちを包んでいた光も消えて行った。
「ここが沙月さんの故郷。日本ですか。」
「わー懐かしい。」
私はちょうどタピオカ屋さんの前を通りかかるところだった。
「少しだけ寄り道をしてもいい?」
「はい。」
私はアリシアさんと公園まで行った。少し待っているとトラックが猛スピードでやって来たので魔法を使って車を止めた。これで被害者はいないだろう。
「よし。じゃあ帰ろうか。」
手をつないだまま私の家に帰って来た。この世界では半日ぶりだけど私にとってはおよそ一年年ぶりの我が家だ。
「ずいぶん大きなお家ですね。」
「ああ、これはマンションって言っていろんな部屋に別れているの。その部屋の中の一室が私の部屋だよ。」
「そうなのですか.....」
まぁ今までこのマンションの数倍ある広さの王宮に住んでいたら一つの家だと勘違いしても無理はないか。でもこのマンションの方が高さはあるけどね。エントランスを抜けてエレベーターに乗ると私は書かれている中で一番大きな数字のボタンを押した。
「わー。高いです。」
地上と離れていくエレベーターにアリシアさんの新鮮リアクションが響いた。
ポケットに入っていた鍵を取り出して差し込む。反時計周りに回すとガチャっという音がした。
「ただいま。」
私は誰に言ったわけでもなくただ呟いた。
「さ、アリシアさんにこの世界のことをいろいろ教えるから魔法を使うね。」
アリシアさんは女神様に力を貰った私よりも魔力量が多いのでアリシアさんに耐性を下げて貰わないと魔法が効かない。今から使うのは自分の知識を相手に渡す魔法で少し不便なところもあるけど説明の時短にはもってこいの魔法だ。
私のおでこをアリシアさんのおでこにくっつける。いやまつ毛名長ッ.....集中しないと。私は渡したい情報を頭の中で整理して伝えていく。とりあえずこっちの世界の常識を中心にアリシアさんに渡した。
「ありがとうございます。いろいろ...わかりました。」
そう言うアリシアさんの顔は紅潮していた。多分この魔法のデメリットが出ちゃったかな。そのデメリットというのは感情とか直近に考えていたことも一緒に送られてしまうというものだ。
アリシアさんが照れているということは多分私がいかにアリシアさんのことが好きかが伝わっちゃったんだろうな。流石に恥ずい。
「沙月さんも恥ずかしがるのですね。」
「.....悪い?」
「いえ。そんな沙月さんも可愛らしくて大好きです。」
「あの、アリシアさん?」
アリシアさんは私をカーペットに押し倒すと私の腰に跨って来た
「案外沙月さん攻めに弱いのです?」
アリシアさんはSの顔をしていた。ペロリと舌を出すアリシアさんはとても魅惑的だった。
「大好き......」
アリシアさんの唇が私の唇に近づいてきた。私はまんざらでもなく目を閉じた。
「いちゃいちゃしすぎです。貴方たち。」
声のした方を見ると女神様が立っていた。
「え?どうしてここに?」
「『どうして?』じゃありませんよ。いろいろ説明しに来たんですよ。それなのに貴方たちときたら二人だけの世界に入って.....」
女神様はどうやらお怒りのようだ。
「ごめんなさい。」
「全く。じゃあちょっと長くなるかもなので座りましょうか。」
ダイニングテーブルに私とアリシアさんが隣同士で女神様が体面に来るようにして座った。
「お茶でも飲みますか。」
女神様は指をひと振りするとティーカップとティーポットが机の上に現れた。流石女神様だ。魔法には人によって適正があって例えば私は攻撃魔法が得意だけど特に不得意な魔法もないオールラウンダータイプ。アリシアさんは攻撃魔法は苦手だけど回復魔法や聖魔法が得意なタイプだ。女神様は存在するすべての魔法が使えるようで私がオールラウンダータイプなのは女神様に力を貰ったからだというのが理由だろう。
女神様は三人分のお茶を淹れてから話を始めた。
「まずアリシアさん。貴女は17歳の高校生として登録しました。学校は沙月さんと一緒の高校です。名前はギノ・アリシア。沙月さんの家に居候している状態になっています。」
「居候?」
「この方がいろいろやりやすいでしょう。」
「ありがとうございます。わかりやすく言うと同棲だよ。」
「ど、同棲....」
「はぁ....それで制服とかは私が出すとして....」
女神様は私たちに呆れながらこの世界でアリシアさんと生きていくために必要なことを一通り説明してくれた。いろいろ無茶な改変をしたことを謝りつつも。
「何かわからないことがあったら私に聞いてください。それと沙月さんにお願いがあるのですがいいですか。」
「はい。」
女神様にはお世話になりっぱなしなので私にできることなら聞くべきだろう。
「私もここに住んでいいですか?」
「へ?」
「あの世界は向こう数千年は平和が保たれるので暇なんですよ。ならここにいた方が楽しいと思うのです。」
「いいですけどこの家そこまで大きくないですよ。それにベッドも一つしかないし。」
「ああ、私には箱でも置いてくれればそこを家にするので。」
「じゃあこれはどうですか?」
キッチンにあったクッキーの入っていた箱を持ってくる。
「なんか甘い匂いがしますね。他にはないですか?」
「うーん。じゃあティッシュ箱とか?」
「もう少し箱感の強いものがいいのですが.....」
箱感かぁ....あ、そういえば。私は思い出して物置部屋から潰された段ボール箱を持ってきた。
「これならありますけど。」
「いいですね。広さもよいです。じゃあこれを貰いますね。」
「はい。部屋も向こうの部屋なら箱を置けるスペースくらいは空いてるので。」
「わかりました。じゃあお借りしますね。」
女神様は段ボールを抱えて物置部屋に入って行った。段ボールを抱える女神様の構図面白いな。
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