第4話 犯罪心理学
事件のあったその日から、警察はいつもの捜査に沿う形で、近所の聞き込みを、足を使って地道に行っていた。
それは、警察の、捜査マニュアルといってもいいだろう。
「普通のことを普通にしていた」
というだけのことである。
それが、ほぼ最近までは行われていた。
「ちょっと長いのではないか?」
とも思われるが、
「犯行現場はここではない」
という意識があったことで、
「特に、付近の聞き込みは入念に行う」
ということであった。
そして、同時に被害者の身元を、全力で探っていたが、そもそも、そのもとになる情報が少なすぎるので、捜査員をさくまでもないのだ。
だから、こちらの聞き込みに捜査員を増員することでバランスを保っていたのだが、こちらの聞き込みも、いまいちはかどっていないようだ。
重要と思えるようなことが、何もないからであった。
だが、少しだけ、被害者のことが分かりかけてきたことで、そちらに捜査の目を向けなければいけなくなったことで、こっちは、おろそかになり、捜査員を、向こうに回すことになったのだ。
被害者のことが分かってきたというのは、それほど大げさなことではないが、
「勤め先」
と言っても、数年前まで勤めていたという会社が分かったからだ。
その会社というのは、ある保険会社で、そこで、
「課長をしていた」
ということであった。
被害者の年齢は、45歳ということだったので。、
「前の会社で、課長をしていた」
というのも分かるというものだ。
「平岩課長は、そんなに何か特化したようなところはなかったかも知れないですね。特に人から恨まれるということはなかったと思います。もっとも、数年前までの話ですから、その後どんな感じだったのか分からないですけどね」
と、被害者と同期入社という人から話が聞けた。
しかし、その後、彼のかつての部下だったという人の話が聞けたのだが、
「平岩課長ですか? あの人は、変わってましたね、普段は普通なんですけど、あれは、ほら吹きとでもいえばいいのか、大風呂敷を広げて、ちょっと、常軌を逸するようなことをいうことがあったんですよ」
という。
「ほう、それはどういうことですか?」
と聞くと、
「自分は会社を立ち上げるので、その時は自分に来てくれるか? などということがあったんですよ。もしそうだとしても、いきなり、どこから漏れるか分からないような情報を簡単に話すところがあったので、それこそ、何か、精神疾患でもあるか、多重人格なのではないか? と思ったりしましたね」
というのであった。
「じゃあ、平岩さんが、退職された時はどうだったんですか?」
と聞いてみた。
同僚にも同じことを聞いたが、
「いえ、別に何もないですよ」
という答えしか返ってこなかったが、今回部下から聞けた答えとしては、
「本人曰くですが、起業のパートナーが見つかったので、自分は、これから起業の準備をするといって辞めていったんですよ」
というではないか。
部下からはそれ以上の詳しいことは聞き出せなかったが、少なくとも、
「同僚と、部下とで、ここまで証言が違うということは、それだけ、普段から多重人格性があった」
ということになるのであろう。
それを思うと、
「あの男は、どっちが本当の性格なのだろうか?」
と考えたが、逆に、
「どっちも本当なのかも知れないな」
とも思えた。
それは
「ジキルとハイド」
のような、同一の人間の中に。まったく別人、対称となる性格が潜んでいるという場合であったり、
「双極性障害」
などという、精神疾患などによって、作られる
「多重人格性」
というか、
「躁うつ病」
といってもいい、実際に病的なものだったりする可能性があるというものだ。
それを考えると、
「今回の被害者には、病的なところと、多重人格性があるということを踏まえなければいけない」
ということであった。
そうでなければ、相手を、
「普通の人間」
として考えるわけにはいかなかった。
そもそも、
「被害者」
というものになる人間なのだ。
「何か、曰くがある人間だと最初から考えてもいいだろう。刺殺である以上、相手が凶器を用意していたということであり、普通であれば、銃刀法違反の罪を考えれば、普段から持ち歩くはずもない。それこそ、何か誰かに狙われていると感じている人で、疑心暗鬼な人ならあり得るかも知れない」
ということである。
今回の被害者は、本当にどう解釈すればいいのか分からないが、一歩、
「被害者の全容解明」
というところまで、少し進んだといってもいいだろう。
ただ、それが、まだ一部だけのことなのか、ほとんど分かってきたといってもいいことなのか、正直誰にも分かっていないといってもいいだろう。
引き続き、
「被害者が会社を辞めたあと、彼が言っているような、起業の準備に本当にいそしんでいたのかどうか、なかなか足取りがつかめないでいた」
といえる。
しかも、そこから先の被害者の足取りがぷっつり切れているというのは、そこに何かの作為的なことが潜んでいるのではないか?
と思えてきて、
「どう解釈すればいいんだ?」
というものであった。
そんな状態が、誰にも分からない状態で、少しずつ、事件の解明を行おうとしていたところで、
「交番に、目撃者と名乗る男が現れた」
ということで、
「事件は、別の方向にいくのではないか?」
とも考えられるのであった。
交番に出頭してきた人がいうのは、
「この間、死体が発見されたことで、ちょっと気になることを見た」
ということで来た男だった。
交番の警官も、先日の殺人事件のことは、まだ頭にしっかりと残っていて、その景観本人も、刑事と一緒に出向いたからであった。
その警官は、捜査に加わることはなかったが、黄色い線を貼ったり、鑑識官のお手伝いをするなどの、雑用をしていた。
それでも、死体を運び出すところを自分がやったりと、それなりのことをしていたのだ。
「これも警官の任務」
と思っていた若い警官だったが、彼は、実際には、まだ警察に入って2年しか経っていなかったので、殺人現場に入るというのも初めてだった。
当然、死体を見たのも運んだのも初めてで、正直気持ち悪くなったが、そこはしっかりとこらえたのだった、
ただ、彼も捜査本部が、なかなか捜査が進まずに困っているということは分かっていたので、かかわったということもあって、ずっと気にしていたのだ。
そんなところにもってきて、
「目撃者の登場」
というのは、自分の中で、気分が高揚してくるというのも、無理もないことであった。
その目撃者がいうのは、
「被害者が、背中から刺されている」
ということをいうので、
「じゃあ、悲鳴も何も聞かれなかったんですか?」
と聞かれ、
「いいえ、悲鳴を聞いたので、自分はびっくりして、そっちに行ったんです。すると、男が倒れていて、どうしようか戸惑っていて、他の人を呼びに行って戻ってくると、死体が消えていたんです」
というではないか。
それを聞いて警官は、
「じゃあ、どうしてその時、すぐに警察に知らせなかったんだい?」
と聞かれて、男は、
「その時、一緒に来てくれた人から、人騒がせなやつだと、一蹴されてしまったんです。そして、こんな恥ずかしいことを人にいうなよって、恫喝されたんですよね。だから、僕も今まで黙っていたんですが、やっぱり気持ち悪くなってですね」
と、目撃者はいうのだった。
「なるほど、そういう事情があったんですね?」
と警官は相手を労うようにそう言った。
もし、このことを言わなければ、
「何を今になって目撃者だなんて、おかしいはないか?」
と最初は少し、怪しんでしまったことを詫びたいくらいになっていたのだった。
だが、この目撃者は。
「確かに、@もっともらしいことを言っているが、それ自体が、フェイクなのでは?」
とも思えなくもない。
しかし、
「だったら、名乗り出ることもないだろうに」
という思いもあって、次第に、また、分からない状況いなってくるということを考えるのであった。
しかし、話の内容は、
「興味深い」
ともいえるが、
「これも、突飛すぎて、どう解釈していいのかもわからなかった」
とりあえず、捜査本部に連絡を取って、交番まで来てもらうことにしたのだ。
というのも、この男が、
「警察署にはいきたくない」
と言った。
「特に取調室というのは、嫌だ」
ということだったので、
「何か前科でもあるのかな?」
と勘ぐってしまった警官だったが、これはこの際の目撃情報というものとは関係のないことであった。
とりあえず、桜井刑事が、飛んでくることになったのだ。
桜井刑事は、この事件に、
「とにかく、分からないことが多すぎる」
と思っていた。
だからこそ、逆に分かることが出てくると、逆に、
「芋ずる式に、堪忍解明まで行くのではないか?」
と考えていた。
かなり楽天的な考え方であるが、それは、今までの自分の経験から出たものであった。
確かに、今までの事件は、分かりにくい部分があったろして、それが瓦解することで、それまでの分からないところが氷解してくる感じだった。
というのは、
「元々のきっかけが分からないから、全体像が見えてこないだけで、きっかけ部分からは、道しるべが整っているのかも知れない」
ということは、
「最初のきっかけさえ瓦解させてしまうだけの、奇抜な発想を生むことができれば、事件解決までは、案外と早かった」
ということである。
そこで、桜井刑事は、今、とてつもなく、変な発想を抱いていた。
その変な発想から生まれてくるものとして、今までの犯罪捜査では、
「してはいけない」
と言われるような、
「タブー」
といってもいい発想であった。
もちろん、桜井刑事も、その発想を部下がすれば、一蹴したかも知れない。
「何をバカな」
といって、鼻で笑い飛ばしていたことだろう。
その発想は、自分でも奇抜だと思ったその理由、いや、その発想自体が、
「小説の世界ならいざ知らず、リアルな犯罪ではありえない」
と思われていることだった。
これは、誰も口に出さないが、それだけ、ツーカーのような感じではないかということであろう。実際に、
「こんな犯罪、名前は聞いたことがあるが、実際に不可能だろう」
と思っていた。
その理由は、
「心理的に不可能」
ということであるが、その犯罪が何かというと、
「交換殺人」
というものである。
これは、犯罪の構成上、心理的なところを無視すれば、
「完全犯罪たりえるもの」
といってもいいだろう。
「完全犯罪に一番近い」
と言われているかも知れない。
そもそも、この交換殺人の利点は、
「警察が、地道な捜査と頭を使って、容疑者を割り出した」
つまりは、
「動機が一番ある人間を絞り込んだとして、その人物に完璧なアリバイがあり、他の人には、殺人を犯すまでの動機が見当たらない」
と言った場合、警察は、どうすることもできない。
「アリバイを崩す:
か、あるいは、
「他の容疑者をひねり出すか?」
ということであるが、これが、入念に計画された犯罪であれば、
「後者は考えにくい」
ということになるだろう。
そうなると、
「アリバイを崩す」
という方法しかないのだが、それが難しいとなると、今度は、
「別に実行犯がいる」
つまりは、
「共犯者がいる」
ということにたどり着くということになるのだろうが、交換殺人の味噌は、
「なるべく、犯人同士に接点がないように見せなければならない」
ということだ。
これが崩れると、一気に、急転直下で、事件は解決に向かうということになるのだ。
つまりは、
「交換殺人というのは、もろ刃の剣だ」
ということになるのだ。
そもそも、犯罪というのが、ほとんどが、、綱渡りのようなもので、計画するのであれば、隅々まで行き届いた計画を立てないと、どこでほころびが出るか、分かったものではない。
それを考えると、
「犯罪というのは、少人数でやるもの」
ということになるが、どうしても、一人の頭だと、何かに囚われたり、凝り固まったりすると、それが、捜査と合致すれば、
「スピード解決に貢献する」
ということになる。
かといって、仲間が増えれば増えるほど危険である。
いつ裏切りに遭うか分かったものではない。
何といっても、共犯者が、本当に被害者に恨みを持っているか何かでないと、時間が長引けば長引くほど、不安が募ってきて、
「自首する」
という人も現れるかも知れない。
そうなると、犯罪計画など、めちゃくちゃで、それなら、一人で考える方がマシなのかも知れない。
ただ、犯罪の中には、
「理論だけで考えれば、完全犯罪になる」
といえるものはいくつもあったりする。
つまり、それをやる人は、
「本当のバカか、天才ではないか?」
といえるわけで、
「バカ」
というのは、本当に犯罪が起こってしまって、次第に精神的に追い詰められる人間ということで、
「頭の良し悪し」
ではなく、
「小心者」
であったり、
「臆病者」
というたぐいであり、ある意味、
「犯罪に向いていない人」
ということで、普通の人間であれば、
「いい人」
にランクインするくらいの人であろう。
しかし、
「天才」
というのは、肝が据わっているというのは、もちろんのこと、計画性もしっかりしていて、その時々のタイミングで、うまく立ち回れる人が、その天才と呼ばれるもので、
「この天才は、頭の良し悪しは前提であり、さらに、好機を逃さない目を持っているという人」
ということになるであろう。
ここで桜井刑事が考えた、
「交換殺人」
というものであるが、その基本というのは、
「動機を持っている人で、一番の重要容疑者になる人物に、完璧なアリバイというものを作ること」
ということである。
そのためには、もう一人、
「誰かを殺したいと思っている人」
を探してきて、お互いに殺したい相手を、
「たすきをかけるようにして」
お互いに殺人を行う」
ということだ。
これの前提として、まず、
「それぞれの犯人、あるいは、被害者が、まったく関係のない人物である」
ということが必要だ。
というのは、
「この二つの事件というのが、かかわっているということになり、連続殺人ということになると、完璧な交換殺人とまではいかないが、共犯がアリバイを作っているということが分かってしまう可能性がある」
ということであった。
「連続殺人」
ということを、警察に匂わせるのは、実に危険なことである。
だから、交換殺人の場合は、
「犯罪計画を、水面下で立てる。その場合も、まわりに、二人が知り合いだということを絶対に悟られないようにする必要があるのだが、その時に、最後まで、完璧な犯行を計画しておく必要がある」
というのは、
「犯罪行為が開始されてから、途中で、話が違うなどといって、相手に不信感を持ったり、疑問を感じたとしても、連絡を取るわけにはいかない。そうなると、すぐに足がつくことになる」
というわけで、この問題は、
「完全犯罪を成し遂げるには、それくらいの困難が必要だ」
ということになるのだろうか?
それを考えると、
「警察が考えることよりも、さらに、深いところを読んで、最初の計画がとん挫すれば、途中から、変更する作戦も立てておく必要もあるだろうし、犯行を実行する前であれば、ヤバいと思えば、どこかで打ち切る必要があるので、そのあたりの問題もあるだろう」
ということだ。
しかし、実際に犯行を犯してしまえば、そこから先は突っ走るしかない。それが、この、
「交換殺人」
という事件の一番の問題点になるのだ。
ということはどういうことかというと、
「ここに、交換殺人など不可能だ」
と呼ばれるところがあるのだ。
本当であれば、これくらいのことは、犯行計画を立てた時に、すべて分かっていてしかるべきではないだろうか?
というのも、
「交換殺人というのは、相手にアリバイを作らせておいて、相手が死んでほしい相手を、もう一人が殺す」
ということになる、
そして、
「今度は最初の実行犯のために、最初の主犯が、今度は、実行犯となり、最初の実行犯のために犯行を犯す」
というものである。
そして、ここで肝心なことが、
「この二つの犯罪は、まったく別物であり、連続殺人ということが分かってはいけない」
ということで、犯罪を犯した最初の事件から、次の事件までには、
「ほとぼりを覚ます必要」
というものがあるだろう。
一番いいのは、第一の犯行を、警察が、
「御宮入り」
ということで、
「未解決事件」
ということにしてしまうことだ。
今の時代では、殺人などでは、
「時効」
というものがない、
だから、犯人からすれば、昔のように、
「逃亡すれば、15年隠れていれば、あとは時効となり、堂々と表を歩くことができる」 ということであったが、実際に時効がなくなると、どうなるのだろう?」
警察としても、
「時効がないのだから、いずれ、犯人は捕まるさ」
という、心のゆるみのようなものがないとも限らない。
だから、ひょっとすると、
「完全犯罪というのも、逆に今の時代であれば、ありえることなのではないだろうか}
といえるかも知れない。
ただ、この交換殺人というのはそうはいかない。
「第一の犯罪と第二の犯罪の間が、絶対的に期間が離れている必要がある」
ということで、警察がそれを、
「未経穴事件」
としてしまうと、第一の主犯は、その時点で、
「絶対に安全」
ということである。
その時に、
「容疑者に上がったが、アリバイ成立で犯人ではない」
というレッテルが貼られた上に、
「未解決事件」
となったのだから、もし、致命的な証拠でも出てこない限りは、疑われることはない。
つまり、
「実行犯が自首」
したりであったり、
「有力な目撃者が現れる」
でもない限り、迷宮入りはそのまま未解決のままとなるはずだ。
しかも、
「後者の有力な目撃者といっても、かなりの時間が経っているのだから、何かの物的証拠でもないと、警察も取り上げない」
ということになるだろう。
要するに問題なのは、
「第一の犯罪の犯人にとって、第一の犯罪が迷宮入りになった時点で、もう次の犯行を犯す必要がなくなった」
ということである。
「俺は、これで晴れて、自由だと思うと、何を危険を犯して」
ということになるのであり、じゃあ、実行犯が、
「俺が警察に訴えてやる」
ということを言い出したとしても、結局、実行したのは、本人であり、それは、
「巨大ブーメランにしかならない」
ということである。
ただ、ここで怖いのは、
「実行犯が、罪の呵責に駆られたり、このまま自分の死んでほしい相手が生きていることを考えると、自首する方がいい」
と考えた場合である。
自首すれば、少しは裁判でも、
「情状酌量」
ということになり、もし、何か自分に迫っている危険があったとしても、実刑を食らって、刑務所に服役ということになれば、その間、少なくとも危機はないということになるだろう。
うまくいけば、
「服役中に、殺したい相手が、いなくなったりする可能性もある」
ということで、もし犯行動機が、
「復讐」
などではなく、
「その相手から逃れたい」
というものであった場合には、前述の危険はあるだろう。
しかし、第二の犯行の動機が、
「復讐」
ということであれば、
「絶対に、犯行を犯さないといけない」
ということになる。
相手がやってくれないのであれば、脅迫してでもさせればいいのだろうが、そうなると、犯行が露呈することになり、それこそ、二つの犯罪で、実刑ということになり。
「二人そろって、連続殺人の犯人」
ということになってしまうのだ。
しかし、
「交換殺人というのは。実に複雑なところがあるというもので、それが、お互いに連絡が取れないということは、まるで一種のリモート犯罪の様相を呈してくるということになるのではないか?」
ということである。
だから、交換殺人というのは、
「心理的なところで無理がある」
ということである。
このように、最初に犯罪を犯した人が圧倒的に有利だというのは、一つ考え方として、
「三すくみ」
という考え方で考えることもできるというものだ。
「三すくみというのは、三角形になっていて、自分以外の相手に対して。それぞれ、絶対的な強さと弱さを兼ね備えているというもので、それぞれが、うまく交差しあっているという感覚だといっていいだろうか」
というのは、例として、
「じゃんけん」
というものがあげられるし、もう一つ有名なところとしては、
「ヘビ、カエル、ナメクジ」
というものである。
これは、
「ヘビはカエルに強いが、ナメクジに溶かされる」
ということ、
「カエルは、ナメクジを食べるが、ヘビに食われてしまう」
そして、
「ナメクジは、カエルに食われるが、ヘビを溶かしてしまう」
ということである。
このように、それぞれが、たすきに掛かったような力関係を、一種の抑止力といってもいいだろう。
お互いに睨みを利かせることで、相手に手を抱さえないようにするという、力関係の話である。
この場合に、一つ言えることとして、
「先に動いた方が絶対に負ける」
ということだ、
たとえば、前述のヘビを例にすると、
「自分が我慢できずに、カエルと食ってしまうと、あとはナメクジだけになってしまった、結局、ナメクジに溶かされてしまう」
ということである、
とすれば、
「カエルにナメクジを食わせるようにすれば、最後に残るのは自分」
ということになるが、逆に、
「ナメクジが襲ってきた場合」
というのが、一番の問題であった。
というのは、
「ナメクジが襲ってきた場合は、自分が逃げるふりをして、カエルに襲い掛かろうとする。そして、実際には食べないが、驚いたカエルが、今度はナメクジに襲い掛かるのだ」
という作戦で、一種の
「キツツキ戦術」
といってもいいだろう。
だが、今度は、一種のフェイントなので、やはり、最初に、
「カエルにナメクジを襲わせるようにすればいい」
ということになるのだ。
交換殺人の場合も、
「最初に実行犯になってしまった方が、圧倒的に不利である」
ということは、この三すくみの関係に似ているではないか?
「じゃあ、交換殺人においての、三すくみというのは、どういうことのなるのだろう?」
ということである。
交換殺人と、三すくみを一緒にするというのは、少し乱暴な考え方ではないだろうか>
確かに、交換殺人は、
「三すくみの生き残り方」
を彷彿させるものがある、
だが、交換殺人は、
「実行犯と主犯が、交互にたすきをかける」
というような関係になっているので、
「三角形ではない」
ということになる。
ただ、お互いにたすきをかけたところで、三角形、
「いわゆる、直角三角形が、二つできるということになる」
ということだ、
それは、
「一つの大きな三角形であればm3つの関係であるが、たすきに掛けるということで、班員側は、それぞれ、主犯か、実行犯のどちらかが、半分を背負うと考えると、結局二つを足せば、3になる」
ということが言えるのかも知れない。
かなりこじつけた考えであれば、
「交換殺人」
というものが、
「完全犯罪だ」
と言われたのは、
「それぞれに、完璧な抑止力が働いて、動くことができない」
ということからである。
もし、ここで、三角形のもう一つの頂点を、
「警察」
だということにすれば、
「三すくみの関係が、犯行が行われた後から」
と考えれば、
「二組の犯人と、警察の間で、先に動いた方が負け」
ということになるのだが、この場合に一番不利なのは警察である、
警察以外の二組の犯人は、
「これが交換殺人だ」
ということを分かっているのである。
知らないのは警察だけであり、だから、
「一番最初に動くのは警察だ」
ということだ。
事件解決が警察の仕事なのだから、それも当たり前ということで、だから、警察が動いてしまうと、完全犯罪になると考えると、犯人たちは、
「完全犯罪の中にいることができて、安心である」
ということになるのだ。
だから、問題は、
「犯人側で、不穏な動きを見せないことが大切だ」
といえるだろう、
警察より先に動いて、計画通りにいかなくなると、二組で一つになってしまい、そうなると、
「力関係は、警察の方が圧倒的に強い」
ということになるだろう、
そのことから考えても、
「交換殺人は、本当にもろ刃の剣だ」
ということになる。
警察というところは、
「雁字搦めで、まるで猪突猛進」
ということを考えれば、犯人側にも、
「ワンチャンある」
といえるかも知れないが、交換殺人というものを形成していると考えると、
「どちらがどちらともいえないところがある」
やはり、
「三すくみの関係が、先に動いた方が負けだ」
という理屈に当てはめることができるのだろう。
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