第7話 自己紹介
場が整ったのを確認して、美穂先生は教卓の横にあった椅子を引っ張って私たちの方へやってきた。
私の机と、さっき私の後ろの席で今は私の真ん前に座っている男の子の机の横に椅子を置いて、
「まずは先生からしようかな。トップバッターは言い出しっぺの先生からじゃないとね!」
座りながら言った。
みんなが頷いたのを確認して、コホンッと小さく咳払いする。
「えー、内田美穂です。みなさんご存知の通り、特別クラスAの担任をしています。年齢は……企業秘密です。」
企業秘密ですという言葉を声を潜めて言った先生に、みんながどっと笑った。
「先生、企業だったんかい!」
やんちゃそうな男の子がツッコんだ。
そのツッコミを華麗にスルーしながら、
「先生と言えば……やっぱり若さかな。名駿アカデミーの先生の中で1番若いという自負があるので、その若さのおかけでみんなにも親しみを持ってもらえてるんじゃないかと思います。」
美穂先生はにっこりとして続ける。
「年齢の話、企業秘密ちゃうんかい!自分で話題にしてもうてるやん……。ちゅうか、自負でええん?」
我慢出来ずに、関西弁の女の子がツッコんだ。
美穂先生は関西弁の女の子を見て口に人差し指を当てた後、
「それは、言わないお約束……ですよ。
みんなの方を見てにっこりとした。
「先生。」
のんびりとした声の男の子がそう言うと、美穂先生の方を見て手を上げた。
「はい。どうしました?
美穂先生は不思議そうな顔でその男の子を見る。
「俺、先生の良いところ、知ってる〜。みんな平等に見てくれるところ〜。先生のそういうところ、俺、好きだな〜。」
男の子はなんの恥ずかしげもなくそう言うと、穏やかな笑みを浮かべた。
美穂先生に今日会ったばかりの私を除いた、みんながその言葉に同意するように頷く。
異性の先生に、素直に好きって言えるのすごいよね!
私がその男の子に感心していると、
「ありがとう、宗方君。そう言ってもらえて嬉しいです。宗方君も先生のことを褒めてくれたということで、先生の自己PRは充分出来たかな。なので、トップバッターの先生の自己PRは以上にしたいと思います。聞いてくれて、ありがとう。」
美穂先生は嬉しそうに微笑むと、みんなに向かって軽く礼をした。
すると私の隣にいる男の子が拍手を始め、それが徐々に場に広がっていく。
「はい、ストーップ!」
その拍手が止め時を失ってずっと続きそうになったので、美穂先生が止めるように声を上げた。
そして、
「先生、忘れ物しちゃったので事務局に取りに行ってきます。その間にみんなで進めといてくれるかな?」
そう言うと美穂先生は立ち上がって、私の隣にいる男の子の方を見た。
「それでは、
その男の子が頷いたのを確認し、美穂先生は足早に教室を出て行った。
美穂先生を見送って、
「はい、進行を任されました、
私の隣にいた男の子が声を上げる。
この子が墨田巧望君。
資料の3枚目に書かれていた子だ。
私が巧望君を見つめていると、巧望君はみんなを見回して、
「順番、普通は俺からってなると思うけど、俺はまとめ役なので最後にしようと思います。」
と言った。
そして、みんなが頷いたのを確認してから、
「じゃあ、秋からいこうか。」
と言って隣を見る。
巧望君の隣の男の子は、
「おう、任せろ。」
ドンと胸を叩いて自信ありげだ。
「俺は
少し掠れていて、深みを感じる声がそう言った。
身を乗り出して巧望君越しにこちらを見るその目は明るくて、その奥に微かな闘志も見える。
どこか親しみを覚えるその顔付きに似合わない、がっしりとした肩から伸びる腕は、服の上からでも分かるほど逞しかった。
早川秋君、この子が資料1枚目の子だ。
私が秋君の言葉に頷くと、
「年は12、小6だ。俺が特Aの中で1番年上。だが、この話をするとこいつらからは精神年齢は1番下だの、年齢と生まれた月を偽ってるだの言われんの。こいつらみんなで俺のことをバカにしてんだ、酷い話だろ?」
秋君はみんなを睨んだ後、同情を誘うような目で私を見た。
単的で崩した物言いに、彼の性格がよく表れているようだった。
「だが、そんなこいつらでも、俺に一目置いてるとこがあんだ!幾つかあるんだけど、まずはこのガタイだ。」
神妙な顔つきをしたかと思うと、いきなりばっと立ち上がって自分をびしっと親指で差した。
俺を見ろと言うような感じで。
いきなりのことで私はびっくりする。
周りのみんなは呆れたような表情になった後、秋君の方を見ずに遠くの方を見てたから、秋君のこういう行動はよくあることなのかもしれなかった。
でも、立ち上がるとよく分かったんだ。
秋君の言うガタイの良さ、そしてスタイルの良さが。
1番最初に思ったことは、背がすごく高いなってこと。
パッと見で、170cm近くありそう。
そして、上半身、特に肩や腕周りを見るとがっしりし過ぎているように見えたんだけど、立ち上がった時の全身を見ると腰の位置が高く足が長いのですらっとしててスタイルが良い。
下半身もがっしりしてるけどラグビー選手みたいなどっしりとした筋肉のつき方じゃなくて、骨格に沿った筋肉のつき方だから体が全然重そうに見えなかった。
トータルしてその体格は小学生離れしていて、廊下とかですれ違っても一瞬秋君だと気付けないだろうなと感じた。
「秋君って背が高いんだね。よく鍛えられていて、筋肉のつき方もバランスがいい。」
顎に手を添えて私は言う。
失礼ながら、そのスタイルのいい体を上から下までじっくりと見つめながら。
すると、秋君は嬉しそうにぱっと目を輝かせて、
「服の上から見て分かるのか?さすがだぜ、塚本。特Aに選ばれただけあるなあ!」
私の方を見た。
「そんな塚本に、歓迎の印として俺の自慢のシックスパックを見せてやろう!」
そう言うと秋君は、着ていたグレーのパーカーを脱ぎ捨てた。
そして、パーカーの下に着ていた白いシャツの裾をたくし上げようとする。
「待った。止めろよ、秋。」
その手を、巧望君が手を伸ばして押さえた。
「何だよ、巧望。俺のシックスパック、きれいに割れてるだろ?出しても恥ずかしくないぜ。」
不満げに眉を寄せる秋君。
「ああ、お前の腹筋はかっけぇよ。だけど、駄目だ。相手は今日知り会ったばかり女の子。上半身とは言え、男の裸だろ?今日会ったばっかりの異性の子にそれを見せるのは良くない。」
シャツの上がった裾を下ろしながら、巧望君は片眉を上げて言った。
「そっか。腹筋も裸のうちに入るのか……。悪かったな、塚本。変なこと言い出しちまって。」
そんなこと頭になかった、そんな表情で席に座りながら秋君は言った。
秋君って、天然なんだな。
腹筋は裸には入らないような気もするけど、まあいっか。
巧望君は、秋君と私を心配して止めてくれたんだろうな。
秋君と巧望君を見て、ふと微笑ましくなる。
「早川ってやっぱ変態、やな。」
ぼそっと関西弁の女の子が呟く。
「ああ?今なんつった?」
秋君がその発言に噛みついた。
喧嘩が勃発して話題が逸れそうになったので、
「秋、他に話しておきたいことはないか?」
すかさず、巧望君が進行として場を仕切る。
話を振られた秋君はおっほんと咳払いをすると、
「他はそうだなぁ、ズバリ空手だな。空手初段、去年の全日本少年少女空手道選手権の5年生の部で優勝。1年のときから去年まで優勝してるから、連覇の記録持ってる。」
ニヤッと笑って言った。
経歴を並べられてから改めて秋君を見ると、書類を見たときに思った、国を代表する未来の空手選手のオーラをより感じる。
「言うだけじゃ大言壮語してるだけだ。実際に見せてやるよ。」
秋君はそう言って立ち上がった。
「おい、あんまり音を立てるなよ?」
巧望君は止めはしないが別の懸念がある、と言うように秋君を見た。
特Aの他に4階の教室を使っているクラスはいくつかあるようで、そのクラスへの配慮のようだった。
「おう。音なんか出さなくても、覇気っていうのは体から出るもんなんだよ。」
秋君は頷くとニヤッとした。
そして、教室の後ろの方へゆっくりと歩いて行く。
みんなが秋君の方へ視線を送る中、真ん中の方へ行くと秋君はこちらの方を見た。
踵を合わせてつま先を60度に開けて立つと、両手を体の横につけて真っ直ぐと正面を向く。
結び立ちと言い、気をつけとも言われる立ち方だ。
そして、ゆっくりと手を膝がしらにに向けて滑らせると、45度で礼をした。
立礼と言われる礼の仕方で、礼の角度は礼をする相手によって変わるらしい。
そのきれいな礼に思わず見惚れていると、今度は足を肩幅くらいに開いて拳を握った。
そのまま両手を上げてお腹の前に持ってくると、交差させて振り下ろした。
そして左半身を残したまま、素早く右足を左の方へ大きく一歩踏み出し、それと同時に右手の拳を同じ方へ突き出す。
その瞬間、秋君のベリーショートの茶髪がふわっと浮き上がる。
顔は足と拳を突き出した方と同じ方を向いていて、鋭く細められたその目には闘志の炎が燃えていた。
まるで、そこに相手がいるかのようにだった。
でもその炎は不思議なことに、チリチリと静かに燃えていたんだ。
あれだけ思ったことを素直に口に出す性格の秋君らしくないその静かな闘志に、私はドキリとする。
その意外な一面に、不覚にもかっこいいと思ってしまったから。
彼は意外にも、勝負どころやいざという時はより冷静になるタイプなのかもしれなかった。
秋君は最後に、体を背中側に1回転させながら回転方向の足で蹴る技、後ろ回し蹴りを披露して場を締めくくった。
「あー、普段組み手ばっかやってっから緊張したぜ。塚本、どうだった?」
首に片手を添えて肩を回しながら自分の席までやってくると、秋君は私を見る。
「上手だったよ!私あんまり空手詳しくないんだけど、最後にやった後ろ回し蹴りって技、難易度高いんだよね?」
私はスタンディングオベーションで迎えながら頷いた。
秋君はそんな私を見て、
「おっ!後ろ回し蹴りなんて名前知ってんなら、詳しい方よ。素直に褒めてくれる奴がいるのは嬉しい限りだぜ。こいつらは見慣れてて何も言わねぇからなぁ。」
片眉を上げてニヤッと笑ったかと思うと、大きくため息をついた。
「空手良いなぁ……。私もどこかの道場入って習おうかな。」
私はふと呟いた。
Terminusの任務でも役に立つかもしれない、そう思ったから。
「へぇー、似合うと思うぜ。顔立ちからしてどっかのお嬢様みてぇなのに中身はかっけぇのな、塚本って。」
秋君は一瞬驚いたように目を見開くと、眩しそうに目を細めて微笑んだ。
途端はっとして、
「塚本って、客寄せパンダならぬ男寄せ美少女だよな。もしかしてそういうストーカー的な奴がいて困ってんのか?安心しろ、そんな奴がいても俺が守ってやるからな!」
勘違いをヒートアップさせながら自分の胸を叩いて私を見る。
俺が守ってやるからな!という部分が私の頭の中でエコーがかかって聞こえ、思わず吹き出しそうになる。
いかんいかん、耐えるんだ私。
「どっちがストーカーや……。」
「きもい。」
今まで秋君の言動を傍観していた関西弁の女の子と私の前に座っている男の子が、同時にぼそっと呟いた。
それにまた吹き出しそうになるのを堪えるのが、すごく大変だった。
「はい……では……次は信武、よろしく。」
巧望君もその一部始終がおかしかったのか、笑いを噛み殺しながら話を進める。
「は〜い。俺は、
秋君の前に座っている男の子が、ニコニコしながらのんびりと言った。
スーちゃんか、えへへ可愛いあだ名。
宗方信武君、資料5枚目の子だ。
SEREを受けたと書かれていたけど、とてもそんな子には見えないな。
私は頷きつつ、信武君を見つめる。
「魅力……俺の魅力はいつものんびりマイペースなところ〜。よく周りの人に褒めてられてるところだから、俺の魅力だと思う!」
フフンと笑ってそう言うと、くあ〜とあくびをする。
確かに……マイペースだ。
「他に言うことは……う〜んと〜、体が柔らかいところかな。」
そして、のんびりと席を立ちながら言った。
さっき秋君が技を披露した場所までのんびりとした足取りで行くと、床にゆっくりと腰を下ろす。
ほら見ててと言うような顔をすると、両足をガバッと横に広げて開脚をする。
秋君より全体的に1回り小さい信武君の足は、服の上から分かるほど線が細くて女の子みたいに華奢だった。
信武君の白に近いグレーの猫っ毛が、ふわふわと頬の横で揺れる。
180度まで開かれた見事な開脚を見せるその頬は全く赤らむことなく、表情は涼しげだった。
そしてすっと足を後ろに閉じて立ち上がると、今度は縦に脚を開く。
両足が縦にきれいな一直線を描く様子に、思わず感嘆の息が漏れた。
周りのみんなも同じようで、何も言わないけど視線は釘付けだった。
「信武君はバレエか何かしてるの?」
見事な開脚を見せて席に戻ってきた信武君に、思わず私は聞いた。
「う〜んと、多分?バレエはちっちゃい時にやってたみたいだけど、俺はあんまり覚えてない。今はもちろんやってない〜。」
椅子に座りながら、信武君は首を捻る。
「そっか。今はしてないのに、すごく体柔らかいんだね。」
私は感心しながら頷く。
すると信武君はばっと立ち上がると、椅子をそのままにして私の方へゆっくり歩いて来る。
な、何だろう。
頭にゴミが付いてるとか?
私が不思議に思いながら信武君を見つめていると、信武君は私の目の前で立ち止まった。
そして、お互いの顔がぶつかりそうなくらい私に顔を近づけると、
「俺のこと、気になる?」
低い声で甘く囁いた。
信武君からそんな声が出ると思わず、私はびっくりして目を見開く。
そんな私の様子に、信武君は少し目を伏せた後再び開いてじっと私を見つめた。
長いまつげが女の子みたいな白い頬に一瞬影を落とした後、再び開かれた私を見つめる瞳の中で様々な色の光が瞬いた。
その様子はオパールが遊色するようだった。
綺麗……、まるで、宇宙みたいだ……。
深い藍色の中で瞬く様々な光は、広く暗い宇宙空間に浮かぶ星のように見えた。
その星に見惚れていると、信武君がぱっと私から離れる。
少し目にかかる長さの前髪の隙間から見える眉尻が、残念そうに下がっていた。
「君には効かないんだね……俺の魔法。残念〜。」
信武君の魔法?
どういう意味だろう。
信武君の言葉の意味が分からなくて、私は首を傾げながら信武君を見つめる。
信武君はいたずらな笑みを浮かべるだけで、言葉の意味を教えてはくれない。
すると、関西弁の女の子が席を立った。
ツカツカと私と信武君の方へ来ると、信武君の白シャツの襟を掴む。
「この子の特技なんや、目で人を落とすんが。それ自分で魔法って言うてんねんけど、あんたには効かへんかったみたいやけどな。」
むんずと掴んだままそう言った後、ずるずると引きずって行って席の前まで行くとパッと離す。
その間の信武君はというと、
「わあ〜い。」
と言いながらなされるがままになっていた。
むしろ、引きずられて楽しそうだったね……。
席に着いた信武君は、
「俺の目を見た人、みんな俺の言うこと聞いてくれるんだ〜。俺だけが使える魔法。俺の特技の1つ〜。」
にっこりとしてとんでもないことを言い放った。
信武君の目を見ただけで、その人は信武君の言うことを聞いてくれるようになる?
どういうことだろう……催眠術?
再び私が首を傾げると、そんな私を横目に関西弁の子が呆れたように口を開いた。
「タネも仕掛けもあれへんで……。答えは簡単、人の恋心を利用してるんや。信武の顔見て落ちんかった人って、あんまおれへんねん。何やったら、信武の顔見て失神した人もおんねん。」
本人は気付いてへんけどな、そう言うように信武君をチラリと見る。
信武君はその関西弁の女の子の言葉に、不思議そうな顔をしていた。
その言葉の意味を、よく分かってないらしい。
私はその関西弁の女の子の言葉になるほどと思いながら頷きつつ、信武君が物事の真相に気付いてないことに驚く。
まあ、あれだけきれいな顔立ちをしてたら顔見ただけで恋に落ちる人がいてもおかしくはないけど……。
信武君はそれに気付かずにいて、悪気はなくその恋心を弄んでるっていうわけか。
天然って怖いや……。
パッチリとした二重や細く高い鼻に鮮やかな唇を持つ彫りの深い顔立ち、信武君の美少年さにくらっとしながら思った。
「信武、他にはないか?」
巧望君が人差し指で机をトントンと叩きながら、信武君を見て言う。
その細く長いきれいな指は骨張っていて、女の子とは違う魅力があった。
「うん、俺のは以上で〜す。」
信武君がニコニコしながら言うのを聞きながら、私はふと思う。
彫りの深い顔を見ると、それこそ信武君がハーフなんじゃないかって。
ふとそう思ってぱっと顔を上げると、関西弁の子と目があった。
関西弁の子は私と目が合うとニヤァと笑う。
「せや!あんたの思った通りやで。信武はハーフやねん。日本とカナダのな。」
その意味深な笑みで、私を最初に見た時の秋君の言葉を思い出した。
おい、あいつってハーフか。
それと信武君が言った言葉。
秋、海外の人大好きだもんね〜。それとハーフとクォーターも。
もしかして、秋君……。
はっとして口元を抑えた瞬間、関西弁の女の子が口を開いた。
「実はな……早川は信武のこと、初対面の時女の子やと思うたんや。何故なら、その時の信武は腰まで髪あって、その髪を三つ編みまでしとったさかい、女の子にしか見えへんかった。今も女の子っぽさ残ってんねんけど、その当時はほんまに可愛かってん。まさしゅう、美少女やった。ほんで見事に……早川はその信武に恋に落ちたんや!」
うっとりとした表情で、その時の思い出に浸るように言うその様子に、思わず吹き出しそうになる。
秋君はぎょっとした後、
「ちょっ、何でその話、今す……。いい加減忘れろよ、昔の話だろ?」
顔を真っ赤にして横を向いた。
「そん時から、早川の好きな顔はゲルマン系の顔やねん。忘れろ?そんな無茶な話聞けるかい!私、衝撃的やったんやさかい。男の子を女の子と勘違いして恋に落ちるなんて、漫画の中でしかあり得へんと思うとったのに。」
関西弁の女の子は呆れたように首を振って言った。
「盛り上がってるところ悪いけど、その話はまた後で。次は、洌崎の番だ。よろしく。」
巧望君が机をノックするように叩くと、話が脱線しそうになるのを止める。
「はいよ、任せなはれ!」
関西弁の女の子が大きく頷いた。
そして私の方を見ると、
「私は
さっと左手を私に差し出した。
洌崎依那ちゃん……資料の4枚目の子で唯一の女の子。
私が頷いてその手を握ると、依那ちゃんは嬉しそうににっこりとする。
ぱっとお互いの手が離れてから、依那ちゃんは再び口を開いた。
「特Aはな、私と信武と律が小1、委員長と早川が小2の時に出来てん。その時からメンバーが減りはするけど増えへんで、途中から女の子は私だけになったんや。ずっと紅一点やってん。珠明ちゃん、よくぞ特Aに参った!」
机に身を乗り出して、キラキラとした目で私を見つめる。
腰まである黒のロングヘアーは艶やかで、さらさらと揺れる。
両肘をついてその手に顎を乗せてこちらを見る顔には、ずり落ちそうなほど大きい太いフチの丸眼鏡をかけていた。
その眼鏡の奥にある目は縦に大きくパッチリとしていて、その瞳にはキラキラとした好奇心が見え隠れしている。
「珠明ちゃんとか勝手に呼んでもうて……。良かったかいな?」
忙しなく開かれる唇は赤くぽってりとしていて、彼女の透き通りそうなほど白い肌によく映えていた。
依那ちゃんは、いわゆる日本美人という言葉がピッタリな子だった。
そんな依那ちゃんに見惚れながら私は頷いた。
「うん、いいよ。私も依那ちゃんって呼んでいい?」
依那ちゃんはぱっと顔色を明るくする。
「やった!もちろん。気にせず好きなように呼んでな?依那ちゃん呼び……うーん、新鮮や!」
噛み締めるようにそう言うと、考えるように目線を上げる。
「あんな、珠明ちゃんに私のどんなとこをPRしよか考えてんけどな。やっぱ私言うたら、関西弁や思うんや。」
目線は上のまま、ずり落ちてくる眼鏡をフチを押し上げた。
「確かに!私からしても依那ちゃん=関西弁の子ってイメージだよ。」
私が大きく頷くと、
「そうやん?そやさかい、私の魅力は関西弁を話すとこや思います。」
依那ちゃんはにっこりとして言った。
そして続けて、
「あと、私は夜空見て星の名前言うのと、天気当てるのが得意やねん。」
そう言うと窓に視線を向ける。
その視線の先をみんなが追うと、
「あともう少ししたら雨降るで。」
視線を窓に向けたまま、口の端に笑みを浮かべて優雅に言った。
その瞬間、サアッと音を立てて雨が降り始める。
「すごい!何で分かったの?」
依那ちゃんが雨が降ることを言い当てたのがまるで手品のようで、私は思わず興奮した声を上げた。
「簡単なことや。窓の外をふと見たら、急に暗なってた。黒い雲が近づいとったさかい、もうすぐ雨降るなって分かったんや。」
依那ちゃんは大したことないと言うように肩をすくめて言う。
「私の得意科目は理科やねん。天気のこともこの延長で学んだんや。そんで、将来は宇宙物理学者目指しとって、今物理学の勉強してます。」
そう自信ありげに言った。
依那ちゃんは情報通り物理学に興味を持っていてそこに熱を注いでいるらしい。
それが分かって、私は依那ちゃんの将来が楽しみで仕方がなかった。
「口で言えることは大体言うたさかい、あとは私と関わりながら知っていってほしいな思います。以上です。」
依那ちゃんは最後、私を見つめながらそう締めくくった。
関わりながら知っていくか、一目見ただけでその人のことが分かるわけないもんね。
私は依那ちゃんを見つめ返しながら、その言葉の深さに感心する。
それと同時に、自分を知ってほしいという依那ちゃんの気持ちに嬉しくもなったんだ。
「はい、洌崎、ありがとう。次は律だね。よろしく。」
巧望君が依那ちゃんを見て頷くと、依那ちゃんの隣の席の男の子を見て話を進める。
「ん、
その男の子は頷くと、そっけなくそう言った。
資料6枚目の子、かな。
細流って名字って多分珍しいよね、初めて聞いた。
律君の言葉に頷く私をじーっと見つめると、
「俺は曲作んのが得意。聞くか?」
律君はそう言って、机に置いていたタブレットのカバーに手をやる。
私が頷くと、素早くタブレットを起動させて何やら操作を始めた。
「お前、また新しい曲作ったの?」
「あれこの前、新曲出したばっかやなかったん?」
「律君の新曲、楽しみ〜楽しみ〜。」
「今度はどういう曲にしたんだ?」
他のみんなも身を乗り出して、律君のタブレットに興味津々だった。
律君はタブレットに視線を落としながら、
「そ、新曲。この前のは企業からの依頼で、ウェブで流すCMのために作っただけ。今から流す曲は俺が作りたかっ
たから作ったやつ。そろそろ近付いてくる夏を、爽やかに感じられるようなイメージにしてる。」
次々と飛んでくる質問にさらっと答える。
企業のCMで流す曲を作曲ってことは……作曲家としてそれなりに名前が知れてるってことかな。
ということは、律君はやっぱり書類の6枚目の子だ!
再生回数4500万回越えを叩き出した若き天才作曲家『凸凹』の、未公開と思われる新曲が聞けるなんて、凸凹のファンから羨まれちゃうよね……。
ファンからの視線がちょーっと怖いけど、凸凹改め律君の作った新曲を聴くのが楽しみな気持ちは隠せなかった。
私含めみんなが期待の眼差しで、律君の手元にあるタブレットを見つめる。
その期待を一身に受けながら、律君は口を開いた。
「流すから静かにしろよ。」
そう言って、みんなに右手を向けると静かにその指を折っていく。
5、4、3、2、1。
そこまでいくと右手をぎゅっと握り締めて、タブレットに置いていた左手を動かす。
その瞬間、タブレットから音楽が鳴り出した。
みんながその音に耳を澄ませるが、途端に首を傾げ始める。
「これ、クラシックじゃね?」
曲は知らねぇけどと言うように眉をひそめて、秋君が言った。
曲の入りからバイオリンの優雅な音が聞こえてくる感じ、私も詳しくないけどクラシックのように感じる。
律君はさっと顔色を変えて、タブレットを操作して音楽を止めた。
「悪い。親が送ってきたやつを間違えて流したっぽい。」
苦い顔をして律君が言うと、
「大丈夫〜、リッ君の曲じゃないのすぐ分かったから。リッ君、クラシック嫌いなのみんな知ってるから〜。」
信武君が首を振って、なだめるように律君を見る。
「親さん、まだ諦めてへんの?あんたをオーケストラ団員にする話。」
依那ちゃんが顔をしかめて、口をへの字に曲げる。
律君は依那ちゃんの問いに答えようとせず、表情を固くした。
「おい、洌崎よせよ。家でもないのに、そんな話律は聞きたくないだろ。俺だって聞きたくない。」
秋君が依那ちゃんをたしなめるように、静かな声で言う。
「律、お前の新曲聞かせろよ。俺、聞きたくてウズウズしてんだから。」
巧望君が場の空気を変えるように、鶴の一声を上げた。
今までみんなより一歩引いた視点で物事を見ているように見えた巧望君が、強引で我を出すような言い方をしたので私はびっくり。
こんな一面もあるんだ……意外。
一瞬そう思ったけど、巧望君の言動の意味に気付いて納得したんだ。
全ては場を丸く収めるための行動なんだって。
強引なのは逸れたみんなの意識をもとの場に戻すため、我を出したのは俺がそう思ってるんだから良いだろうって、正当性と説得力を持たせてみんなを納得させるため。
そして、嫌な話題から律君を守るため。
複数の目的をたった二言発するだけで果たしてしまう、その言動もすごいけどもっとすごいのは、本人がそれを涼しい顔でさらっと自然にやってのけるところだった。
律君は巧望君の言葉に表情を和らげ、
「ん、ちょっと待ってろ。」
巧望君の方を見て頷いた後、タブレットに視線を落とす。
みんなもつられて、律君の手元に視線を落とした。
少ししてから律君が声を上げる。
「OK。今度はちゃんと俺の新曲だから。」
さっきと同じように右手の指を折っていく。
その過程でみんなもすっと口を閉じていった。
5、4、3、2、1。
さっきと同じように右手を握りしめると、左手でタブレットを操作する。
その瞬間、タブレットから音楽が流れ出した。
思わず私は目を瞑る。
爽やかな風を感じたから。
教室のドアも窓も閉まっているのに。
律君の曲がそう感じさせてるのだと、少ししてから気付いた。
爽やかな中に気だるさがあって、その奥に微かな切なさを感じる、そんな曲だった。
耳馴染みが良くてすっと入ってくるのにそのまま通り過ぎず、気付けば心をぐっと掴まれてる。
その上、歌詞がなく音だけでそう感じさせる、不思議な曲でもあった。
この曲良い……好き!
思わずそう言ってしまいそうになる。
曲が終わって音が止むと、
「すっげぇ……良いじゃん、新曲!」
秋君が1番に声を上げた。
目を閉じて感嘆の息をもらす秋君に、
「俺、この曲気に入ったよ。さすが天才アーティスト律だ。」
巧望君が頷く。
「ええやん!やっぱあんたは作曲やるんが向いてる。」
依那ちゃんが律君の肩をがっと掴んで言うと、
「依那、痛い……。」
律君が顔をしかめた。
その様子を見ながら、
「リッ君、さすがぁ〜。天才!」
のんびりとした口調で信武君が律君を褒める。
「信武は褒めんの下手。嬉しいけど。」
依那ちゃんの手を外しながら、呆れたように言うと、
「ねえ、あんたはどう思った?曲聞いて。感想、参考にしたい。」
律君は私を見る。
真っ黒な瞳に真正面から見つめられて、私は思わずその瞳を見つめ返した。
吊られた大きな目に細く真っ直ぐで小さな鼻、口の端がきゅっと引き締められていて、芯の強さを感じさせる顔立ち。
やっぱり黒豹に似てる。
こっそり心の中で黒豹君って呼んじゃおうかな……。
まじまじとその顔立ちを見つめてそう思いながら、私は口を開く。
「えっと、率直に好きだなと思った。爽やかな中に気だるさを感じて、その奥に切なさもあって胸がきゅっとなった。なんていうか、爽やかさとかそういうのが体感出来る感じもすごいなとも思ったよ。」
素直に思ったことをそのまま言葉にして、律君に伝えた。
律君は私の言葉に頷くと、満足げに笑みを浮かべる。
「ん、あんた、作曲者の俺の意図をよく汲んでくれてるみたい。ありがとう。」
私が頷くと、律君は笑みを消して私から目を逸らす。
少し宙に視線を送った後、再び私を見た。
「俺、自分のこと、言葉で説明すんの苦手。だから、依那とおんなじこと言うけど、俺と関わって俺のこと知ってくれる?」
じーっと無表情で私を見つめる律君に、
「うん、分かったよ。律君。」
私がそう言いながら見つめ返すと、
「え、あんた、出会ってから初日で下の名前で呼ぶタイプ?」
律君はぎょっとした表情を浮かべた。
あ、そっか、これって日本じゃ変なのか……。
アメリカだとファーストネームで呼ぶのがほとんどだったから、つい……。
ファーストネームは、日本で言う下の名前。
なんなら、目上の人もフォーマルな場以外では呼び捨てで呼ぶくらい。
日本じゃあり得ないみたいだけどね……。
「ごめん、嫌だった?アメリカじゃ普通だったから、癖が出ちゃったみたい。」
変なことしちゃったと思って、慌てて謝る。
「別に。嫌じゃなくて驚いただけだから。律呼びで良いよ。」
律君は気にしてないと言うように片眉を上げて見せた。
そして、
「それよりさ、俺さっき流した曲の歌詞に英語入れたいと思うんだけど、なんかいいフレーズない?」
と言うと、タブレットのメモのアプリを開く。
すると、
「悪いけど長くなりそうだから、後にしてもらって良いか。あと、お前の自己PRは終わったってことで良かった?」
巧望君が律君の机の角をノックする。
律君ははっとしたように顔を上げて、
「あ、以上です。」
と言った。
巧望君は満足そうに頷くと、
「了解。次、塚本さんの番でも良い?俺が最後まとめみたいな感じで締めたいからさ。」
私を見た。
私が頷くと、
「じゃ、よろしく。」
巧望君も頷いた。
私が息を吸って話す準備をすると、みんなの視線が一斉に私の方へ向く。
今までみんなの会話や行動から、それぞれの性格などが分かったので自然と緊張は解けていた。
「先ほども名乗りましたが、塚本珠明って言います。一回で覚えるのは難しいと思うので、何度でも名乗ります!」
そこまで言うと、どっと笑いが起きる。
「タメでいいよ!俺たちも勝手にタメだし。」
秋君がにっと笑って言ってくれた。
私は秋君を見て頷いた後、口を開く。
「律君が質問してくれた時に答えたけど、学年は小6で年齢は12歳。今までアメリカにいたんだけど、諸事情で日本に来たんだ。」
アメリカから日本に来たことを告げると、わっと歓声が上がる。
「すっげぇ!いいな、俺もアメリカ行きてぇ……。」
秋君が感嘆した声を上げると、
「やめとき。あんた英語できへんし、絶対迷子なるで。」
すかさず依那ちゃんがピシャリと言う。
「え、英語はこれから身に付けるって話よ。まだまだ俺の英語力は未知数だっての!」
秋君がしどろもどろになりながら言ったので、依那ちゃんは呆れた顔をしてため息を吐いた。
そんな2人を横目に、
「アメリカではどこに住んでたの?」
意外にも、巧望君が興味深そうな顔で私を見て言った。
へぇ、意外とアメリカに興味あり?
私はちょっと驚きながら答える。
「ワシントンDCだよ。アメリカの首都。」
巧望君が相槌を打つよりも早く、
「ワシントンって何があるの〜?」
信武君が首を傾げながら言った。
「有名で思い浮かべやすいので言うと、ホワイトハウスかな。」
ホワイトハウスは、アメリカの大統領官邸として知られている。
ホワイトハウスの名前を上げたのは、日本でもニュースとかで見たことあって、みんなが分かりやすいんじゃないかなと思ったから。
その予想は的中したようで、依那ちゃんが目を見開いて言った。
「ホワイトハウスってワシントンにあるん!?名前は知っとったけど、どこにあるかは知らへんかったわ。」
巧望君が依那ちゃんの言葉に頷きながら口を開く。
「ホワイトハウスに加えて、アメリカの国会議事堂もワシントンDCにあるよ。正式名称はアメリカ合衆国議会議事堂、米国議会議事堂とも呼ばれている。日本でいう東京のように、アメリカの首都で政治の中心地だ。」
巧望君の言葉に相槌を打ちながら、
「スミソニアン自然史博物館やスミソニアン航空宇宙博物館ってのもある。依那、好きそう。」
律君がタブレットに視線を落として言った。
「いいや、好きどころか、一回は絶対行ってみたい場所や。特にスミソニアン航空宇宙博物館はな、世界最大の宇宙博物館なんやで!行かへん手はあれへん。」
依那ちゃんが鼻息を荒くして言う。
「アメリカには何年いたんだ?てか塚本って日本生まれじゃなくて、もしかしてアメリカ生まれでアメリカ育ちの生粋のアメリカ人なのか!?」
秋君がわっと声を上げて私を見る。
その忙しない様子に、私は笑いそうになりながら答えた。
「えーと、5歳までは日本にいたみたい。物心ついたときにはアメリカにいたから、5、6年はアメリカにいるね。だから、日本生まれアメリカ育ち、になるのかな。」
私は両親の顔を知らない。
それは、私に両親がいないのと同じことだと思う。
よく覚えていないんだけど、生まれてから5歳までは児童養護施設に入っていたみたい。
でもそんなこと、みんなには言えなかった。
良い話じゃないし、みんなとは楽しい話をしていたかったから。
「物心ついた頃からアメリカにいるってことは、英語はほとんどネイティブレベル?」
巧望君が首を傾げて私を見た。
「うん、多分ね。」
私は頷いて言葉を続ける。
「アメリカじゃそれが普通だけど、日本じゃ特技に変わるんだと思うと嬉しくなるんだ。だから、私の特技は英語を話せること。」
みんながおおっと声を上げて拍手をするなか、
「じゃあ、俺に1フレーズ頂戴。さっきも言ったけど、新曲の歌詞に入れる。」
すかさず律君が口を開いた。
「いいけど、どんな歌詞にしたいの?雰囲気でも良いから、さすがに何かイメージがほしいよ。」
私が頷きつつ聞き返すと、
「鬱陶しい夏みたいな奴を皮肉るイメージ。俺は俺だから、関わってくんな、邪魔!みたいな……感じ。」
律君は即座に返した。
すぐに答えてくれるところを見ると、律君の中で曲の中の人物やイメージがしっかり固まっているみたいだった。
「It get on my nerve.とかはどう?訳すと、いちいち、うざいねっていう意味になるよ。nerveは神経っていう意味の英語で、神経に触れる、イラッとするっていう怒りの表現なんだ。」
私が少し考えて、候補を複数思い浮かべながら言うと、
「良いと思う。曲のイメージにぴったりだ。」
律君が満足げに頷いた。
「あとは……Get out of my sight!で気持ち悪いし、うざいからどっかに行って!とか、What tha hell!で何?うざっ!みたいなフレーズもあるよ。」
複数浮かべていた中でも良さそうなフレーズがあったので、付け加えておいた。
律君は言葉の代わりに、私に左手でグッとサインを見せた。
「どれも良い感じだから候補として採用。でも、発音良すぎてスペル分かんない。」
片眉を上げて肩をすくめる。
そりゃそうだよね。
母国語でもないのに、耳で聞いただけじゃ分かるはずないや。
それに、歌詞に入れるならスペルだって重要だもんね。
反省した私は急いで机の引き出しからルーズリーフの紙を取り出すと、さっき上げたフレーズを箇条書きで書き起こした。
読み方やアクセントの位置、和訳も書き入れて律君に渡す。
「ん、どうも。早急に仕上げるから、楽しみにしてて。」
律君は片手で受け取ると、ニヤッとして言った。
「塚本、英語の発音良すぎ……。俺、全然聞き取れなかったぜ。」
秋君がその様子を見ながら、後頭部に手をやってぼやく。
「私も!むしろ日本語も流暢なんが不思議なくらいや。」
依那ちゃんが大きく頷いた。
信武君はにぱーっと笑って頷いたけど、何も言わなかった。
「英語はもちろん、日本語も流暢だよね。日本語はもともと話せてたの?それとも勉強したの?」
巧望君が秋君と依那ちゃんの言葉に頷きながら、不思議そうな顔をして私を見る。
んーと、基本的に日常会話は英語だったはず。
で、日本語も話せるようにってことで、週に1回は必ず日本人の先生とビデオ通話する時間を取って、日本語を覚えて話してたって感じかな。
でもそんなことは正直に言えないので、
「両親との日常会話を英語と日本語両方でしてたから、勉強したわけじゃないけどそこで身に付いたのかなと思ってる。」
架空のパパとママと話している自分を思い浮かべながら答えた。
納得した様子で頷いた巧望君を横目に、
「あのね、みんなみたいに誇れるものを私は持ってないの。だけど、唯一自分にしかないと思ってるところがあるんだ。それが私の魅力なのかもって。」
架空のパパとママを頭から追い出しながら言った。
誇れるものを私は持ってないという部分に、みんなはそんなことないというように首を振ってくれる。
でも事実だった。
公にして言えるような特技を、私は何も持ってなかった。
私の要素は全て、Terminusに結びついている。
私という人間はTerminusで作られたようなものだった。
そのため私という人間を、ある一定の部分までしか晒けだせない。
それを今まで問題してこなかったけど、今この瞬間それをすごく問題に感じた。
それほどまでに、今さっき会ったばかりの彼らに運命を感じ、彼らとお互いを信じ合える仲間になりたいと思ったのかもしれない。
「それはね、私の見た目かなって思うんだ。日本人みたいだけどどこか西洋の人の顔立ちも持ち合わせていて、全体的に色素の薄いこの見た目。ぱっと見た時に目に止まるこの外見は、私にしかない魅力じゃないかって。」
私は昔のとある出来事がきっかけで、自分の外見がすごく好きになった。
ある男の子が言ってくれたんだ。
私は一等星みたいだって。
どこにいてもその外見は目に止まって輝いて見えるからって、私のことを一等星の中でも1番明るい星である、シリウスと呼んでくれた。
その時からずっと、私の見た目は唯一無二な私の魅力だって思ってるんだ。
「あのさ、誇れるものがないとか言ってたけど、俺はその外見が塚本の魅力なのはもちろんのこと、取り柄でもあって誇れるものだと思う。大抵の奴は一目見ただけで塚本にオチると思うぜ。俺もその1人!」
秋君がニヤッと笑うと、右手の親指を立ててビッと自分を指した。
「うん、言っとることキモいけど、私は早川の意見に同意や。さっき教室入ってきた時、珠明ちゃんが可愛すぎて女の私でも見惚れたさかい。もっと自分に自信持ちや!」
依那ちゃんが手を伸ばして斜め前の机の上に置かれた秋君の左手をつねりながら、私を力づけるように目に強い光を浮かべて言った。
「うんうん、ス〜ちゃん、可愛い。自信、持って〜。」
信武君がのんびりと言うと、
「俺もそう思うけど、信武は正直過ぎ。異性に可愛いとかそんな簡単に言うから、信武が自分のことを好きだって言う痛い勘違いファンが増える。」
律君が呆れたような哀れむような目で信武君を見た。
「うん、みんなの言うとおりに俺も、塚本さんは魅力的な人だと思うし、それが塚本さんの取り柄だと思う。それに、特Aのメンバーになるのって結構難しいんだよ?成績もトップクラスじゃなきゃいけないし、選考基準も謎だ。そんな中、君はアカデミーの上層部に選ばれたんだ。君は特別な人だよ。」
巧望君が強い光を目に浮かべて、真正面から私を見据えて言った。
巧望君、実はね、私が特Aに選ばれたのはTerminusの組織員で任務のためだからなんだ。
だから、何らすごいことじゃないんだよ。
そう心の中で呟いて、少し気分が下がった。
自分で自分を何らすごい人じゃないって、認めた形になったから。
でも巧望君の、君は特別な人だよって言葉が純粋に嬉しくて、その言葉を心にしまっておこうと思ったんだ。
「えへへ、こんな風にみんなに褒めてもらえて、照れちゃうな。自分の取り柄も見つけれたことだし、私の自己PRは以上にしたいと思います。みんな、ありがとう。」
私がお辞儀をしてその場を締めると、
「はい、塚本さんありがとう。塚本さんが終わったんで、次は俺だね。」
みんなが拍手する中、巧望君が私にグッドサインを出しながら場を進める。
巧望君が机を軽く叩いてみんなの注目を自分に向けながら、口を開いた。
「さっきも言ったけど、俺は墨田巧望。小6で11歳、君と同い年だ。よろしくね、塚本さん。」
巧望君が私に左手を差し出して握手を求めたので、私も左手で応じる。
私の手より1回り2回りほど大きくて、角張っているその手はとても男の子らしかった。
巧望君は握手に応じた私ににっこりと笑いかけると、パッとその手を離してみんなの方へ向き直る。
「俺のアピール出来るところと言えば、サッカーがその1つかなと思う。フェムル東京FCのU12に所属してて、去年全国大会で優勝してる。一応レギュラーメンバーとして試合に出させてもらってて、その実力をお見せしたいところだけど
残念そうに言った巧望君を励ますように、
「そうやなあ……リフティング言うてもボールないし。こればっかりは仕方ないで。」
「たく、サッカー上手!俺が保証する!」
「巧望、今日クラブの練習の日だっけ。練習あんなら、場所近いし連れてったげれば?」
「何ならもうすぐ試合だろ?試合、観に来てもらえよ!」
口々にそう言った。
巧望君は苦笑しながら頷いて、
「うん、そうだね。今日はクラブの練習の日だけど、今日いきなりは塚本さんも予定があるだろうし、ちょっとな……。でも、秋の言うとおり、試合だったら日程立てられそうだね。塚本さん、クラブの試合が来週の土日にあるんだけど観にこない?公式戦じゃなくて、ただの練習試合だけどさ。」
そう言って私を見る。
再来週の土日か……。
特に予定もないし、何ならスカウト候補の巧望君をよく知るチャンス。
このチャンスは絶対掴んどかないと!
「うん、行きたい!というか、行かせて!巧望君が試合で活躍してるところ、是非見たいよ!」
私がぶんぶんと大きく首を縦に振ると、
「ありがとう、そう言ってもらえると俺も練習と試合頑張れるよ。じゃあ詳しい話はまた後で。」
巧望君はクスッと笑って頷いた。
拓君は、書類の3枚目の子だ。
サッカーしてる時の巧望君、絶対かっこいいだろうなぁ。
律君よりソフトな色の黒髪が爽やかに風になびいて、いつも優しい瞳の奥には強い闘志と確かな信念が燃えている。
爽やかな雰囲気に似合うその端正な顔を、数滴の汗が伝い、その汗をユニフォームで拭いながら、ドリブルで素早く相手を抜いていく。
そんな妄想の中のかっこいい巧望君に、私は思わず見惚れていた。
「あともう1個、俺のアピール出来るところがあって……」
巧望君が再び口を開いたので、やっと私は我に帰ったんだ。
「俺の得意な教科は国語なんだ。だからその証明として、塚本さんを含めた特Aメンバーに合う四字熟語を発表しようと思う。それぞれの印象や魅力なども含めて選んでみたから、気に入ってもらえたら嬉しいよ。」
そう言うと巧望君は机の引き出しからスッとB5のノートを取り出した。
あ、さっき熱心に書いてたのは四字熟語だったんだ。
巧望君が真剣にノートと睨めっこしていた理由が分かって、私はすっきりする。
みんなが期待を込めた目で巧望君を見つめる中、巧望君はノートを開いた。
いくつか付箋の付いたページがあったが、巧望君は1番後ろの方にある付箋に手をやる。
スッとそのページを開くとみんなを見回した。
そして隣にいる秋君を見る。
秋君はそれに気付いてわくわくした表情になった。
「まずは隣にいる秋から。秋を四字熟語で表すとするなら、
巧望君の語り口調は穏やかで、一語一句はっきりしていた。
その熟語はどんな漢字なのか、どのような事柄を表しているのか、巧望君の声を聞いているだけでその熟語の表す様子が浮かぶ。
巧望君の語る様子は、まるで歌や俳句を詠んでいるようにも見えた。
「おお!徳高望重ねえ……漢字だけ見ると、何か縁起良さそうな感じだな!俺人望厚いか分かんねぇけど、何かみんな話しかけてくれんだよな……。」
秋君が目をキラキラと輝かせつつ、嬉しそうに言った。
巧望君はその様子を見て満足気に微笑むと、今度は自分の斜め前にいる信武君に目を向ける。
「信武を四字熟語で表すとしたら、
そう言った巧望君を見つめて、信武君は何も言わずに首を傾げた。
言葉の意味をよく分かっていないようだった。
ありゃ、信武君は国語が苦手?
その様子を見て私がそう思っていると、
「俺にはよく分かんないけど〜きれいな言葉〜。」
少ししてから信武君が頷いて言った。
そして、嬉しそうに笑うとしばらくの間、
「鏡花水月〜鏡花水月〜。」
と、にこにこしながら呟いていた。
巧望君はその様子を目を細めて微笑んで見た後、
「次は洌崎。」
依那ちゃんに視線を移す。
巧望君の視線を受けて、依那ちゃんはピシッと姿勢を正しながらその言葉を待つ。
「洌崎を四字熟語で表すとしたら……
口の端に笑みを浮かべて巧望君が言った。
「私のこと、よう分かっとる!さすが委員長や。」
依那ちゃんは巧望君の言葉に満足したように笑うと、声を弾ませる。
巧望君がどうもと言うように軽く会釈をして、
「次、律。」
隣の席の律君に視線を移す。
名前を呼ばれた律君はだるそうにあくびをした。
そして、何?と言うように巧望君を見つめ返す。
その視線を受け、巧望君はゆっくりと口を開いた。
「律を四字熟語で表すとしたら……やっぱり
巧望君が口を閉じると同時に、私は心の中で大きく頷いていた。
分かるよ!悠々自適って、まさに律君のためにあるような言葉だよね。
巧望君の話を聞いて、律君がますます猫科動物に見えてきた……。
「ふうーん、俺ってそんな感じなんだ。自分ではよく分かんないけど、素直に好きって褒められるのは悪くないね。」
律君はタブレットに視線を落としたまま、巧望君の方を見ずに言った。
律君、巧望君が言ってるのはそういうところだと思うよ。
私は巧望君を見つめながら心の中で呟く。
「最後、塚本さん。」
ひゃい!
急に巧望君に名前を呼ばれて、変な声が出そうになるのを寸前で抑える。
わー、びっくりした。
焦りを抑えつつ巧望君を見ると、
「塚本さんとは今日出会ったばっかりであれなんだけど、今の印象を四字熟語で表してみようと思うよ。塚本さんを見た時に
巧望君は穏やかに語り出した。
やっぱり巧望君は話すのが上手。
優しい語り口調で、聞き手に物事を想像させるのが上手いんだ。
朗読とかしてほしいな……その穏やかで優しい声で寝ちゃいそうだけど。
「君を一目見た時に、目は澄んでいて悪意や邪心が全く見られなかったんだ。今の君への印象は光風霽月という言葉がぴったりだけど、これから先関わってくうちにまた違う印象を君に抱くかもしれない。俺はそれを楽しみにしてるんだ。だってそれは君と仲良くなった証拠だからね。これからどうぞよろしく!」
そう言って巧望君がきれいに場を締めた瞬間、
「ただいま戻りました。遅くなっちゃった……ごめんねー。」
ガラッと教室のドアが開いて、美穂先生が肩で息をしながら入って来る。
手には何やら書類の束を抱えていた。
「お帰りなさい。ちょうど今、それぞれの自己PRが終わったところですよ。」
巧望君が笑みを浮かべて美穂先生を迎える。
「あ、そうですか。みなさんどうでしたか?自己PRは上手に出来ましたか?」
美穂先生は教卓にその書類の束を置きながら、みんなを見回して言った。
「上手く出来たかは分かんねぇけど、楽しかったぜ!」
秋君が美穂先生の方を振り返って、右手でグッドサインを作って見せた。
美穂先生が笑みを浮かべて頷くと、
「せんせ、あんな、委員長がみんなに合う四字熟語を教えてくれたんやで!」
依那ちゃんが声を弾ませて言う。
美穂先生が目を丸くして、依那ちゃんに聞き返す。
「四字熟語……ですか。洌崎さんに合う四字熟語は何でしたか?」
依那ちゃんの代わりに巧望君が答える。
「彼女には秀外恵中という言葉を選びました。風姿が立派で美しく、内に高い知性を備えているという意味の言葉です。」
その言葉を受けて、美穂先生は納得したように頷いた。
「確かに、その言葉は洌崎さんにぴったりですね。」
すると信武君がバッと手を上げて、
「俺は鏡花水月だった〜。きれいな言葉でしょ〜。」
聞いて聞いてとばかりに美穂先生を見た。
「鏡花水月……墨田君が宗方君に似合う言葉として上げた意味が何となく分かる気がしますね。」
美穂先生は少し考え込んだ後、納得したように頷く。
「俺は徳高望重だって。何か漢字だけ見ると縁起良さそうだろ!」
「俺は悠々自適だってさ。よく分かんないけど、巧望がそう言うならって感じ。」
秋君と律君が口々にそう言ったので、
「私は光風霽月だそうです。漢詩などは詳しくないのですが、言葉の響きや使われている漢字からして素敵な言葉ですよね!」
私もその流れに便乗して発言した。
美穂先生は秋君と律君の言葉に、考え込むことなく頷いていた。
美穂先生は四字熟語の意味を説明されていないけどその意味を知っているようで、その四字熟語を選んだ巧望君の考えに共感していた。
そして私の発言を受け、安堵の笑みを浮かべる。
「ええ、いい言葉ですね。塚本さんにぴったりだと思います。この時間を通して、このクラスにだいぶ馴染んだみたいだね。この時間をグループワークにして良かったです。」
美穂先生がそう言って口を閉じた瞬間、タイミングよく1時限目の終わりを告げるチャイムが鳴る。
「あら……もう時間。はい、というわけで1時限目が終わりのようなので挨拶しましょう。墨田君、号令を。」
美穂先生は時計にチラリと目をやった後、視線を目の前の席の墨田君に向けた。
墨田君は即座に頷いて、
「起立!」
と言ってみんなを立たせる。
みんなが立ち上がったのを確認してから、
「礼!ありがとうございました。」
みんなに礼をするように促した。
「ありがとうございました。」
みんながそれに続いて、礼をしながらそう言う。
挨拶が終わると、2時限目との間に10分程の短い休憩が挟まれた。
その休憩の始めの頃、みんなが机を元の位置に戻している時に、
「あ、次の時間は塚本さん以外は数学ね。担当は野中先生です。テキスト、今日提出の宿題はもちろん、ノートや筆記用具などもちゃんとあるか確認してね?万が一忘れ物があった場合は、この休憩時間内に私に教えてください!」
美穂先生がみんなを見回して言った。
巧望君がいち早く、机の上にテキストや問題の書かれたプリントにノートと筆記用具を揃える。
何なら、ペンケースから鉛筆や消しゴムに加えて赤と青のボールペンまで出していた。
その素早さに私が感動してるとそんな巧望君の隣で、
「あ、俺、今日数学だけテキスト忘れたかも……。やべっ。」
秋君が青ざめた顔をしていた。
美穂先生がその言葉に素早く反応して、
「あら!珍しいね。早川君が数学のテキスト忘れるなんて。」
秋君の方を見る。
美穂先生の視線を受けながら秋君は苦笑いを浮かべた。
「昨日の夜、学校の宿題ついでにアカデミーのテキスト開いたら、テキストの問題解くの楽しくなっちって……。」
秋君の言葉に美穂先生は、
「ああ……そうなんだね。おうちでも数学勉強してたんだ、頑張ってるね。そんな頑張る人用に実は先生、各教科の予備のテキスト数冊持ってます!」
秋君の方に歩いて行って、その肩をポンッと叩いた。
はいどうぞと差し出された、数学と書かれたテキストを、
「おー、サンキュー、先生!」
秋君は嬉しそうな、どこか安堵したような表情で受け取る。
その様子を見て依那ちゃんが、
「良かったなぁ、早川。次の時間はあの、野中先生の担当やさかい。内心、めっちゃ焦っとったんちゃいますの?」
ニマニマと笑って秋君を見た。
「うるっせぇ、そんなんじゃないわい!」
秋君は顔を赤くして振り返ると、斜め後ろにいる依那ちゃんを睨んだ。
その横ですっと信武君が手を上げる。
「先生〜俺もテキスト忘れた。」
美穂先生は一瞬、少し驚いた表情になる。
「あれ、宗方君も?」
だけどすぐに笑みを浮かべて、教卓の方へ向かう。
そして、書類の束からテキストを引っ張り出すと、
「はい、どうぞ。後で忘れずに先生に返してね?」
教卓の方へ受け取りに来ていた信武君に渡した。
信武君が席に戻るのを見送って、美穂先生はみんなの机を見回す。
巧望君の机はもちろん、依那ちゃんや律君、テキストを忘れた秋君や信武君の机もテキストが置かれて次の時間の準備が整っていた。
整っていないのは私の席だけ。
美穂先生、私以外は数字って言ったよね。
どうしてだろ?私は何をするのかな。
ずっとそのことを疑問に思っていた私は、
「美穂先生、私は次の時間何をするんですか?」
パッと手を上げて美穂先生を見た。
美穂先生は申し訳なさそうな表情を浮かべて言った。
「ごめんね、塚本さん。あなたの入塾試験は免除になったはずだったんだけど……あなたの成績が分からないと授業しにくいから実力テストを受けさせようって話になったの。だから、今日と明日の授業は全て実力テストです。」
困ったように笑う美穂先生の言葉に、私はちょっとショックを受けた。
ガーン……結局テストなのね。
私、テストとか嫌いなんだ。
なんか緊張して、思うように実力を発揮出来ないから。
多分、あの空気感が嫌なのかも……。
「分かりました。実力を出し切れるよう頑張ります!」
私は気にしない素振りを見せて頷いた。
嫌いだけどやるしかない。
やらないと授業を受けさせてもらえないだろうから。
授業を受けさせてもらえないのはまだ良いとして、名駿アカデミーを辞めさせられたら困るもん。
私が意気込んでいると、みんなが美穂先生の言葉に驚いた表情を浮かべる。
「入塾試験、あれって義務じゃねぇの!?」
「うん、確かそのはずだと俺も記憶している。」
「そんな試験をスルーしてるっちゅうことは、珠明ちゃんって異例中の異例ってことやない!?」
「ス〜ちゃん、実はすごい人?」
「多分ね。」
一体何者!?といった表情で私を見るみんなに、私は苦笑いを浮かべる。
なーんか入塾早々、思った以上に目立っちゃったな……。
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