第4話 ハリス
耳元で電子音がする。
その音に気付いてはいるけど、瞼は重くとても開きそうにない。
でも、眠気は少し覚めていた。
頭の動きはとても鈍い……寝起きだからだ。
そして、止まず鳴り続けるその音は、今まで何度も聞いてきた音だった。
っ、電話だ!
音の正体に気付き、思わずガバッと起き上がった。
見慣れない部屋に思わず絶句する。
でもそんなの、気にしてる場合じゃなかった。
動きの鈍い頭を振って、枕元にあるスマートフォンに急いで手を伸ばした。
画面を見ると、Daddyと書かれた着信画面が浮かんでいる。
「あーハリス?どうも君の電話、間違い電話みたいだよ。かける相手間違えないで。」
急いで電話に出ると、相手が話す隙を与えないように早口で話す。
言いたいことが言えたので、さっさと電話を切った。
こんな時間に電話をかけてくるなんて、きっと間違い電話でしょ、前にもあったし。
それに、もう少し寝たい。
ハリスの電話に付き合ってる暇なんかないよ。
昨日はアメリカから来日したばかりで、環境が変わってのもあってか、なかなか寝付けなかった。
見慣れない部屋だし、ベッド以外で寝るのも久々で、なかなか寝付きが悪かったんだよね……。
ふわぁと大きなあくびをしながら、布団に体を預けようとした瞬間、再びスマートフォンが震える。
画面を見て、思わず大きなため息が出た。
さっきと同じ着信画面だった。
仕方なく、受話器のアイコンをタップして耳に当てる。
「おはよう!スア。いい朝だね、調子はどうだい?」
流暢な英語が耳をくすぐった。
いつも彼が話している声のトーンより、1トーン2トーン明るい感じに、眠たいからか少しイラッとする。
「おはようじゃないよ、ハリス。こっちは少し時差ボケ気味だって言うのに。もう少し寝かせてよ、起こさないで。」
暗い声で返すと、
「そんな朝早い時間じゃないだろ?上司直々のモーニングコールなんだから、もっと喜んでほしいね。」
おどけた声が返ってきた。
そんな朝早い時間じゃないと言うハリスの言葉が引っかかり、スマートフォンが表示する時間を見ると、
「えっ?もう9時!?いっけない!寝過ぎだ……。」
表示されている数字を思わず二度見してしまった。
「さてと、君の目も覚めたことだし。朝の会議といきますか?」
そんな私の様子に、電話の向こうでハリスが笑う。
そして、
「グレイソンも参加させたい。呼んできてくれ。」
急に真面目なトーンになってハリスは言った。
私は頷いて、準備が出来次第また電話をかける旨を伝えて電話を切った。
ふぅ、と息を吐く。
そしてある事に気付いた。
ハリスについて、詳しい話をするのは今がチャンスなんじゃないかって。
ということで、ハリスについて詳しく話そうと思うよ。
ハリスは私にとって、プロローグで言ったように組織Terminusの上司。
なんだけど、daddyでもあるしbrotherでもあるし、best friendでもある。
daddyはパパ、brotherは兄弟……どちらかと言うとお兄ちゃんかな、best friendは親友を意味してる。
だから、ハリスはそのうちのどの関係にもなってくれる、私にとって唯一無二の存在なんだ。
だけど、組織にとっても唯一無二の存在。
唯一無二どころか、いないと組織が立たない、組織の総統、大黒柱。
組織の総指揮を彼が全て取っていて、何千何万単位の部下をまとめているの。
組織を作ったのは彼より何代か前の総統らしいけど、組織を大きくしたのは彼。
やり手のお兄様っていうようなイメージをしてくれたらOK!
それと、彼は物知りで何でも知ってる。
本の向こうの君たちのことも……もしかしたら知ってるかもね。
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