第2話

 コスモが教室に入ると、もうすでに何人かのクラスメイトがダンボールを切り始めていた。


「あ、おはよう秋桜(こすもす)。さっきの校長からのメール見た?」

 クラスの中で、コスモと1番仲の良い愛美(マナミ)が、ダンボールに切り込みを入れながら声をかけてきた。


「おはよう愛美。メールでしょ。見た見た。やばすぎ。深夜に、学校のプールに侵入って。いつの時代だよって感じ。」

 コスモは、学校ではギャルを演じているので、今日も明るく高い声で答えた。


「それな。てか、鍵かけてなかったのかよ。せんせーたちも今頃大変なんじゃない。」


「犯人見つかったら、怒られるだけじゃ済まされないだろうね。にしてもすごいわ。コスモは、深夜に学校に侵入なんて、勇気ないから絶対無理。」 


「確かに、秋桜には無理だろうね。」

愛美は少し笑いながら言う。

「せんせーたちの前じゃ優等生ぶっちゃってるんだから。うちなら、友達と一緒にだったらできるかもだけど。」


 コスモにとって、愛美と一緒にいるのは居心地が良かった。でも、最近愛美には彼氏ができて、コスモと一緒にいる時間が減ってしまったのだ。少し悲しいけれど、愛美の幸せそうな話を聞くことは別に嫌いでは無い。

 愛美の彼氏は、遥(はるか)と言った。女の子みたいな名前だが、背が高く爽やかなサッカー少年だ。学年は私たちの1つ上で、高校2年生。サッと廊下ですれ違ったことがある程度だが、なかなかのイケメンだった。愛美はサッカー部のマネージャーをしているので、部活で知り合ったらしい。これぞ正に青春と言うのだろう。


 愛美のノロケ話を聞きながら作業をしていたら、いつの間にかお昼ご飯の時間になっていた。


「秋桜はこの後部活だっけ?」


「うん。コンクール近いから、12時から17時までぶっ通し。」

コスモは吹奏楽部でパーカッション、いわゆる打楽器のパートだ。


「そっか。コンクールまで後もう少しだよね。がんばー。」


「さんきゅ。愛美はこの後部活?」


「うちは遙とデート。とりまプリ撮って映画行ってくる。ってことでまたねー。」


「またねー。楽しめよー。」


コスモはお弁当を持って、第一音楽室へと向かった。

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