青いプールと春の星
おらしおん
第1話
[世の中が不公平なんて当たり前だよ。みんなに平等に不平等。フェアなんて誰にとっても存在しない。—『ツナグ』水城サヲリ—]
外に出た瞬間に、額に汗が滴り落ちた。今朝もせっかく時間をかけて整えたのに、前髪がぺちゃんこの台無しに。ワイシャツも汗でグッショリ。
嗚呼それにしても本当に暑い。そろそろ海も蒸発を始めて、新しい島が浮かんでくるんじゃないだろうか。最近は、地球温暖化現象ではなく、地球沸騰化現象と言われているらしいが納得だ。いやもう、地球灼熱化現象とかでもいいと思う。
そんなふうに、地球に毒づきつつ、今日も私は高校へと足を動かす。右手に日傘とハンディーファンを、左手ではスマホを待ちながら、耳にうどんをくっつけて。
ちなみに今日は7月最終日だ。ではなんで登校しているのか、なんて愚問を言ってくれるな。念の為言っておくが、補習ではない。どちらかといえば、私は賢いという分類に入ると思う。いや、関係のない話をした。なぜ私が今日も登校しているか、だったな。文化祭が近いからだよ。連日準備しないと間に合わないらしい。
全く高校生というのは忙しいものだ。時間がある学生のうちに、なんてほざいている大人が多すぎるんだよな。きみたちは高校生のときに、部活動以外に何をしていたと言うのだ。もう本当に困った困った。
コスモは一人になると、急に気が大きくなる節がある。自覚はあるのだろうが、色々なことに文句を言いながら登校するのはやめられないらしい。まあ、彼女なりのストレス発散方法だということだ。
学校とはまるで違うこの姿を、誰かに見られているとも知らないで。
コスモの左手から、バイブレーションが振動した。高校から、全校生徒に向けてのメールだった。
【重要 全校生徒、全教員へ向けて】
昨日セコムから、7月27日の午前2時30分〜3時30分にかけて、本校の屋上プールに何者かが侵入したとの情報が入りました。防犯カメラを確認したところ、本校の制服を着た男女5人組だったということです。何か知っていることがありましたら、生徒指導または校長、教頭まで情報提供をお願いします。校長
バカらしい。どうせ誰がやったかなんてすぐばれるのに。きっと、しこたま怒られるんだよ。ざまぁみやがれ。
コスモは悪態をつきながらも、ほんの少しだけその5人組を羨ましいと思った。誰もが憧れて、でも誰もやったことのないことに心惹かれていたのだ。
まぁ私の知ったことじゃない。そんな風に思うのに、なぜかコスモの胸のざわめきは消えなかった。
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