第四章 日陰

「お前なんかいなければいいんだよ」と友達に言われる夢をみて目を覚ました。呼吸が浅い。これは俺のトラウマだ。なぜこんなことを言われたのかというとそれは、去年の夏、俺が中学三年生の夏にさかのぼる。

俺は家が貧しくなかなか人と仲良く出かける機会がなかった。だがそんな俺と仲良くしてくれる友達が四人いた。そいつらは本当にいい奴らだった。俺に対して何の偏見も持たず接してくれた。そいつら仲良くしているある日、その中の一人の女の子から二人で出かけないかと誘われた。なぜかと聞いた。そしたら仲の良い四人のうちの一人と付き合っているらしく、そいつへのプレゼント選びを手伝ってほしいらしい。二人とは、一緒にいて楽しいし、恩返しをしたいとも思っていたので、快諾した。週末女の子と買い物に行き順調にプレゼントを買った。

次の日、事件が起きた。学校に行くと、四人が集まり喧嘩をしていた。何が起きたのか分からないが、止めに入った。そしたら、「お前もだよ」と怒られた。そして、「お前なんかいなければいいんだよ」と言われた。その後の記憶はないが、あんだけ騒いでいたので先生なりが来て止めたんだと思う。それから僕たちの仲は険悪になり、その後一回もしゃべらなかった。

後から先生から聞いた話によると、「浮気だ」「私が好きなのを知ってて一緒にでかけたの」「お前ら隠れて付き合っていたの」などと喧嘩していたそうだ。その事件が起こった数日後、母親が倒れた。今まで女手一つで育ててくれた親が倒れたので、俺は友達どころではなくなった。母親は命には別条はないが、今まで通りに働けなくなってしまった。その後、無事中学を卒業し、高校に行くことになった。高校に行きすぐにお金が足りなくなるとと思い、バイトを始めた。しかしできるだけシフトを入れても、お金が足りなかった。お金が足りないと悩んでいると、バイト先の先輩が、高収入のバイトがあると教えてくれた。内容を聞くとそれは、『学校で精神的に弱っている人の噂を探して、その人の下駄箱に手紙を入れる』というものだった。怪しいと思ったが、これ以上母親に無理をさせることはできないと思い、その仕事を受けた。

その後、定期的に依頼主に会い、手紙を受け取り、下駄箱に入れる生活を続けていた。そんなある日、手紙を入れるところを見られ、顔を見られた。やばいと思い、その日は、授業を受けずに家に帰った。その後、依頼主に会い、起きたことを伝えると、「そうか、お前は用済みだ。このことを他の人に言ったら、お前がしたことを警察に言うぞ」と言われた。その瞬間自分がやってきたことの罪の重さを認識した。親に迷惑をかけることはしたくないと思い、家に書置きを残し、家出することにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る