第二章 曙光

私は、島津 琴音(しまづ ことね)二十歳。私は、ある町で、夜の仕事をしている。順風満帆とまでは、いかないけどそれなりに楽しい人生を送っていた。あの事件が起きるまでは。

「琴ちゃん、明日一緒にでかけない?」と後ろから声がした。振り返り声の主を見ると、そこには、佐土原 和奏(さどわら わかな)がいた。和奏は私の大親友で、仕事仲間兼ルームメイトだ。行きたいなと思いつつ大事な用事があるのを思い出し、「ごめん行けない」とかえした。そう返した瞬間、和奏がしょぼくれだした。そんな和奏に私は、こう声をかけた「今度埋め合わせするからゆるして」。そう言った瞬間、和奏は子供のように笑顔になった。

次の日、私は別の友達と買い物に来ていた。それは、来月に迫った、和奏の誕生日会に向けての買い出しだ。

無事買い物が終わり家に帰るとそこにはやさぐれた和奏がいた。「どうしたの」と聞いたが何も言わなかった。何故か甘い匂いがしたのでとりあえず部屋の換気をし、和奏に水を渡した。しばらくしたら、落ち着いたみたいで「何でもない」と言ってきた。人に言いたくないこともあると思いそれ以上踏み込まなかった。

次の日からしばらくは、表面上は普段通り過ごしていた。しかし、お互いにいそがしくなり和奏と共に過ごす時間は、減っていた。

和奏の誕生日前日、和奏と喋っているとちょっとしたことから口論になってしまった。私が反論を言った瞬間次のように言い返された「琴ちゃんは、かわいくて、背も高くて、コミュケーションとるのも上手くて、私のことわかるわけがないよ」「最近私にかまってくれないし。私なんかいなくなったっていいんだ。」そう言い残し家から出て行ってしまった。

私はムカついて、追いかける気がせず、その日は寝てしまった


「おい、起きろ琴音」という声で起きた。目を開けるとそこにいたのは、店長だった。店長は物凄く焦っていた。どうしたのか聞こうとしたら、

「後で言う早く着替えてついてこい」と言われた。店長の言われるがままにして外に出るとタクシーが待っていた。店長とタクシーに乗ると店長は真剣な顔で告げてきた。

「和奏が車に引かれた。そして、違法薬物をやっていたそうだ。命に別条はないが、意識が戻っていないそうだ」

それを聞いた瞬間、体中の血の気が引いていくのが分かった。

そこからの記憶はあまりない。記憶があるのは、ベッドの上で静かに寝ている和奏の姿だけだ。

その日から毎日お見舞いにいった。ある日、店長と一緒にお見舞いに行くと、主治医から意識が戻りつつあることと、昨日の夜「琴ちゃん、ひとりにしないで」とつぶやいていたことを伝えられた。どうすれば良いのか分からず、長い長い夜を過ごした。

次の日、和奏の意識が戻ったという連絡が病院から来た。店長と一緒に急いで病室に向かうと、生気が抜けた和奏がいた。意識が戻ったことが嬉しく涙が止まらなかった。こないだの事を謝りたいと思い、「ごめんなさい」と言った。和奏がどんな顔をしているのか気になり、和奏をみると、遠くを見てほのかに笑っていた。後から来た主治医によると、薬をやっていた後遺症で幻覚を見ているそうだ。しかし私は、すこし許してくれた気がした。私は、和奏みたいな子を減らすと心に誓った。そしてそのために頑張ると。

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