第4話 愛を知った少女と、人形になった女性
⚠︎閲覧注意
私達は僅かな食糧と、ワインを持ち元の場所に戻ってきた。ミレイさんは負傷した左手を抑え、座り込んでいた。
「大丈夫ですか?その傷」
「いやいや、大した事ないよ。こんなの、紙でも巻いておけば治るよ。」
どう見ても無事には見えなかった。
「すみません、私のせいで......」
「いいえ、貴方のせいじゃないわ。私の不注意でもあるから。」
「あれはなんだったの?」
「あれは戦争兵器の残留物。物資型爆弾兵器っていうの。物資に見せかけて開けた途端に爆殺するように作られた悪趣味なものよ。」
「戦争.......なんでこの世界はこうなってしまったの?」
「あっ、思い出した。世界大戦のせいだよ。」
「せかいたいせん?」
「私たちの街や口は戦争によって朽ち果て、最終的にはこうなってしまった。私たちは本来平和な世界に居たんだ。そうだ......あぁ」
ミレイさんは泣き出してしまった。私はミレイさんの近くに寄り、何度も何度も慰めた。何度も何度も何度も。
私は罪悪感に苛まれたが、何処か心の奥底に温かみを感じていた。支配欲、独占欲、それに似た恐ろしい感情を抱き始めていた。
そして、私も思い出していた。忌々しい過去の記憶を。そうだ、私には家族がいた。平和に暮らしていて楽しくて温かかった。でも、戦争だ。それが全て壊してしまった。私の日常、家族、そして、記憶までも。私は深く考えないようにしていた。
翌日ミレイさんは左手を負傷した影響で少ししんどそうにしていた。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、少し体調がすぐれないだけよ」
少しでは無い。それは私がみてもわかる事だった。優しい嘘。ミレイさんはどこまでも私を気遣っていたのだ。
「ペーパー巻きましょうか?」
「えぇ、お願いするわ。早く治して、食料を取りに行かなくちゃね。」
私は跡地にあったトイレットペーパーをミレイさんの腕に巻き、傷口を外気に触れないようにしていた。
そこから2日程経った。私はミレイさんの傷口を舐め、癒そうとした。或いは同化したいと思ったからだ。ミレイさんは「ちょっと、何してるの?」と最初は困惑気味であった。しかし、慣れていく事につれ、段々と適応していった。ミレイさんは泣き出す事は無かった。
そして、菌が入り込み全身に回ったのかしてミレイさんは体を満足に動かす事が出来なかった。わたしは乾パンを水でふやかしたものを食べさせて、定期的に体を洗い、ミレイさんの身の回りの世話に従事した。
4日目ミレイさんはとうとう、あまり喋らなくなってしまった。何をしても無気力のようで鬱々とした様子であった。そして、微かに唇を震わせて一言喋った。
「ワインを飲ませて」
私は置いておいたワインをミレイさんの口元にへと持っていき、ゆっくりと飲ました。ミレイさんの目は少し微笑み、私もミレイさんに微笑み返した。あぁ、ミレイさん。貴方は何故そんなにも愛らしく、美しいのか。私はすっかり虜になってしまっていた。弾ける思いとは裏腹にミレイさんの容体は良くはならなかった。彼女はまるで人形のように美しくも動けないものなっていた。
私はもう我慢できなかった。
「ミレイさん。コッチを向いて」
わたしは強引にミレイさんの顔を動かし、そして唇を重ねた。舌と舌を絡め合いながら確かにわたしは温かみと愛を感じていた。
「リボンちゃん.......どう..したの?」
「もう、我慢できません。私の居場所、温かみだなんてとっくに見つけてたの。」
そこからはあまり覚えていない。
7日が経った頃。今日もいつも通りに世話をしていた、ミレイさんはすっかり衰弱してしまっていた。あんなにポジティブだったのに、最近は弱み辛みを言うようになってしまっていた。その言葉の重みは石のようで、わたしはそこも愛おしい。
「もうダメだわ。わたしは助からない」
諦めるようにそう言う。しかし、私はそんなことは思っていなかった。
「いいえ、貴方を死なせるわけにはいかない。だって貴方がわたしの温かみだもの。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます