第3話 無知の罪
朝目覚め、辺りはすっかり明るくなっていた。久しぶりにまともな場所で寝た為良く寝れた。ミレイさんは既に起きているようで、別の服に着替えていた。そして、私が起きた事に気づき、ゆっくりと近づき私の頭を撫でてくれる。
「おはよう!リボンちゃん体調はどう?」
「はい、良くなりました」
「そう、良かったわ。昨日は不安であんまり眠気かったのよ。ほら、朝ご飯用意したから食べましょう!」
「はい、ありがとうございます」
朝ご飯代わりに乾パンと豆の缶詰だ。豆の缶詰を食べるのは初めてであったが意外と味がついていて美味しかった。トマトの味がする。そして、朝食を済ませた。豆が食べてるなんてかなりの贅沢だ。ミレイさんに感謝だ。
「今日は食料が少なくなってきたから探しに行くんだけど、よかったらリボンちゃんも来る?」
「はい、私でよければ同行します」
ミレイさんと食料を探す為に街の中心地に来たのだが、やはり人の痕跡は見つからなかった。無人だ。
しかし、この街は他の街に比べて建物の老朽化はマシな方であろう。建物としての形が鮮明に残っている。
「食料って、普段どうやって見つけてるの?」
「そうね、食べられる食料は金庫のような箱に入っている事が多いね。落ちてるには落ちてるんだけど、大半は腐敗しているか、灰になってるから食べられないのよね。この前、チーズ見つけたと思ったらただ牛乳が蝋燭みたいに固まっただけの最悪な物だったのよ。逆にミレイちゃんはどうやって食料を取ってたの?」
「うーん。私は........」
言えない。私は食料を摂る手段が無かった。最初こそは見つかるのだが、やはり無い時期も出てくるだろう。
でも、食べ物を食べていないと人間も生物も植物も生きられない。それは皆んな平等なはず。限りない極限状態、ならば人間はなんでもできる。本能のままに。どんな禁句だって破られる。
私は・・・・・・生きる為に、イキモノの屍を食べて、生きた。
「ええっ、前いた街でたくさん食料があったの。でも殆どが乾パンだったの」
「......ふーん。リボンちゃんって凄いよね。今までひとりで生き残っていたの?」
「うん」
「あなたの歳にしてはすごく頑張ってるよ!!私なんて、あなたぐらいの歳に何をしていたかだなんて何も覚えてないもの」
「そうですか......」
私は返す言葉が見つからなかった。それは罪悪感にも似た物。
そうして、私たちは食料品店の跡地を見つけた。
「食料を探すならやっぱりここね!」
中に入ってみると乱雑した様子で食べ物自体はあるが食べ物が全然無かった。足をすすめるたびにガラスの音が廃墟内に鳴り響く。すると、ミレイさんは興奮した様子で何かを言っていた。
「見てみて!!お酒よー。ワインね!!」
するとミレイさんはワインのボトルを開け、ゴクゴク飲み始めた。その様子はかなり幸せそうだ。
「リボンちゃんも飲む?」
「いえ、わたしは」
そう断ったあと、レジの方に目を向けるとふと鉄の箱を見つけた。金庫とはまた違うただの金属の箱だ。中に保存された食料でも入っているのかと思い、私は箱を開けた。
すると、中には食料などではなくよくわからない配線みたいなものがたくさん見えた。
「危ない!!」
ミレイさんがそう叫ぶと咄嗟に私を抱いたまま、地面に伏せた。すると、すぐに爆発音が聞こえてきて、爆風を感じた。私は意味がわからなかった。
爆発が収まり煙が充満する中でミレイさんは安否の確認をしていた。
「大丈夫?怪我はない?」
「うん、ない。あれはなんの爆発?」
「あれは、爆弾。戦争中に使われた物なの。それがまだ残っていなかったのね。」
知らなかった。無知は罪だというが、その通りであろう。わたしはそのせいでミレイさんを巻き込んでしまったのだから。
「あの、ごめんなさい。私のせいで」
「いやいや、気にするとは無いよ。ほら、私たち無傷だしね。」
笑顔でミレイさんはそう言っていたが、私は見えてしまった。ミレイさんの背中は爛れていて、さらに左手が少し抉れている事に。
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