第3話 爆弾魔のプライド
現場ビルから離れる事、数百メートル……捜査本部の一室では、本部長の長嶋がかなり苛ついた表情で煙草を吹かしていた。
「まったく、ふざけた奴だ! 真田の奴、失敗でもしやがったらクビにしてやる!」
クビというより、爆弾が爆発すればその時には真田も山本も既に死んでいると思うのだが……
爆発まで、あと六分となったこの時……緊迫するこの捜査本部に、ある一本の電話がかかってきた。
「はい、こちら『丸の内ビル爆破事件対策捜査本部』」
『爆発まで、あと六分というところかな……クックックッ♪ どうだね、起爆装置は解除出来たかね?』
捜査員の他には犯人にしか知り得る事の無い爆発時間を、この電話の男は知っていた。
「お、お前! もしやあの爆弾を仕掛けた男かっ!」
『そうだ、俺様があの芸術的爆弾を作り出し、仕掛けた張本人だよ。……どうやら、相当苦労しているようだね?
犯人の、少々高飛車な態度が鼻につく。長嶋は、尚更に苛ついた表情で犯人に対し答えた。
「お陰様で苦労しているよ!アンタがあんなシロウトみたいな爆弾作るもんだから、ウチの処理係がプライドを傷つけられたと起爆装置の解除を拒否している」
『ハッハッハ 面白い冗談だな。あの起爆装置のどこがシロウトなんだね?』
「導火線。なんでもそれを切れば、爆発しないらしいじゃないか」
『え………?』
犯人は、その事実にたった今気が付いたらしい。電話口の向こう側で小さく
「おい、犯人……何やってんだ? もしも~し?」
少しの間が空いて、再び犯人が電話に出た。
『それで……そこまで解っていて、何故起爆装置を解除しない!』
当然の疑問だ。長嶋本部長は犯人にこれまでのいきさつを交えて、まるで飲み屋のオヤジに客がクダを巻くように話して聞かせた。
「………ってな訳でよ…………まったく、責任取らされるのはこっちなんだからよぉ~あのバカは、そういうところが分かっちゃいねぇんだよぉ~!」
すると……本部長からその話を聞かされた犯人は、思わぬ言葉を口にした。
『青のコードを切ってくれ!』
「何?」
『青のコードを切れば起爆装置は解除出来ると言ったんだ!』
本部長は驚いた。
「なんでお前がそれを教えるんだ? まさか罠じゃないだろうな」
『あの爆弾は『失敗作』だ!
あんなものを爆発させたら、爆弾魔としての俺様のプライドに傷がつく!』
また、プライドかよ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます