第30話「プライベートアイの三文事情」

「白瀬よ」

「なんですか、先生」

「曰く私は、神であった」

「はい、御起床ですかね、体だけ」

「そうだな、しかして巧妙だとは思はないか」

「何がですか?」

「人は寝てるとき、自覚がない、なら病み上がりとは、言わば自意識を取り戻している瞬間だよな」

「そうですね、確かに寝てる間は、外部干渉以外で目覚めることは困難でしょうね」

「と、なればだ、睡魔こそ悪魔に近いな」

「ですね、 寝るとは主に体からの要求であり、人間の意識とは別だと思います」

「なるほど、つまり、睡眠不足とは自意識の過敏化であり、泥濘は疲労困憊を意味しているんだね」

「そうでしょうね、しかし先生、あなたは自意識を芽生えさせるのに、とくと時間がかからないようですね」

「脳にも成長限界がある、それに達したのかも知れんな」

「また厳かなことを言いますね、天井知らずと言ったのに、まるで気力でも無くしたのですか?」

「邪険なことを言うな、あくまでこれも体側の主張であり、脳はそれに比例して、育っているんだ、故に、良いものを食えば良いのではないか」

「焼肉にでも行きますか?」

「待て待て、肉が確かにタンパク質であり、肉塊である脳が最も欲するのは自負している、しかし高いだろ、路銀もそこまでないぞ」

「お金に怯えて、脳を台無しにするのですか、お金なんて、どうとでもなります、だったら良いもの食べて、盛大に働きましょう」

「全く、相変わらずだね、社会に忠実というか、貪欲だよな君は」

「そうでしょうね、資金繰りなど、我ら厭世観にとっては余裕です」

「全く、どこからそんな言葉を仕入れた、あくまで大道を行かないその俯瞰ぷりに、畏怖しか波立たんね」

「またまた、そのような後生大事に牽制しても、私は、言葉で片付けて直進しますよ?」

「全く、やれやれだ、これだから世界に脇道ができるんだ、前を向いて、どこへいくつもりだ?」

「そんなの未来です、生きてこその命ですから、存分に励みませんか」

「ではまず焼肉に行って英気を養おう、」

「わかりました、言い訳は言語道断ですからね」

「その口ぶりだと、外出するってことかね」

「はい、でも私も居ますから」

「全く、引率される身にもなってくれ」

「いえ、先生を引率してるのは私ですからね、」

「そうかい、ならついていくから手を繋いでくれ」

「はい?」

「ほれみたことか、君には引率が務まらん、」

「いえ、いや、良いですけど、手とか繋ぎますか?」

「な、いや、んな冗談だって、言ったろ」

「先生って、もしや、チャイルドプレイが好きなんですか」

「お前はどこから、そんな忍びない言葉を仕入れたんだよ」

「そんなの先生の書斎からです」

「んは???な・・・」

「あー先生もしかして、書斎の隅にある、シークレットカバーの本棚知らないとでも思ってました」

「おーおーおーおー。ご挨拶だね白瀬よ、君のように、家をくまなく見る、ご無体な紳士は知らんな」

「ま、冗談です、でも本当に。持ってませんよね?、愛のシラバスとか?」

「やめいやめい、男の事情に女は不要だ」

「はーい、せんせーかわいいー」

「そうか、そのように、抜け目ない、さとしい、やつに行っておくよ、白瀬、お前は、感極まる極悪だ」

「はーい、せんせー、全く、男ってプライドがそんなに大事なんですね」

「なな、全く食えない女は嫌いだ、少しは物腰を引いて考えろ、これでは小姑だ」

「先生って、やっぱり愛がいしいですね、女はやっぱり、男を見てるんですよ」

「だとすれば、君はいづれ、私を知るのだろうね、」

「全く、ど直球というか、なんというか」

「そうか、はぐらかすといい、そのような、律儀な威信を見せても、品位は知れてるがな」

「先生って、お腹すいてます?」

「あーもー腹が立つほどに、ご立腹だよ」

「あーこれじゃ犬も食えやしない」

「ほー白瀬よ、君は、私を犬の餌にするつもりか、それとも言い回すことで、疲労を誘ってるのか?相変わらず女々しい、愚形だな」

「はーい寝ますかー?」

「何、君如きに、一汗もかかんわ、そんなありていの誘い文句に、屈しるとでも?相変わらず、前が見えても、顔を見れてない、ヘタレだな」

「そうですか、先生こそ、そんなこと言って、実は脂質が足りてないだけですよね、ちゃんとカロリー摂取しないと、泥濘してしまいますよ」

「そうか、なら、もう食うから来い」

「はーい着いて行きますね、」

「あー全く、これだから君は常人ならないんだ、いつだって事の三文を、多岐にわたっていうからね、これでは商売あがったりだ」

「そうですか、では出発でーす」

「ああ、」

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