第21話「ここに居ていいんですよ」
「白瀬、寒いぞ」
「ため息をつくとあったかいですよ」
「なんだその豆知識」
「いえ、素養ですよ、常識的な、」
「いいから、服をかせ、」
「私だって寒いんです」
「なら、くるまるか」
「わかりました」
「って、できるか!!!!」
「先生、相変わらずですね」
「知らん、このけったいな女め」
「そんなこと言っていいんですか、私しかいませんよ~?」
「だとしたら、尚更、私を大事にしろ」
「わかりました」
「わかればいいんだ、わかればな」
「ってことで、このマフラーはわたしのものでーす」
「聞いてたか?いま私は、大事にしろと言ったんだ」
「大事にしてますよ、だから追っかけて手に入れてください」
「こらまてー!!!」
「追いついたらわたしますよ~」
「まてまて、って、そんなに足が速いんだな、お前は・・・」
「少しはあたたまりました」
「そうだな、カンカンにあたたまったよ」
「それは良かった」
「いちよ言っておこう白瀬、これは怒っているのカンカンって意味だ」
「なるほど、では、暖かいと?」
「そうだな、実質、暖かいともいえるが、それ以上に、嬉しくないこともある」
「なるほど、先生って、相変わらずですねー」
「あー、君はいつだってそうやって、余裕ぶっているよな、化けの皮をはいでやるぞ」
「これがありのままの私ですよ~」
「そうかい、ならば、もうマフラーをくれ、もう化けの皮でふさふさらしいからな」
「そうですね、月が出ると、もっと化けますよ?」
「そうかい、だった月の下では、マフラーを絶対にくれよな」
「わかりました」
「なんだ、認めたな、このオオカミめ」
「はーい」
「相変わらずのご身分だこと」
「それでこそ先生にふさわしいと思いません?」
「巧みに乗せて、何を言ってる、もう知らん」
「すねないでください」
「すねるほど、落ちぶれてないよ」
「では、笑ってください」
「ほ~、先手を打って、楽しいかい?」
「はい」
「だったら、乗せられるがままに、君の一途をたどってやろう、どんな未来が待ってるが、さぞ楽しみだね」
「そうですね、先生はやっぱりかわいいです」
「私は男だぞ、サガもしらず言葉を使う出ない、このひょうきんものめ」
「はいはい、先生はいつだって、私のものですよ~」
「いつから君の所有物になったんだかね~、相変わらず、世間をなめてるね~」
「人として好きで、人として、先生を所有したいんです」
「なるほど、それほどまでに、金がないと、私を情けで買えると思うなよ」
「はーい、愛で射止めます」
「愛とはなんだ、相変わらず、心にもない言葉を言うね」
「愛とはですね、心にあるんです」
「神と仏を信じるが、心は信じない、この意が分かるかね?」
「わかりません」
「だとしたら、問題だね、私は、神も仏も心も信じない、だから、すべては無意味なのだよ、人など、所詮は、気を良くしたいだけの言葉にすがる、それに興味はないね」
「わかりました、あなたが如何に、人に冷めているかわかりました、でも先生、あなたは信じないと言うくらいには、信じ込んでいた事もあったのでしょ」
「は、あっけらかんと、言葉を叩きよって、いいかね、裏切られたなどとは裾ほどにも思うな、私はね、初めから、人間であることに悲しみを覚えている、だからね、どうだっていいだよ、人の作るものに、真実はない、だから、心は信じない、別の何かになりたいんだよ」
「あなたって人は、やっぱり、いい人です」
「どうとでも言え、それで君が救われるなら、それは身勝手な解釈だがね」
「はい、では、先生に一言、あなたが好きです」
「それは人の言葉か?」
「ええ、私の言葉です」
「それはつまり、、、」
「先生、あなたは人が嫌いではないでしょ?」
「そうだね、嫌いではない、しかし嫌いにもなれる、いいや嫌いで居たら安心できるそう思っている、受け入れれば、それはもう責任が伴う、そしてそこまで私は出来た人間じゃない、だからまだ未完成なんだ、とても、弱いんだ、ほんとわね、」
「だとしたら、これから強くなりませんか?」
「何を言ってる、強くなるなど、勇気がなければできない、それすら私にはない」
「でも、私が居れば、少しは見えてくるんじゃないですか、そういった、見えない希望が少しでも」
「そうか、では、君は、本当に、私を思っているんだな」
「なぜそんな寂しそうに言うのですか」
「誰かに思われたら最後、私だって生きてるんだとここにいるんだと、知れるんだ、それがなんだかね、どこか切ないね、あまりうまく言えないけど」
「先生、あなたは確かにここにいますよ、ここに居ていいんですよ」
「そうか、白瀬、ありがとう、なんだか、空がまぶしいね」
「そうですね、まるで、空が透き通っていますね」
「ああ、まったく、まったくな、こんなんだから世界に居てしまうんだ、まったくわかってないのは私なのかもしれない、なんて、あるわけ、いや。。ないか。」
「先生、あなたはやっぱりわかっているんですよ、人として生きて良いんですよ、愛されていいんですよ、一緒にいていいんですよ、だからそんなに一人で決めないで、一人で終わらせようとしないで、好きです、好きなんです、あなたが、何よりも、この世界よりも一番好きなんです、私のために、ずっといてください、ずっとここに目の前にいてください、大好きです、大好きです、大好きです、。ほんと、大好きです。。。」
「あぁ、まったく、今日にも君が見えるね、行こうか、今日も、ひとまず。、君が居るから」
「はい、せんせ」
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