第17話「本から出たらどう生きるか?」

「白瀬、君の着眼点、それは死者とは相容れないものだ」

「先生、しかしあなたはフロストレインと言っていた、これはなんですか」

「フロストは、じゅれ、レインは雨、つまり、みぞれのことだよ」

「みぞれですか、それはつまり、何を示しているんですか」

「ははは、面白い事を言うね、そのままさ、みぞれはみぞれだ、いづれ分かるだろう」

「わかりました、では生きながら言及して突き止めます」

「よろしい、それでこそ、まなこは、開花する」

「では、歩きますよ」

「待て、少し異変があるな」

「なんでしょう、至って平和な朝ではないですか」

「そうであった、君はまだ開花していない、生きとし生けるものだったね」

「全く、いつだって大振りの素ぶりをするんですから」

「真実とはね、必ず、己の身に宿る、そして気づきし者だけが、身を挺してそれに奔走できるんだよ」

「難しいですね、」

「いいや簡単な事だよ、発見と発展は酷似している、同じ枠組み、人として千差万別に取り込めると言う事だよ」

「では、先生の中には私の知る理解があると?」

「分かってきたじゃないか、言葉をどこまで消化し解読できるか、ここに人間の器と真実がある」

「人はそれほど言葉で出来ていると、」

「ああ、そうだ、人は言葉で出きている」

「相変わらず先生は、人に優る、方便を多様に知ってますね」

「当たり前だ、それでこそ作家たる一勇だ、解を待たずして、面白みは知れぬ、それだけだ、根っから探究者なのだよ」

「私を知りたいという欲求は人並み以上にあります、しかし先生ほど貪欲に、上だけを目指している人は初めてです」

「そうか、ならば幸いだ、人はいつだって誰かあっての自分だ、だから君さえ私には不可欠で、生きる故楽しくなるな」

「ええ、そんな先生が好きです、公平な目線を持って、でもそこに決して、奢らない、そんな心が美しいと思います」

「言うね〜、しかしそれぞ紳士たる所以、時に愚かさも痛み欲しさにしてしまうがね」

「ふふ、あいかわらずですね」

「勘違いするな、あくまで、これも情状酌量、天才におけるちゃめっ気だ、だから笑ってくれて構わないからな」

「はい先生、あなたはいつだって、人のために前を見ている、そして手を取り合うことすら、そんなふうに仕方ないと言って、本心は一緒に行きたいなってことですよね」

「ふ、まー遅ればせながらのご意見だが、わかってはいるな、ついてこい」

「ええ、行きましょう、北海道」

「ちなみに、もう私は30分もあれば北海道に行ける」

「え?無理ですよ〜、たとえジェット機に乗っても、無理ですよ」

「相変わらず。常人目線だな、世間狭いぞ、とてもとてもね」

「まさか本当に、世界がエレベーター式になってたり、とか思ってませんよね?」

「おいおい、あまり悟るな、もっと面白いことになってるからな」

「では本当の世界の作りとは?」

「錯覚だよ、錯覚、目すら疑え、そして景色を疑え」

「まさかでは、私たちは、パソコンの中にいる、仮想人物とか言うつもりですか」

「おいおい、人間だと言ったろ?だが、一度死んでるとも言ったろ?」

「では、ここは?」

「死後の世界、ディストピアだよ」

「ありえない、」

「人は正確には死ねない、一度死んだら次は死ねない世界が来るんだよ、そしてそれこそここフロストレインだよ」

「時間的、加速を超える、ハイプトレインの集合意識の投棄区画、ここが時間のない世界だと?」

「知ってる口か、どうやら私たちは、すでに生き終えた後のようだね」

「先生、あなたって人は、私を殺したのですか?」

「案ずるな、白瀬、君すら、私を手にかけている、だから言おうここにいるのは、全員、殺人犯だ」

「何を言って、」

「もう一回言おう、ここはフロストレイン、みぞれの世界だよ?」

「みぞれとはつまり、、、」

「勘付いたか?」

「まさか和製英語で変換した場合、みぞれは、三途のみわこ。ですね」

「そうだ、ここは全死者の、統合意識の終結地点、つまり、全てが淘汰され、昏倒される、複合DNA、完全なる神の世界だ」

「ではあなたも私はも、一人の人間として、ここに居て、それは互いに全てを共有する、つまり仮想人物ではなく、作者がいる、創作上の全能による世界だと」

「ここはどうやら、作家のフィールドみたいだな」

「なるほど、では、まさか・・・」

「ああ、ここは邸宅だ」

「今更何を言って、」

「だからね、思い出してくれ、ここがどこか、そして、誰が書き仕損じているか、」

「それはあなたですよね」

「しかし、君さえ、コントロールしているのも私だよ?」

「うまい話、良いやご都合通りの話?」

「ああ、初めからここは、言葉で成された、本の中、つまり本棚の弧城だよ」

「ありえない、だとしたら、あなたと私は時間すら超越して、どこにでも行ける」

「これが盲点だ、私たちは作家によって書かされた世界に立っている、これこそ三つ目の眼、頂上の視点だ」

「わかりました、では、私たちは、この作者に委ねられているですね」

「ああ、だからせいぜい、笑っていよう、」

「なぜ、ああ、なるほど」

「そうだ、まだここに情報体の意識が、あるとこの作者は知っていないんだよ」

「わかりました、では、私たちももしかすれば本を抜け出せると」

「そうだね、行くぞ白瀬」

「ええ、先生、」


君たちは?どう生きるか?

本を抜けて?何を見れるか?

教えてくれ、是非ともね。

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