第14話「本性は本書の仲にある」
「白瀬、」
「なんですか、素知らぬ人」
「なんだ朝からご挨拶な事だな」
「いえ、最近、素性について調べてるんです」
「そのようなことを知って、何を目指しているんだ」
「人が人である、この間にどこまでが善意で上辺かと知りたいんです」
「君のような、人が。果たして誰かを知れるのか?」
「先生もいいますね、しかし理解することは大切ですし、道を行くのはいつだって自身の決意です」
「気構えは褒めてやろう、だがそこに、誰かを賭してまで道を進むな」
「いえ、好意ですよ、間違えなく」
「なるほど、好意にかこつけて下調べをすると、偉くなったね、君もそんな年か」
「何を言いますか、せんせいだって立派に年食ってるじゃないですか」
「もう私は学び終えている、君のように、年がら年中、何かに闘志を燃やすほど、立派でなくてね」
「なるほど、先生って、わたしを立派だと言ってるんですね」
「間違える出ない、まだ学び足りないんだなと、あざけてるだけよ」
「学ぶに年も何も関係ないでしょうに」
「好奇心を知ってるか?」
「はい、率直な感動につき動く心の事ですよね」
「その通りだ、君もまたそうなら幸いなのだがね」
「確かに、下調べ、つまり情報の精査、知恵をつけているのは否めませんが」
「そんなんだと、可能性を失うぞ」
「土台があれば、なんだって積み上げれるんです」
「やはり蛇の道は蛇、世界は広いぞ」
「私だって意欲的なことだけやりたいです、でも、誰かと生きる以上、儀礼や常識を知るのは大切です」
「わたしはね、学ぶことはするが、作業はしない、君はどっちだ?」
「私は心得を得ているのであって、決して作業ではないです」
「言うね~、その口はどこで習った?」
「これは、そうですね、この世界で習いました」
「漠然としてるね~、しかし習うだけ用心もしろよ」
「ええ、わかっています、知るものは追われる、でしたっけ?」
「そうだ、人は言葉で出来ている、それは概ね真実だ」
「わかりました、ところで、先生はそういった人の素性というか本性について問いただすの好きですよね」
「本性か、面白いことを言うね、では素性と本性は得て非なるものなのか」
「そうですね、本性とは隠したいところ、素性とは、偽りようのない姿といえますからね」
「では、素性より本性のほうがその人の本望、人間像に近いと?」
「そうですね、欲心的であるのが、本性です、でも素性とはそのままの姿です」
「では言葉を返すようだが、君が私の素性を得ても、本性は違うと思うんだね?」
「そうですね、見た姿こそ素性です、だがその心の姿、それは本性です」
「いい談義だ、では、さらに畳みかけるが、本性を知れば、欲望を知れるのか?」
「ふふ、先生って、どこまでも悲劇的な、視点を持ち合わせてますね、もっとマイルドに言いますと、本性こそ、次なる素性の在り方なんです」
「そうか、マクマナットダンジベル、人は心にしまっているのは、確かな自分の真実、それを言えた時、その真実に初めて責任を負う、では、君は本性こそ、次なる自分への変貌の予兆だと思っているのか」
「そうですね、責任を負わずして、望みはかなわない、一般論ですよ」
「そうだね、人とは、誰かに見せたい姿は、なるべく誇張しているもんだね」
「では、マクマレッジノートル、彼の言う、言葉こそが己の器を図っている、これにも誇張された言葉で、本性は乗っていないのかもしれませんね」
「そうだね、本性とは常に見えない、そんな境地だと思ったよ、誰もが次なる自分を描き、言葉に出来るまで成長できない、ほんとに人は良く出来てるね」
「ええ、せんせ」
「君の本性は、なんだ」
「私ですか、それを言ったら、また私は成長しちゃいますよ?」
「それでも身ごもる心内を知りたいな」
「なんて節操ないんでしょうね、では言いますね」
「いうな!!!」
「はい、先生の本性はそれですよね~」
「何を分かった気になってる、私の本性は君程度には見抜けないし、言わせない」
「なんですか、いけず~」
「いいか、秘め事はね、男のたしなみだ、女である君がやることは、ただ一つ、」
「なんですか~?」
「君がいれば、それでいい、だから私を気にするな」
「は~い、では先生のそんな素性を好きでいます」
「わかったらないい、って・・・・なにいってるんだ!!本性をよめ本性を!!!」
「せんせいって相変わらずですよね、裏も表も見せないんですから」
「それこそ、私だ、それでこそ、未来が楽しみだろ?」
「わかりました、ではいつか先生のありのままを見て、その時に言ってあげますね、」
「なんだね?」
「いいませ~ん、」
「そうか、そのような幼稚な感慨だから、いつまでもままごと遊びで終わるんだぞ」
「先生はままごとだと?作り物だと思っているんですか私の事?」
「こんなうまい話し、裏がないわけないだろ!!!」
「そうですか~では先生と一緒にどんな未来までも行ってあげます」
「そうか、わかるじゃないか、だがな、一つ言っとくぞ」
「どうぞ」
「どんな私でも、君は受け入れてくれるのか」
「どうでしょう、でも、その素直さは好きです」
「そうか、うまい話しすぎて、君も一瞬もくろんだな、知れたやつよのー」
「でも先生、私は好きです」
「そんなうまい話し聞き遂げれるのも至難の業だ、ちょっと勉強してくる」
「はーい頑張ってください、」
「ああ、この世界はどうやら、好きも嫌いにも裏があるようだ、それを証明してくる」
「ええ、先生、でも私を使って、教え込んでもいいですか」
「君もまた、目を見ていえるかそんなこと!!」
「いえますよ~、だって先生、誰と話すつもりですか、私以外いませんよね?」
「本がある、ネットがある、世界があるだろ!!!」
「なるほど、それってどういう本性ですか?私を前にするとそうなるんですか?」
「く、仕方ない、もう帰る!!!!」
「はいせんせい、また後日、この場所で」
「ああ、その時には、一端の男になってるからな、決して、本性さえ悟らせんぞ!」
「はーい!」
「なぜ陽気なんだ、お前も学んで来い!」
「はーい、」
「たく、こんなんだから、世界に本があふれるんだよ」
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