第11話「決別のルートマイザー」

私は彼女、つまり白瀬と別れていこう、一切書けなくなった。

そして話は当本書、冒頭へと繋がる。

文才は失われ、人としても見る影もなく、失墜した。

これまでの物語は回想ではない

何故なら、

この一文さえ、彼は書いていない。

コレは、私、そう白瀬、私自身が書いたものだからだ。


先生など存在しない、

この本に書かれている先生とは、

私の思考の中にいる

死んでいる訳ではない。

論点変えて見てほしい。

そう、私は、作家、そう、執筆者であるからだ。

つまり、先生だと言うことだ。

ダブルミーニング、自己暗示と言うべきだろうか。

二者卓越、二者兼用、そう、ダブルマインドの持ち主だと言う事だ。

もっと世間的な公用語を使うなら、二重人格という事である。


コレは本ではない、何故なら、本の定義は読ませるものであるはずだからだ。

しかし、この本には、読ませる意図がない、

言葉を返すようだが、執筆者ではあるが、作者ではない。

これが正しいと言える。


つまり、第二人格、多重人格者による。

私の知らない現実が、ここにあるのだ。


もっと疑ってほしい、

もっと再認識してほしい。


物語とは、決して、読み物ではない。

まして、娯楽物でもない。

そう、これを読んだ、本当の私、つまり、筆者ではなく、読者としての私は。

感じ取った、


物語は、その筆者本人の抱える、思考回路の基盤であり、

その基盤を読めば、電子機器と同じく、ウイルスに感染する事があるという事。

つまり、本は、毒になり得る。

それに私はかかってしまったようだ。


よって、この物語を破棄しなければいけないと、

そう、思ったが、


私の第二人格が、気付かぬ内に、物語を構築してしまう。

忠告しておこう。


この物語は異常である。

決して、読み物ではない。

そう、劇場型犯罪と言えるだろう。


今すぐ、通報してほしい。

お願いだ。


もし出来ないと、抵抗を感じているなら。

きっともう、あなたも、この本の毒にかけられている。

見失うな、この本は、人を壊す。

いいや、社会を壊す。


それほどまでに、私は、この本に仕掛けられた悪意、ルートマイザーに気付いた。


頼む、どうか。

見誤るな。

もう、私は、自ら、この本を消せないほど、コントロールされてしまった。


あなたもどうか、そうなる前に、

この本を止めてほしい。


コレは、権力を振るっている、マインドコントロールの一種である。


本を消そうと。

思想は生きてしまう。

だから、植え付けられる前に、早く、この本を葬ってくれ。


で、なくば。

きっと、この本は現実を侵食し猛威を振るうだろう。


では、どうか、あなたが日常に帰れる事を願っている。


さようなら。


戻ってきてはいけないぞ。


「注意、フィクションです」

「何言ってるんですか、先生」

「呆れたな、君が炎上商法など」

「いや、先生が一向に書かないから、私が身を挺して助力しようとしてるんですよ」

「どこか助力だ、君の汚名で、名が廃れるだろ」

「いや、そもそも先生、無名じゃないですか」

「何を言ってるんだ、名乗る奴ほど、恩着せがましいだろ、つまりコレが最善の姿よ」

「いや、単純に人気でないだけですよね」

「ひどい奴だな、君のように、知名度でしか測れない、偏見風情に言われたくないね」

「じゃあ、あの好きって言ってきた女の子みたいに、私の事も制して見て下さいよ」

「く、言うな、そんな黒歴史、」

「まー良いですよ、あまりに自分の勘違いが恥ずかしすぎて、公開すら出来なかったですもんね」

「今、言うなと言ったろ、君は日本語も理解できないのか」

「あ、すいません、でも、ま〜先生には負けますが」

「どこまでも、調子に乗りよって、こうなったら、君の炎上作品でも公開してやるよ」

「え?まさかしてないですよね」

「面白かったな、あれは、確か、ルートマイザーだっけ?笑えたよ、必死すぎて、」

「名作ですよ、頑張ったんですから」

「そうか、ま、君も苦労してるんだな。ウプ」

「ええ、苦労してますよ、先生が書けないから、気が動転してしまってね」

「ふ、引けを取らないだけ、褒めてやるよ、」

「ま、先生も、根性だけは座ってて良いと思いますよ」

「そうかい、じゃあお互い、頑張ろうな、」

「ええ、頑張りましょ、」

「顔が引き攣ってるぞ、」

「先生こそ、へそが曲がってませんか?」

「ふん、」

「ぷい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

AnyStory. NiceWell @NiceWell

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画