第7話「社会の秘密工作」
「白瀬、一円と一万円どっちが価値あると思う?」
「え?いやそんなの一万円ですよね」
「ふん、常人運行、ご苦労さん」
「いやいや、1円では何も出来ませんよ」
「それは今から一年前だった」
「また何か語り出すんですね、はぁ。」
「私はチャラけた高校生にあったんだ」
「おお珍しく、今回は人間スタートですか」
「そう、私は絡まれ、機嫌を取るために金を渡そうとした」
「厄介ですね」
「だが、彼は言った、要らないと、何故かと聞いたら、一万円じゃ何も出来ないよって言われたんだ」
「え?」
「私は慌てて、財布を上げるから勘弁してくれと言った、だが、彼は要らないと言ったんだ」
「ええ?」
「狙いが見えなかった、だから何か買ってきましょうかと、とにかく、機嫌を取ろうとした」
「ほお」
「そしたら彼は、要らないと言った、むしろ奢ってやるよと言われたんだ」
「チャラ男が飯を奢る?」
「そうだ、私はびっくりしたよ、でも彼はラーメン屋で七百円もするラーメンを奢ってくれたんだ」
「なぜですか、彼は一体何がしたいのでしょう」
「そこで、私は、聞いたんだ、なんで飯をくれるんだと」
「はい、」
「そしたら彼は、あんたの財布の中、全然ないんだなって笑って、だから奢ったんだよって言ったんだ」
「ほお、まるでイメージが逆転しますね」
「そうだよな、でもなそれだけじゃなかった、私は彼に会い社会法則に気づいたんだ」
「何だって言うんですか?」
「彼は何故か、私に一円をくれたんだ」
「え?」
「それで、これで何か買ってこいと言われたんだ」
「あれ?やっぱり揺すられてる?」
「私は、とにかく、何が良いですかと、とにかく一円には触れず、買ってきますという姿勢を見せた」
「はい」
「彼は、落ちついた顔で、そうだな〜と言って、家を買って来いと言ったんだ」
「家ですか??」
「そうだ、私は、どう考えても不可能だと思った、だが断れなかった、」
「でも普通に買えませんよね?」
「そうだ、だが、彼は如何にも平然な顔で、凄むこともなく、私を送り出した」
「で、どうしたんです?」
「私はとにかく、家を買おうと、借金をして、彼に家を買ってあげたんだ」
「ええ??」
「そりゃ、怖いから、私はそうする他なかったんだ」
「警察に言ってくださいよ」
「いいや、コレは最高に良い話になるんだよ」
「はぁ。」
「彼に家を渡すと、彼は、ありがとうなって気さくな顔で、一円を3枚くれたんだ」
「え?また何か要求されるんじゃ?」
「違ったんだ、それは、綺麗に磨いた一円なんだと誇らしげに言って、コレでお前も良い人生を送れよって言われたんだ」
「え?全く意味がわかりません」
「私は、とにかく。コレでもう絡まれないんだなって安心して、とにかく別れを告げたんだ」
「はい、」
「だが、私は借金に追われていて、借金取りがきたんだ、」
「なんかどんどん悪い話になってるような?」
「とにかく、三千万円の借金をしていて、私はホームレスになってしまった」
「ええ?」
「だが、その時、また彼に出会ったんだ、そう、あのチャラ男だ」
「いや、それって良くないんじゃ?」
「彼に、もう金はないから何も出来ないんだと、正直に言ったんだ、」
「はい」
「そしたら彼は驚いた顔で、あの三円あるでしょ?と聞いてきたんだ」
「はい、」
「私は、あぁ、あるが、あれでは何も出来ないよと言ったんだ、」
「でしょうね」
「彼はまるで、驚いて、三円もあったら、何でも買えるだろって言い放ったんだ」
「え?」
「だが彼が嘘を言ってるように思えなかったんだ、本気で三円で何もかもが買えると確信している顔だったんだ」
「ええ?」
「だから私は、三円で何が買えるんだと、聞いたんだ」
「はい」
「彼は、家でも何でも買えるだろと言うんだ」
「どうなってるんですか?」
「私は、ここで一つの疑問が浮かんだ、彼の一円に対する価値基準が、もしや私の学んだ価値基準と違うのではないかと言うことだ」
「おお、」
「だから私は、聞いてみた、一万円と一円だったらどっちが価値がある?と」
「はい」
「すると、そんなの一円に決まってるだろと、笑って言うんだ」
「ええ。では本当に価値基準がすり替わってるとでも?」
「私は、そこで更に畳み掛けた、一万円と一円交換してくれないかいって」
「はい、」
「すると彼は、そんな事したら、あんたが損するじゃないかって平然と言うんだ」
「ええ」
「だから、私は言ったんだ、一万円の方が価値があるんだよと、すると彼はそんな訳ないって言うんだ」
「ええ、?」
「で私は、じゃあ、一円をたくさんあげたら君は金持ちになるのか?と言ったんだ」
「なるほど」
「すると、そりゃそうだよって言うから、私は、じゃあ、一円をたくさん上げるから、一万円をくれないかと言ったんだ」
「はいはい」
「そして彼は、できる訳ないだろと言いながら、一万円をくれたんだ」
「ほお」
「で、私は自販機にその一万円を入れて、小銭を作り、一円を渡した」
「はい」
「すると彼は驚いた顔で、お前どうやってこの一瞬で、そんなに金が増えたんだと驚いた」
「ええ?」
「そして、次に私は、じゃあ、君はその一円で買い物をすれば、一万円が貰えるのか、と聞いた」
「はい、」
「彼は、そんなの当たり前だろって、顔で、自販機に一円を入れた、すると一万円が大量に出てきたんだ」
「そんな事あるんですか?」
「ああ、そこで、私は、本当の事を言った、私の常識では一円より一万円の方が高価なんだよ、と」
「おお、」
「彼はすると、じゃあ、もしかして、俺たちが繋がれば、億万長者になれるんじゃないかって」
「ほお」
「そうその通りだった、私はすぐに彼と組み、借金を返せた、」
「そんな事があるんですか、」
「ああ、コレは事実だよ白瀬、」
「そんなバカな」
「私はね、ここから推察したのだがな、コレは隠された社会性なのではないかと」
「どう言う事ですか」
「人は、柄の悪い人を避けるだろ、だがそれは彼らの常識がそもそも違うからだ」
「ほお?、」
「つまりね、社会には二通りの教育があるのではないかということだ」
「つまり、私たちとは違う教育を受けて、価値や常識を全く違って覚えさせてる?って事ですか」
「そうだ、社会はこの相対した二つを結べるものだけに、金や地位を授けているんだ」
「ええ、では、それが本当の生きるって事なんですね」
「そうだ、社会が設けた、本当の答えだよ」
「凄いです、先生、あなたは、社会を見抜けたんですね」
「ああ、人は人を受け入れ、そして輪になり、一つになれるか、それがこの社会が秘密裏に仕組んだ、善と悪の人間劇だったんだ」
「先生、あなたって人は、本当に、何者なんですか」
「そうだね、きっと、全てを拒めなかった、臆病者だよ」
「そうですか、でも、先生は、辿り着いたんですね、その社会境地まで」
「ああ、コレもまた、持ちつ持たれつと言うことかな」
「ふふ、お上手な事で」
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