第2話「作家の急所」

「つまり本が書ける奴は説明が長いだけなんだよ」

「先生が書けないからってそんな皮肉言わないでください」

「でもな、普通に考えてみろ、分厚い本が好きなのか?」

「しかし先生、それほど感性が豊かたと言うことでは?」

「分かってない、詩人の方が明らかに有能だよ」

「また熾烈な言い逃れを」

「いいか、人間は新製品を買ったら、説明書を読むだろ」

「はい、」

「それで十分なのさ。伝えたい内容は説明書で事足りてるはずだ」

「だからと言って、本がそれに当てはまるとは思えませんよ」

「何を言ってる、本だって商品だぞ、すぐに物にできずにどうする」

「なんか。話が錯綜とし過ぎていて」

「いいか、何度も言うが、本を書けるやつは説明が下手なだけってことだ」

「でも先生だって、饒舌に述べてるじゃないですか」

「私の本は全て、人智を超えている」

「つまり?」

「読まねば爆発すると言うことさ」

「あの?先生、大丈夫ですか?」

「何を疑ってる、私は読者に爆弾の解除方法を解いてるのさ、そりゃ長くもなるだろ?」

「はぁ。。。ただの恋愛話でしたよね、先生の本」

「ふっ、分かってないな、君らは読むと同時に、私の抱える爆弾に触れているのだよ」

「そういう爆弾ですか、」

「なんだ、君は比喩も知らないのか、呆れた常人だな」

「あの、なんか機嫌悪いんですか?」

「な?まさか。君に指摘される節などないぞ」

「いえ、明らかに、私にあたってますよね」

「ふんっ、これだから、善人気取りは困る、いつだって被害者ぶるからな」

「いや、この流れ的にどう見ても部が悪いのは先生だと思いますが」

「そうか、つまり君は、流れでモノを判断するようなやつという事か」

「人間誰しも、そういうモノではないですか」

「違うよ、流れから汲み取れるのは、ただの水だ、掴みもできないね」

「また比喩で遊んでるんですか」

「聞いておののけ、助手よ、天才とは三里先を見ているのものさ」

「では、その三里とはなんでしょうか」

「愚劣な、貴様の首の上は、ただの脂肪か、それとも飾りか、いいや、そもそも人間なのか」

「あの先生、お言葉ですが、怒った者ほど怖いものはありませんからね」

「何を啓発している、君が怒った所で、私が屈するとでも?」

「致し方ありませんね、これを見てください」

「貴様・・・・」

「言葉もありませんか、つまりこういう事が出来るんですよ、常人とはね」

「やめろ、そんなことをしたら、私はもう生きれない」

「でしょうね、作家にとっての命ですものねこれは」

「そうだ、白瀬、君も、何かと心得があるようじゃないか、褒め難いが」

「では、謝ってください」

「く、、、しかし、私のプライドが、」

「良いのですか、これ、送信しちゃいますよ?」

「待て待て、いくら馬鹿にされたって超えてはいけない一線はあるものだぞ」

「でしたら、超えてみたらどうなるのでしょうか」

「もう一生、立ち直れなくなる、」

「では先生、謝ってください」

「ああ、分かった、分かった、非道なことを言ってすまなかった」

「いえ、良いのです」

「だが、それは返してくれ」

「どうしましょう?」

「作家にとって、それは命より重い」

「そうですか、では返しますね、ラブレター」

「いうな!!!恥ずか死ぬではないか!!!」

「でもなんで作家とラブレターに関係性が?」

「作家ってのは基本、言葉で誘惑してるものだ、だから作家にとってのラブレターとは心臓に当たる書物になるんだよ」

「なるほど、作家の急所は、そこでしたか」

「全く、そういう分かり方をするでない」

「失礼、大変参考になりました。善処します」

「ふん、どうだかな」

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