第12話 次の戦いは?
私たちは、寮のある普段生活する島に舞い戻ってきている。会議が流れていたスクリーンを、皆で見上げている。地球人だけでなく、他惑星人も同じ部屋に集まってきている。
全員は入れないので、部屋が複数に分かれてしまっている。
次は、海王星と土星だ。
海王星人は、のっそりと動く。動きは遅いが尖った牙が、かなり怖い。地球の生物でいう、ワニに近い。彼らは、固い肌に覆われていてどの惑星の気圧にも耐えられるそうだ。
そのため、着ている宇宙服は無く肌そのままが出ている。顔だけ酸素ボンベのようなものをつけている。ガラスドームの上に紙風船が付けられている。
短い腕に、我々地球人の使っていたサイズのピコピコハンマーを所持している。
対して土星人は、首の長い竜脚類と言われるような見た目をしている。地球で一時期話題に上がっていた、首長恐竜だろう。所謂、ネッシーと呼ばれる生物だ。
どしっとした樽型の身体に、重量のある体を支える手足。身体を支えるためなのか、口で咥えて背中に紙風船をつけている。
こちらも、地球サイズのものを使っている。
(頭であのピコピコハンマーを振り回すの? 恐ろしい……ってか、なんでこっちは地球サイズなわけ?? さっきのやっぱり、違反でしょ!)
どこにもぶつけられない文句を心の中で、ぶつぶつとつぶやく。
のっそり動く両者の戦いは、ゆっくりと展開されていく。見ているこちらは、あくびが出てくる。
しかし、その時。
土星人の重量のある首が、ものすごい勢いで海王星人の頭上を目掛けて振り下ろされる。振り下ろされた海王星人のガラスドームは、粉々に砕け散っていく。
その凄まじい威力に、思わず喉を鳴らす。
固まった肩の力を抜くように、肺に溜まった息を吐き出していく。
私の左隣に座ったシンは、首をグラグラさせて白目をむいていた。気づかれないように私は、シンの太ももを叩いた。
ハッと一度なるものの、また夢うつつになってしまった。私は思わず、ため息が漏れるそんなため息をイアンは、聞き逃さなかった。手を口に持ってきて、私に耳打ちをした。
「シンのことを……起こしてあげてくれない?」
(いやいや、見てたでしょ? 起きなかったんだけど!)
私は、少し離れたイアンを見開いた瞳で見かえす。瞬きを数回して、私の言いたいことを目で伝えた。
イアンは眉を下げて、申し訳なさそうにしている。やはりこのイアンは、残念イケメンだ。役回りが残念なだけに、もったいない。
私は大きくため息をついて、視線を外し自分の足元に落とした。
そして、もう一度瞳を閉じてため息をついた。右足をサッとあげて、シンの足をぎゅと踏む。
「んぎゃっ!!」
私は、サッと顔をイアンの方に逸らした。目にグッと力を入れて、イアンにどうにかしてもらおうとした。
(起こせって言われたからやっただけ。私悪くない……)
「痛いんだけど……なんでそんなこと……」
シンは、呑気にも普段の声量で話し始める。パッと振り返って、そんなシンの口を手で塞ぐ。
眉が中央に寄り、自分の怒りを滲み出す。
「これで怒られたら、どうすんの?」
コソッと小さい声で、シンに注意した。勝手にシンだけが注意されるだけなら私には、関係のないことだ。しかし、起こしたことで私までとばっちりを受けたくない。
静かにおとなしくなったシンから、私は手を外す。
「ごめん」
大きめの声が特徴のシンが、小さな聞こえるかどうかの声で謝ってきた。しょぼんと下を向いてしまった。
しかし私からしたら、静かにしていてくれるのであればそれに越したことはない。
スクリーンに目を向ける。
――ピッッ
相変わらず、可愛らしい音が聞こえてくる。ネッシーがワニを叩いているところだった。
もとい、海王星人の紙風船を土星人が叩いている。
――バーーンッ
黄色の煙が立ち上がった。土星人の勝利だ。
「はぁ、ようやく終わりかぁ」
「はい……本当に、ようやくですね」
私もイアンも大きなため息をついた。その隣で、しょぼしょぼとキノコを生やしたシンがボソボソ何かを言っている。
私はまた面倒なことに巻き込まれたくないと、一旦その席から立ちあがる。ゾロゾロと部屋から他の惑星人たちが、出ていく。それに続いて、私も外に出ようとした。
スアの目の前を通り過ぎようとした時、スアに腕をガシッと掴まれた。痛くはないが、なかなか力を入れられる。
「ちょっと! どこいくの!」
特にいく場所はないが、あの2人に挟まれている状況から逃げたかった。少し視線を泳がせて、いく場所を思案する。
「あ〜……お手洗い? にです!」
泳がせた視線をチラリとスアに移動させる。スアは、口を尖らせて私の腕を離した。私は、よくわからず首を傾げてスアの目の前を通過した。
タタタっと駆け寄ってくる音が聞こえてきた。振り向くとスアがいた。
(あぁ〜、女子特有のやつですか?)
スアは、私のそばに来て周りをキョロキョロ確認した。そして、コソコソ話をしてくる。
「新人ちゃん、あのね……」
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