第7話 対、水星人!
そんなどう考えても不利な状況に舌を巻く。水星人は、大きな耳をぴくりと動かして私たちの動きに耳を澄ましている。
両者とも沈黙を守り、睨み合うように視線で戦いが始まった。静かな空間の中、両者の武器がピコピコハンマーというのは実に不釣り合い極まりない。
真面目な空気感だったそれを、水星人が高い声で笑い沈黙を破った。垂れた耳が、宇宙服の中でぴょこっと上がった。そして、私たち人間を見下ろしてお頭の上についた紙風船を軽く触った。
「これ、君たちに割れるかな? まあ、無理だろうけどね」
その言葉を最後に、背中を向けて島の端と端に分かれていく。スアが大きな瞳をスッと細めて、眉を吊り上げている。長い赤の艶の髪を揺らして、言葉にならない声で水星人を指を指してジタバタし始めた。イアンが、困った顔でそのスアを後ろから抱きしめる形で押し止める。
(まあ。言いたいことは、わかるけどね)
私はスアの気持ちに同意阻止つつも、イアンの面倒役に対して同情に気持ちの半々で水と油が混ざらないそんな気分だ。混ざらないそんな気持ちを、噛み砕けないまま私はソフィーについていく。
私は、シンが今回スアのように噛み付かなかったからよかった。しかしきっと、私も同期としてシンのことを全力で留めに入らなくてはならくなる。
シンは、俯いて何やら考えているようにも見える。ちらりとこちらを見て、口の前に手を当てて内緒話をしてきた。私が近付くのを待って、シンは話しはじめた。
(なんかこれ、さっきもなかった? わざわざ、コソコソ話す内容でもないんでしょう?)
私は面倒だと思いつつ、耳を貸した。
「何が起きてるんだ?」
私は、大きくため息をついてしまう。やれやれとお手上げ状態になって、手のひらを天に向けた。やはりシンは、話は聞かないしそもそも言葉が理解できてないのだろう。そんな人に対して、説明なんて出来っこない。
私は、シンのことは放置をして足を前に進めていく。バタバタと私の後ろをついてくるシンは、大きな身体のくせに小さく感じてしまう。
「なんで、教えてくれないんだ?」
再度私のそばに来てしんは私の身長に合わせて、少し上半身を屈んで相変わらずコソコソと話してくる。鬱陶しくて、私はシンの頬を押して離した。
シンは、眉を下げてウルウルとした瞳でこちらを見つめてくる。
(こんな大男にそんな可愛い仕草をされたところで、可愛さのかけらもない)
思わず私は、苦虫を噛んだ顔になってしまう。近くまで来ていたイアンとスアのところに、私は逃げた。これで同じ質問をされても、怒っていた張本人が答えるだろう。自分に聞かないでくれと、念を送った。シンは寂しい子犬のように、肩を畳みなぜか私の隣に立った。
「スア先輩、得意なことを教えてください!」
私の言葉にスアは、飛んでこちらに来た。明るい表情に戻り、イアンは少し安堵の表情になった。赤のツインテールが私の腕に絡まった。
「ボクの得意なこと?」
目を輝かせて、私のことを見る。得意げに、人差し指をくるくると空で絵を描いた。左手には、ピコピコハンマーを握って腰に手を当てている。
チラッと見たシンは、イアンに肩を叩かれて慰めてもらっているようだ。なんだかイアンは、そういう役回りの立場にあるようだ。
(あ〜、イアン先輩。ごめんなさい)
少し申し訳なくなって、私は心の中でイアンに謝った、心の中なので、もちろんイアンには届かない。
「ボクはね! 空を飛べるんだよ」
私は、意味のわからない返事に瞬きを繰り返した。スアのよく分からない言葉を、頭の中に浸透させるために考える。 『空を飛べる』 について。
確かに、宇宙服を使えば可能かもしれない。しかし、ここは地球で宇宙服を着たとしてもそれは難しいだろう。何よりも宇宙服はかなりの重さがある。
それならば、宇宙服を着ずに戦う方が有利に決まっている。
「えっと? 空を飛ぶとは、一体どういうことでしょう?」
「こういうことだよっ!」
そういうとスアは、近くの建物をめがけて走り出した。勢いは増していき、建物とスアが目と鼻の先になった。見ているこちらがハラハラとして、目を瞑りそうになる。
スアの身体は、ふわっと宙を飛び上がった。後ろにぐるりと軽々しく飛び、綺麗に着地を決める。建物を蹴り上げて、ジャンプをした訳だが脚力のおかげで空を飛んでいるようにも見えた。思わず、私は拍手をした。
「どう? ボクすごいでしょ?」
「はい。これなら、安心して戦えますね!」
イアンがどんな戦いができるか、全くわからない。しかし、これだけの身体能力をもつスアなら少し安心だ。スアは、赤髪をサラッと流して颯爽と歩き出した。私はその後ろをついていく。
私とスア、イアンとシンの2つのペアはそれぞれ別の位置に立つ。相手は、5匹の大きな垂れた耳を持つうさぎ。人数としては、こちらが有利だろう。
(多勢に無勢とは、いかないだろうなぁ)
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