第4話 平和すぎやしませんか??


 ピコピコハンマーで頭につけた紙風船を割るという、宇宙大戦争が始まる事になった。乱闘にする案も出ていたが、それよりもトーナメント戦の方がおもしろいとなった。


 最初、宇宙大戦争と聞き地球滅亡になるかと冷や冷やしていたので少し肩の力が抜けた。しかし、私からするとそんな平和な戦い方でいいものか。と疑問に感じていた。



 一緒にスクリーンで話を聞いていた先輩も、混乱をしているようで目線を宙で遊ばせている。周りの人の反応を観察をしている私は、少し冷静なのかもしれない。

 

「な、なぁ。ぴこぴこハンマーってやつは、どんなやつなんだ?」



「知らないの? 本当にシンはお子ちゃまね」



(こういうタイプは、めんどくさいから受け流しておくのがいい)



 トーナメントは、くじ引きで決まった。我々の地球人は水星人と戦う事になった。それが第一試合だ。建物があった方が身を潜めながらできていいと言うことで、今いる人工島の隣に作られた戦い演習場の島を使う事にした。こちらの島も人口島だ。



「水星人は、巨大な身体だ。建物に身を潜めるのは難しいはず……」


 

 先輩は手を顎に当てて、どう立ち回ろうか考えている。私は、先輩の言葉に首を傾ける。



 「先輩、うさぎは360度の視野を持つんですよ? それに、常に敵に追われるので逃げ足も早いんですよ。

 まあでもこれは、地球のうさぎの話ですが」


 

 先輩は、私の言葉に目を閉じてため息をついた。


(地球のうさぎと見た目はそっくりだが、水星人は視力も普通にいいんですよ。とは、言わない方がいいだろうか)


 

 水星人というのは、垂れた耳は大きく。目がやや横についていてやや尖った顔をしている。地球にいるうさぎのように四足歩行で、ジャンプで移動をする。ただ巨大で大きなジャンプをすると、地震が起きたように揺れる。



 水星人は、賢くて太陽熱を活かして電気に変換し生活を送っている。一番太陽に近いので、太陽熱がかなり集まる。大きな建物の中で生活をしているようで、太陽の熱と寒暖差の激しい水星での暮らしやすいようにしている。



 酸素もなく、二酸化炭素で大気を作っている水星。我々地球人は、酸素ボンベをつけて向かわないといけない。反対に水星人は、二酸化炭素ボンベを付けて地球にやってくる。

 これは、地球人にとっては有利にならあるかもしれない。重たい二酸化炭素ボンベを背負って、彼らは戦わないといけない。

 我々地球人は、そんなもの必要がないわけで。


 

「なぁ。ピカピカハンマーって……」



「なにそれ? ピコピコね!」

 

(シンっておばかさんなの? 大丈夫かな。これと同期って心配でしかないんだけど)


 話聞いてたのか、それとも宇宙語が分からないのか。本当に心配になる質問に、私は目を見開いた。



 私たち宇宙警護隊は、宇宙語という太陽系で使われる公用語を使えなくては入隊がそもそもできない。いまの会議でも、いろんな惑星の人とコミュニケーションが取れるのもそのおかげだ。



 そんなに大きな声でやり取りをしていなかったが、真隣で話しているので先輩の耳にも入る。私たちのやりとりを聞いていた、先輩はゲラゲラと笑い出した。そして、窓の淵に手を置いてお腹を抱えだした。声は出ていないが、肩がプルプルと震えているのでお腹が痛いほど笑っているようだ。



「先輩!? お腹痛いんすか!」

 

 シンは、先輩の周りを行ったり来たり下から顔を覗こうとしたりしている。その様子に先輩は、より一層肩が震えはじめた。

 

 

(いや、お前のせいだよ)



 はじてのバッチを取りに行く時の、凛々しい顔が嘘のようだ。悪い人ではなさそうだが、どうにも頼りなさを感じてしまう。体格の良さだけで、ここにいるのではないかと疑いたくなる。

 覗き見をしている女子たちは、そんな姿も新鮮で良いようだ。先ほど同様、黄色い声があがる。私には、まるで理解できなかった。

 


「先輩、そろそろ戻りましょう」


 

 お腹を抱えて笑う先輩に声をかけた。正直めんどくさい。こんな役は、誰しもが避けたいのだ。でも、誰かがやらなければずっとここで立ち止まったままの無駄な時間を過ごすことになる。



「はははっ! 1年分は、笑ったよ。笑い溜めだね。……こっちから戻ろう」



 

(この先輩もずれてるなあ。寝溜め、みたいな?)



 私は、呆れて何も言えなくなった。何かを言えば、誰かが変なことを言ってくる。黙っているのが得策なように思えてきた。シンは、私の表情をどう受け取ったのかまたも的外れなことを言ってくる。


「1年分にしては、少ないよな?」


 

 本当に、体格の良さだけでここに配属をされて来たのかもしれない。そう思うと、自分の努力は一体なんだったんだと嘆きたくなる。



 無視を決め込んで、先輩たちのうしろをついていくことにした。シンは無視をしないでと、懇願してくる。私は、聞こえなかったことにした。

 シンは、諦めが悪いらしくて私の目の前で手を振ったりしてアピールをしている。



(うっとうしい。私は、シンの声は聞こえ無い病なので)

 

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