第3話 どう戦う?

 私は、焦りを感じていた。他惑星の生物には攻撃が効かないことは、専門学校ですでに知っていた。もちろん全ての惑星の生物が効かないわけではない。それぞれに、弱点というのがあった。その弱点を使って、戦うことが多い。

 それでも、かなり無謀な話なのだ。1人で持てる武器はせいぜい2つだろう。太陽系の惑星は、太陽と地球をのぞいて7つもある。それぞれに合わせた武器を、1人で7つも持つのは現実的ではない。

 


 今スクリーンに映し出されている、警備隊のお偉い方の話通り 『どう戦って勝つか』 が問題なのだ。まず、その話し合いをして勝算があるから明言をしたのではないのか。と思わず突っ込みたくなる。

 私は、ため息を漏らした。窓をあけ一緒に話を聞いていた先輩も、私と同じ様なため息を漏らしている。きっと警備隊の隊員は、みなこの反応をするだろう。



 地球警備隊は、少しズレているところがある人が集まる。世間でいう、 ”不思議ちゃん” というやつだろう。かく言う私も、学生時代からそう言われてきた。自分としては、変なこと言ってないのにと思っていた。


(勝てなさそうなら、なぜ戦争をしようと言ったんだ。これは、不思議ちゃんというレベルじゃないでしょ)



 ふと見上げた空に、不思議な形の乗り物が数台飛んでいる。薄い円盤だったり、歪な丸の形だったりする。おそらく、他惑星から飛んできたのだろう。本当に、他惑星のロケットは性能が良すぎて恐ろしい。

 私は、飛んでいる機体を数えた。


 

(いち、に、さん…… と言うことは、水星と金星と火星の3惑星だろう)



 先輩も同じことを思ったのか、頭をかいていた。先輩は、黒髪で身長も高く顔立ちもはっきりとしている。柔らかい話し方と表情で、誰からも好かれているのだろう。女子人気があるようで、興味のなかった私は今まで気がつかなかったが女子たちが目を輝かせていた。炊事場の扉から、わざわざ覗いて見ているのだから相当人気があるのだろう。


 

 それを見て私は、苦虫を噛み潰したような顔をした。こう言うのは、好きじゃないのだ。



 飛んでいた機体は、地面に降りてきて中から生物が顔を出す。そして、会議室に吸い込まれるように入っていった。その後も続々とやってきた。そして、先ほどのスクリーンに他惑星人たちが映し出される。


 

「皆さん、どう戦うのですか? 地球人はあまりに弱い。あ、火星人もですね」



 水星人なんて、垂れた耳が重たくて我々の話は聞こえないでしょうね」




 火星人と水星人が、おでこをくっつけて睨み合っている。金星人が間に手を入れて、横に揺れながら間を取り持っているようだ。




 火星人は、われわれ地球人と似た人間のような姿。ただかなり巨大な体をしている。水星人は、巨大なうさぎの姿。そして仲裁をしている金星人は、真っ白な顔に大きな目が2つついている機械だ。


 みな、それぞれの惑星で作られた宇宙服を身にまとって来ている。



 「さて、こう言うのはどうでしょう? 地球にある武器で、私のお気に入りのものがあるんです。

 ……ピコピコハンマーで戦うのです!」




 天王星人が、高い声でひらひらと空を舞いながら言う。天王星人は、小さく触角が二つに縞模様の身体。ひらひらとしたひだで空を飛ぶ。海の妖精である、ウミウシそっくりの見た目だ。



 「それでどう戦えと? 私のような火星人ならまだしも、天王星人は持つことも叶わないでしょう?」



 水星人から身体を離して、飛び舞う天王星人に問う。



 「ここ地球のはすごいのです。生物に当たるとぴこぴこと音が鳴るんです! 鳴った数が多い惑星の勝ち。勝った惑星のいうことを他の惑星は守らなければいけない。というのはどうでしょう」



 拍手が巻きあがった。そしてみな顔を合わせて、天王星人の言う事に賛成をしているようだ。地球人をのぞいて。




「でも、その数はどう数えましょうか? 頭に紙風船でもくっつけて、ピコピコハンマーで割ってその数で競うとか目で見えないとズルが出ますよ」



 地球人の意見に皆が賛成をした。せっかくここ地球に集まったのだからと、この人工島でその戦いをする事になった。


(どんな戦争だよ)


 

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