第2話 入隊式!

 明言される数時間前。私は、入隊式に出ていた。


「地球警護隊へ入隊、おめでとう。ようこそ、フォースへ」



 すらっとした、長身の女性に歓迎をされた。金髪で大きな目に薄い唇。ここフォースの隊長だ。

 彼女から、フォースの隊員である証のバッチを受け取る。私たち新人の後ろには、先輩隊員が見守っている。

 新人は、私を含めて2名。先輩が10名と今話をしている隊長1人だけだ。

 



「私は、ソフィーだ。今から名前を呼ぶから前に出てくるように。……エマ」



「はい!」

 

 私の名前が先に呼ばれた。地球警備隊では、ファーストネームのみで呼ばれる。



 私は小さい時に、火星人に攫われそうになった過去がある。その時に助けてもらったのが、地球警備隊だった。それが、ここを目指す動機となった。

 そこから、死に物狂いで多惑星で使われる言語を学び、どんな時でも必ず毎日10キロは走って体力をつけた。専門学校は、もちろん地球警備隊になるための学校へ進学した。躊躇することなく選んだ。




 そこで、たくさんのことを学び学校から推薦される形で地球警備隊に入隊した。言語ができるのが第一条件とされ、そこから能力によって振り分けられる。

 ここフォースは、名前の通り武力面だ。剣となり地球を守るのだ。



 私は、体力には自信があった。それが認められてフォースの部隊へ配属が決定した。

 


 私が立ち上がり、バッチを貰いにソフィーの元へ行く。手にバッチが置かれ、ついに私が隊員になった瞬間だった。そのとき、廊下が騒がしくなった。


「しっ! 失礼します!」


 

 メガネをかけた男性が、部屋の扉を思いっきり開き入室して来た。かなり慌てているようで、髪も乱れ隊服も乱れている。左手でメガネの縁をあげて荒く呼吸をしていた。


「なんだ、騒々しい」


「せ、戦争が! 宇宙大戦争が、はじまります!」



 

 大きな声でハキハキとそう述べた。今決まったことだろう。部隊長である、ソフィーも目を見開いて驚きを隠せない表情だ。


 もちろん、新人である私は知る由もない。ここまで太陽系の惑星同士は、睨み合いを続けて来た。それが爆発したのだろう。




「各惑星から、使者が来ます! 部隊長は集まるようにと言伝(ことずて)を預かって参りました!」



「そうか、わかった。もう一人だから、早く終わらせよう。シン」

 私の隣に座っていた、シンと呼ばれた体格の良い男は静かに立ち上がってバッチを貰っていた。ソフィーは、私とシンに渡し終わるとすぐ部屋を出て行った。




 宇宙大戦争。下手をしたら、地球が滅んでしまうかもしれない。



 ロケット開発や宇宙服開発がかなり進み、太陽系の中であれば行き来が自由にできる。宇宙服の進歩もかなり進んでおり、背中についたノズルから空気を排出をして空を飛ぶことが可能だ。さらには、太陽系最高温度の金星でも着陸ができる防護力を兼ね揃えている。

 ロケット開発は、他惑星の機械が優れており地球の物はまだまだこれからだ。それでも、飛行機に乗り海外へ旅行に行く感覚で月へ行くことができる。かなり人気の旅行先となっていた。




 月と地球は、仲がいい。昔ばなしに月からきた姫の話があるように、昔から地球に遊びにきているようだ。月の住人たちは、地球が好きなようで今や月は地球の貴重な資源の衛星なのだ。


 部隊長のソフィーが、会議から戻ってくるまでの間に人工島を案内されることになった。ここの島では、自給自足が基本となっていた。建物の屋上で野菜が育てられており、三部隊が交代で育てている。魚を釣ったり、たまに肉が各国から運ばれてきたりする。



 炊事は、シールド部隊が担当をしている。彼らは、ロケットや宇宙服だけでなく宇宙食開発も取り組んでいる。我々隊員のご飯は、宇宙食の試食といったところだ。

 私は、宇宙食が好きだ。専門学校で何度か食べたことがあった。味が濃く作られていて、重力の関係でゼリー状になったスープや硬すぎないおにぎり。どれもとても美味しいのだ。でも、あまり口に合わず三食毎日これはきついと才能があっても地球警備隊を断念する人もいる。

 


 炊事場の前を通り、つい口が開いてしまう。私のその表情は、大好物だと言っているようだった。

 


「あんなのが、お前好きなのか? 変わってるな」

 シンに、ヒソヒソと話しかけられた。顔をしかめているあたり、宇宙食がかなり嫌いなようだ。

 先輩の目もあるので、静かにやりとりをした。


「あれが、美味しいと思えないなんて。シンはまだまだお子ちゃまね」


 

(あぁ、あれはサバの味噌煮! 美味しいんだよなぁ)

 

 炊事場を出た先の窓の先に、大きなスクリーンがあった。そこには、会議の様子が見えるようになっていた。私は、窓からそのスクリーンをじっと見つめた。

 ここまで案内をしてくれていた先輩が、私がスクリーンを見ているのに気がつきこちらに近づいてきた。



「気になる? 僕も気になるんだよね。もし、戦争となればこの地球はどうなってしまうんだろうね」



 

 そう言って窓を開いた。スクリーンから会議の声が聞こえてくる。どう戦うかについて議論をされていた。


 それぞれの惑星には、人間のような生物が存在している。その生物は、ここ地球の住みやすい気候で育っていない。それは、人間だから住みにくいと思うだけかもしれないが。


 

 それだけに、剣で切りつけることができなければ銃で撃ち抜くこともできない生物もいる。

 そして我々のように、知能を持ち言語を使ってくる。彼らも、自分の身を守るために攻撃をしてくる。人間は、彼らとは違い剣や銃で簡単に死んでしまう。

 もちろん、すでに他惑星の生物たちはそのことを知っている。

 

 つまり、啖呵を切ったのは地球人だというのにピンチなのである。

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