第14話
年間の収入が100万円を超えるから、扶養から外れたいと彼に言った。
「そんなに稼いでるの?」
「いいえ、100万円くらい。でも、ちょっとでもオーバーしてしまうと雄一さんの会社にも迷惑がかかるわ、それなら自分の年金とか保険料は自分で払いたい。扶養から抜けても、貴方に影響しないからいいかしら?」
「めんどうだな、100万くらいなら別に働かなくてもいいだろう」
そう言われると思った。
「雄一さんは新しい服とか靴を買ってるでしょう?それって自分のお給料から出してるでしょ。私も化粧品とか洋服を買いたいの。自分の欲しいものや贅沢品に貴方のお金を使いたくない。遠慮してしまうでしょ?自由に使えるお小遣いが欲しい。だから扶養を抜けたいのよ」
「美鈴が欲しいものって、そんなに高いものじゃないだろう。っていうか、なんでそこまで働きたいんだ。子どもを育てながらだったら大変だろう」
「そう……子育てが大変だってわかってるんだ?」
お願いする時の声色から一転、私は冷たい声でゆっくりと告げる。
雄一さんは焦ったように、私の顔を見る。
「た、大変……だよな」
「へぇ、わかってて、週に4日も深夜に帰宅して休日もほとんどいないんだ。重たい物を買うのに車でついて来てくれた事はないし、子どもの病院や検診に行った事もないわよね?この子のおむつ替えた事ある?離乳食になったけど、ご飯を食べさせた事あったっけ?」
「いや、だから……話をすり替えるなよ。美鈴が働く必要があるのかっていう話だろう。そんなに大変なら尚更、仕事なんてできないだろう」
「私があなたの行動に文句を言わないんだから、雄一さんは私の好きなようにさせてくれてもいいんじゃない?何なら今から雄太をお風呂に入れてくれてもいいんだけど」
「ああ、うるさいな。わかったよ。お前は自分で働いて金を稼ぐんだな。たかだか100万な。好きにしろ」
若干脅し気味になった。けれど、よし、夫の扶養から抜けられた。
これで正社員登録できる。
その晩、私が雄太をお風呂に入れた後、雄一さんが息子にお茶を飲ませているところを見た。
今更育児手伝うつもりかしら?
少し笑ってしまった。
「ぱーぱっ」
え?
「ぱーぱっ」
「雄太、お前パパって言ったのか?そうだ。パパだよ。ぱーぱだ。もう一回言ってみて。ぱーぱだ」
「ぱーぱ」
「よし!賢いな。天才かもしれないな」
雄一さんは嬉しそうに雄太を抱き上げて、高い高いした。
パパって呼ばれたのあなたが最初じゃないから。
雄太は川崎さんのご主人をパパって呼んでたし。
私は単純な夫に冷ややかな視線を送った。
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