第6話 花音と初デート
そして俺は玄関に向かった。
花音は友達達と一緒に玄関前でだべっていた。
俺は声をかけるのが恥ずかしかったので少し離れたところで携帯をさわっていた。
「それじゃあね~」
花音の声がした。
「花音がんばー!」
友達が花音に笑いながら声をかけていた。
俺はすごい赤面しながらひたすら携帯を見ていた。
「遅れてごめんね~」
花音が少し恥ずかしそうな顔でそう言うと
「それじゃあー、いきますか!!」
と花音は言って歩き始めた。
俺は花音の隣を歩くのが照れ臭いのもあったが、何より周りの生徒がジロジロ見てくるのがすごい恥ずかしかった。
花音は高嶺の花のような存在で、そんな花音が男と二人で帰っている。それも相手はまさかの俺ともなれば周りが気になるのも当然だ。
俺は周囲の視線を逸らしながら花音の横を歩いた。
お互い何かを意識しているのか無言が続いている。
何か話さないといけない。さすがに空気が重すぎる。
俺はそう思った。
「バスで行こっか!!」
先に話したのは花音だった。
俺は頷くだけでそれ以上会話が続かない。
「あれ、どうしたの?なんか体調でも悪い?」
花音が心配そうに聞いてきた。
俺が特別何かを話すわけでもなく、反応が薄いせいで花音に気を使わせてしまった。
「全然大丈夫だよ!ごめん、心配かけて」
と俺はとりあえず謝った。
なんとも言えない雰囲気のままバス停に着いた。
バス停に着くとありさが居た。
ありさは花音にだけニコッと笑ってすぐに携帯を触り始めた。
「もしかして付き合ってるとか思われてるかな?」
と笑いながら花音が俺に言った。
俺は自分の顔が某アニメの界王拳なみに赤くなっているのが分かった。
「花音と俺がそんな風に見られるわけないっしょ!」
と俺も笑いながら答えた。
「でもさ、最近和也くん最近女子の間でかなり人気だよ?」
「私も誤解されたら嫌な人となんて一緒帰ったりしないよ~」
と花音が言った。
俺は一回言葉の意味を瞬時に整理した。
俺の思考は完全に停止した。
正直かなり嬉しい。今すぐシャドーボクシングをしたいくらいに嬉しい。
「いや、そんなことないでしょ」
「花音は優しいし良い人だから誤解されたら嫌な人なんていないでしょ」
俺は少しクールに答えた。
このテンションのまま話してしまえば大変だと自分で分かっていた。
敢えてクールに答える。
これが恋愛テクニックだと俺は某サイトの知恵袋で勉強していた。
「ん~どうかなあ?でも和也くんは優しいし頼りになるしさ、彼氏にするならこんな人が良いなってみんな思うと思うよ!」
花音が珍しく少し照れながら話す。
俺は生きててよかった。本当に幸せだ。
と心の中で呟いた。
こういう時こそクールに。これを自分に言い聞かせながら答えた。
「俺も誰にでも優しいわけじゃないし、誰にでも手伝ったりなんてしないよ」
自分で言うのもなんだが、攻めすぎてしまったがあまりにもナイスな返しだ。
「やっぱり和也くんはおもしろいね!私の目に狂いはなかったね!!」
花音に上手くかわされてしまったが、このままだと心臓が持たなかったので悔しい気持ちもあったがホッとしたほうが大きかった。
さっきまであんなに空気が重かったのが嘘みたいに俺らは賑やかに話していた。
やっぱり花音は美人で話していると落ち着く。
俺は花音がやっぱり好きだと思った。
そしてバスが見えた。
その瞬間、俺の携帯に通知が来た。
見てみるとありさからだった。
「和也くん、今日無理しなくても大丈夫だよ。花音ちゃんといい感じみたいだし邪魔したくないから。きっと花音ちゃんも和也くんのこと気になっていると思うから。」
と連絡が来ていた。
俺はすっかりありさの存在を忘れて、花音との世界に入り込んでしまっていた。
ありさの方を見ると心なしか涙目になっていたように見えた。
俺はやっぱり最低だと思った。
ただ今の俺は昔の俺とは違う。
ありさが勝手に俺に興味を持っただけで、俺は前から花音が好きだし、どうでもいいやと開き直った。
そして得意の人のせいをして自分は悪くないと言い聞かせた。
悪いのは胸糞であって俺ではない @torati0923
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。悪いのは胸糞であって俺ではないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます