第47話
薄暗い部屋の中、
「この力は、大量(おおはかり)。……ひなが、解き放ったようだな」
「流石です! あの刀を扱えるなんて」
「と、喜ぶのはいいが。……お前、どうするつもりだ?」
隣にいる、天照をジロリと睨む尊。
「え、っへへ。……まさか、黄泉比良坂の真上に松江城があるとは思わず。……地獄の蓋かなと思っていましたが、概念ではなく物理的だったとは……」
尊と天照がいるのは、松江城地下一階、食糧庫。
天照は、黄泉比良坂にいた尊を生玉で蘇生後、真上に転移を行ったのだ。どこかの街に出るだろうと考えていたようだが、戦場のど真ん中だとは想定外だったようだ。額に汗を浮かべ、本当に焦っているのが表情から見て取れた。
「まぁ、移動の手間が省けたと考えればいい」
「そうです! 流石は尊です!」
「……はぁ、お前はそこらで蹲っていろ。敵に見つかるんじゃないぞ」
「いえいえ。ここはほらほら? 私もついていくと色々お得ですよ?」
天照が尊の手を握り、付いていくぞと意気込んでいる。
「契約しちゃいましょうよ? ほらほら、名実ともに、私の御子になっちゃいましょうよ?」
尊は目頭を押さえ、溜息を吐く。
「いいか? お前と契約できるのはひなだけだ。それは説明しただろう?」
一度、死んで吹っ切れたようで、天照への態度は大きく、言葉使いは年相応の青年のように柔らかい。
「尊。それは誰が決めたのでしょうか?」
「何を言っている?」
「契約する当人が、そう言っているのに誰が否定出来ましょうか?」
「……はぁ、強いて言うなら、世界の決まりなんだろう。こんなだが、お前は、国の主たる太陽神。契約相手は、世界を先導する資格ある者に決まっている」
天照は、何をバカなことを言っているんだと鼻から思い切り息を吐き出し、肩をすくめる。
「まったく。貴方はお馬鹿さんですね~。いいですか? 一度しかいいませんよ? 貴方の世界の主役は貴方です! どこかの誰かに遠慮して一歩引く必要はありません。貴方は世界の主役だと言わんばかりに、我儘にやりたいことをやっていいんです!」
天照の言葉は、尊だけに留まらず万人に共通して届けるべきだろう。
「さぁ! 世界の中心にいる自分を思い浮かべて下さい!」
空を意味不明な蓋で覆われ、息苦しく殺伐とした世界に生きる人間たちは、一歩踏み出す勇気すら奪われているのだから。
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