第7話
ひなも同様に地に膝を付け、首を垂れる姿勢をとっている。
(この場にいるだけで感じる圧力。本能が頭を下げろと身体を支配した。……分かります、彼女が……国主様)
初めての神との対面に、畏怖の念を感じているひな。
すると、天照が目の前で膝をついたではないか。
「アナタがここら一帯で出雲と戦っていた方ですね?」
「は、はい! 国主たる天照大御神様に拝謁賜り――」
「あわあわわわわ、ですから頭を上げてください」
天照はひなの手を取り立ち上がらせると、
「皆さんが良かったらですが、私たちと一緒に暮らしませんか?」
「あ、あの……それはどういう――」
「ありがとうございます! それでは行きましょう!」
「いや、返事をした覚えはないのですけど……」
「さあさあ!」
ひなは、返事をする間もなく天照に連れ出されていった。
現在、ひなたちが避難していた一時的な集落から天照の仲間が暮らす場所へ向かっている。他の住民たちは待機だ。ひなは先遣隊として、その場所の住みやすさや罠の可能性を見極める役目を担っている。
(私がしっかりしないと……大丈夫です、大丈夫です)
乾いた喉を唾液で濡らしながら、立ち入ったことがない獣道の先へと進むと小さな祠に到着した。
「すみませんが、またお邪魔をしても宜しいでしょうか?」
すると、祠の脇に小さな子供が現れた。
「こちらを」
祠の前でしゃがみ込むと天照は、袖の下からお饅頭を取り出しその子に手渡した。
「この子は……一体……」
「彼はこの祠に祀られている神様です。その昔、この森の安全や豊作を祈願する人たちを見守っていました。それは今も変わりませんよね?」
饅頭を恭しく受け取った祠の神は、何度も力強く頷いている。
そして、銀色の輝きを天照に手渡すと、消えていった。
天照の両手の中の輝きは、ふわりと浮かび上がると銀色のカーテンに変化した。
「これは祠の神様のお力をお借りした距離を無視する力です。こちらの向こうに、私たちの家族が暮らしているんです」
「そんなことが可能なんて……」
「はい、レッツゴーです」
天照に手を引かれながら、ひなは銀色のカーテンの中へ消えていった。
すると、視界が一変。
一瞬の銀色の後、光り輝く大都市が姿を現した。
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