第1話 グロリア帝国、建国
〜回想〜
1800年、アビリア王国は大きな変革の時を迎えていた。
王都では、重く沈んだ空気が漂っていた。豪奢な宮殿に響くのは、王国の改名をめぐる議論と、怒りに震える民衆の声。広場では、「アビリア王国」の名を守ろうとする人々が集まり、伝統を失うことへの不安と反発が渦巻いていた。
「アビリア王国から改名するなんて反対だ!」
「伝統や文化も変えるつもりなのか!」
民衆から猛抗議を受けることになる。
反発の声が高まる中、それに対してグローリアスは、重々しい声でこう答えた。
「この国は王国という枠から抜け、帝国にならなければいけない!」
その言葉は、まるで国全体に響き渡る鐘の音のように重く、決然としたものであった。最初はざわめき、次第に静まり返った。
「国名はグロリア帝国、そして首都はカースと定める」
「私はこの日、グロリア帝国初代皇帝として即位する」
彼の言葉が意味するのは、単なる名前の変更ではない。国の未来そのものが大きく変わる瞬間であり、アビリア王国はこの時、歴史的な一歩を踏み出そうとしていた。
グローリアスの視線は遠くを見つめ、その先には「グロリア帝国」として世界の頂点に立つ未来が描かれていた。
~現在~
「でも、そのグロリア帝国って、今は存在しないんだよね?」
「そうだ。グロリア帝国は自らの過ちで滅びたのだ」
年老いた男は静かにそう語った。
「全盛期には、一国が世界の三分の一を支配していたなんて、信じられるか? だが、その繁栄の影には欲望と争いが渦巻いていた。皮肉なことに、繁栄の中で帝国は自ら滅びへの道を歩んでいたんだよ」
彼は一瞬、遠く過去を見つめるような仕草をした後、続ける。
「内部分裂、争い、そして他国の侵攻が、帝国を崩壊へと導いた。歴史に学ばなければ、同じ過ちを繰り返すだけだ」
静寂が辺りを包む中、彼の言葉が重く響く。
「それでも、人は忘れてしまうものなんだよ」と年老いた男は小さくため息をついた。
「繁栄の記憶だけが語り継がれ、その背後にあった失敗や犠牲は、やがて風化していく。人間の欲望は、時を超えても変わらない。力を持つ者はいつだって、もっと多くを求めるんだ」
「じゃあ、また同じことが起こるってこと?」と、男の子が戸惑いながら問いかける。
年老いた男は目を閉じ、しばらく黙り込んだ。ゆっくりと口を開くと、その声には深い悲しみが滲んでいた。
「そうかもしれない。だが、私たちには選ぶことができる。どの道を進むのか、どんな未来を築くのか。歴史を繰り返すのは避けられないかもしれないが、それを変えるのもまた人の意志なのだ」
しばらくの間、全員が沈黙していた。
「いつか、再びグロリア帝国のような国が現れると思う?」と、男の子の声が低く響いた。
年老いた男は微かに笑った。
「帝国の形は変わっても、同じようなものは何度でも現れるだろうさ。ただ、それが栄えるか、滅びるかは――その時代の人々がどう向き合うかにかかっているんだよ」
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