第37話Hunter/Misery
“There the peace, there the chaos.”
呪いのようだが、呪いでもないとは言え、妙に呪いとも言える。灰となるのが確かに呪いであるものの、実は呪われなかった。空から麗しく登場する存在者は、呪いをかけたこともなく、ただ恩恵を奪い取り、信者であるものにそれを配る。
神である存在者は常に哀れな生き物より上のもの。そのため、勢力の領域にある限り、神が生き物の運命を思い通りに変えられるのだ。
生き物である限り、神を超える術がない、その神が賢くある限り。今が現れるものの出来事から見れば、今度の神が愚かなものじゃないと、はみ出し者がそう思う。
神は崇拝され過ぎるものだ。何の資格もないにも拘らず、絶えずに信者が時代を渡って必ずある。その故に、奴らは腐敗してしまったもの同然だ。
腐敗したから、何もかも見下ろす、四六時中誇らしくそう思い続けている。いつ終わるか、今まで殺されたものが沢山あっても、まだ分からなさそうだ。そのために、俺がここに立ち、奴らの目を覚めさせるように。
生き物のままでは、神が倒されない。奴らが未だに知らないことが一つ、生き物を死滅できるその白い明かりが全然効かなかったもの。何故なら、当然なことだろう。
恩恵神は美の女神とも呼べる。懐かしい暖かさを利用し、奴は慰めを苦しめる人々に与えている。甘い人々だ。それが偽物だけだと、まだ気づいていない。
それは、気づきたくないから。恐らく、真実はそのものである。ならば、恩恵神が生き物にとってそんなに愛しくなるとは、可笑しく怪しくもないだろう。
奴の綺麗な姿、生き物に見えるその姿が地面に踏み始めたら、人々の顔がもっと安閑な表情を見せていく。同時に、数が極めて増えていくだけ。
少しは奴らを、その司祭も、笑わせている。奴らが見えているのは喜び、そして異端者とされる俺の敗北に限られている。洗脳された頭で、どんな生き物でもただ化け物になるだろう。率直に言って、神の最低な玩具だ。
笑い尽くさせるつもりだったが、笑いが止まらない。とんでもなく最低な生き物だ。今感じた喜びが現実を向かわせれば、どうなるだろうかな?
白い明かりが強く纏いついているから、まだ疑似な慰めに閉じ込まれている。ともかく、その幻覚がまだ続いていても、身体が元に戻ったら、恩恵神の元へ。
今、奴が考えていることは確かにそれである。何故、幸運を失うはずの俺がもう一度それを取り戻し、その上で何故まだ動けるようになれる。そんな馬鹿なことを自問自答するものだ、あいつは。
様々な神と会ってきたのに、結局考え方が何も異なっていない。それがつまらなくなるだけだ。幸いで、俺の仕事が簡単になれる。
奴と戦い、色々と気づいてきた。やはり、一つだけでもせめて別の神には面白い特性があるはず、奴らの任務以外は。パターンを見たことがあっても、これは少しでも面白い。
纏いつく白い明かりが、疑似の恵みだけではなく、その明かりに纏われるものが増えれば増えるほど、奴が強くなる。そして、信者がまだいる限り、奴は死亡しない。
確かに、信者から精気を奪い続けるから、強くなっていたが、まだ匹敵できていない。残念ながら、奴はまだ俺を生き物として判断している。
数え切れない衝撃を直接に与えるのは、その纏いつく明かりが弱くなるため。半分ぐらい、目を覚めさせたが、結局明かりが纏い返す。
それでも、短い時間ではそう続ける。明かりに纏われると纏われない時、その双極性感情が何よりも、この戦いを面白くさせるものだ。
だからこそ、哀れな生き物だ。赤子の手を捻るよう、そういうのがこの状況を説明できる慣用句だ。
煩いものを普通に殺すだが、今回だけが許す。
知る限りには、恩恵神が昔からもういなくなるはず。死滅したとされたが、それはやはり違う。半分ぐらいは正しかったが、大事なことが見逃させられた。今、恩恵神から残るものがただ奴の欠片だけ、生きても死んでもしない。
あの司祭に奴の残る意志が存在している。どう出会えたのか、多分偶然なものだ。あの司祭が最初から恩恵神に陶酔しているらしいと思うと、こんな理由だ。
奴の見える“身体”を破壊しようとしても、死滅はしないと知って、この戦いを態と延長していた。そうして少し楽しめたと思うが、結局つまらなかった。
驚かせた司祭、奴の顔は全てを語った。この手が心臓を貫いたら、纏いついた白い明かりが一斉に消える。
恩恵神の死滅より、残り明かりが司祭の身体の元に戻っているが、死体の物体がそれに耐えられない。苦しめるだけ、その果ては遣る瀬無く死ぬ。
人々に混んでいるこの街、聞こえるのは絶望に訪れる人々の鳴き声である。晴れやかな景色が今消えて、残酷な現実がもう一度戻る。
恩恵があれば、それを揺さぶるためにものもある。数え切れないが、その一つは俺の心臓に残る。あれは混沌というものだ。
現実はそのものだ、人間よ。平和が何れ来るとは思わない方がいい。確かに、この心臓は混沌神のもの。だが、その意志はまだ俺のものだ。
前に登場した恩恵神の亡骸を貪り、半分の頭だけを地面に。今日も死人が別の色を人々に見せた。幕を閉じるよう、テイネが誇らしく一礼して、絶望に陥る客に。
“Dream is the whereabouts of freedom.”
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