第33話Throne/Demise

“The king never knows how to crawl.”


 こんなこと、あり得ないはずだった……。


 運命の虜である生き物を超越して神となった私が敗者になるだけじゃなく、触れることもなかったはずだ。なのに、あの屑がどうか私を酷く打ち倒した。


 全てが理屈を反していたものだ。


 幾千の時を超えて、千の世界を征服し支配していた私が何者にでも負けられないのが当然だ。仮令、どんなに強いものであるとしても。仮令、相手が神であるとしても。


 低能者や下賤な生き物だけの星が私の死の場所になるのか?戯けの拷問だ。死すべき者でもない私がここで落ちれば、永遠の拷問になる。


 こんなはずがない。


 数え切れない星を破壊し、共に数え切れない命を。そんな無敵なるこの私が空にも近づけず、汚れる地面に止まっているまま、森の木々の間に身を隠しているものになる、こんな結末があるとは思えられないのだ。


 歩くこともできず、手があまり使えられない状態で、この体と顔から見えては、今の私が認識されがたいかもしれない。


 あの人間たちが何れ私の位置を見つけられるのか?今までの動きがどんな足跡を残してきたものか?人間たちがどう私を探しているものなのか?


 あんな馬鹿らしい思いが神である私にはないはずだ。こんな侮辱を受けた神など、耳に入ったこと一度もない。


 ——それとも、私が大事な歴史も忘れてしまった。


 私を倒した人間、一体何者だ?あんな無敵な力を持つ人間が多くも少なくともないはず。もしあったら、それがただ一人に限って、加えにその人間ならもう昔から永遠にいなくなった。


 倒された神の運命より残酷な運命はない。死することもできず、前にそうなった神が今はただ永遠の拷問を受け、思いのない抜け殻のように。


「蛆のように地面に足掻いている神を見るのはもう久しぶりだよ。」


 素晴らしく稀な娯楽だ。神に会えることも本当は難しくて、こんな状態に落ちたまでの神を見えるのが中々面白くて楽しいものだ。


 何故なら、無論で大抵の「神」のように、ストロンチウムがまだ自分が神であると思い込み、何者よりも超えたと愚かに信じている。


 滑稽なものならば、負けた後も少しだけ勝者の強さを認めながらも、本当はまだその前提を信じ続けている。飽きるほどのよくある話だ。


 体験がそれを分からせるにはまだ足りないものであったら、他の「神」に説明されれば、自分の思いがもっと驚かされている。恐怖に満ちているその表情、実は卑しい顔に過ぎないものだ。


 現実を拒み続けるもの、固定なる内心を守り続けながら、知識そのものをずっと紛らせている。その結果は他の立ち戻れない屑だ。


「神」だね?それはただ無意味な良い鳴りに過ぎなかった。最初からはずっとそうであり、知られない理由は「神」とされたものがずっと真実を拒んでいたから。


 この宇宙が一体どんなものであるのか、誰もが分かりやしない。この星がまだ存在していなかった時から生きてきた俺でさえも未だに知っていない。


 だが、一つだけは知っている。自然界と共に、天地有情をたらしめているものがある。「神」とされるものはその一つの支配権が与えられ、あるべき状態になれるように。そうでありながらも、その使命を従わずに、我儘にすることも許されている。


 秩序神の俺がこの広い宇宙の秩序を支配するものだ。その故に、それがあるべきものになれるように、今も正しい判断を、嫌悪を支配してきた嫌悪神への判断を。


「そんなに恥ずかしく感じる必要はないぞ。等しい神が止めを刺すのだから。」


 ストロンチウムの愚かさが異常に凄かったものだ。自分の潜在能力を知らないことに限らぬ、向ける敵のことを見極めることもしなかった。


 この時代の人間にとって、確かにこの戦いが初体験のようだが、歴史的にはこれがもう五回目だ。その上、どんな時代にも戦う人間は全て素人だ、あの一人以外。


 奇跡を起こすよう、一回目から四回目にも少しでも一つの神を倒せた。五回目、始まりからまだ数ヶ月で神を簡単に倒したものが既にいる。


 それだけで、人間の無限なる可能性がもう解られている。


 面白い生き物だ。それは理論だけじゃなく、どうか一人がさっきからここにいて、恐れずに真ん中に立ち、俺たちに囲まれるところに。


 マレットの髪型、紫紺のコートを着て、鞘を持ちながら。オマが感じられない死人、それだけでプロトンとニューロンが驚かせた。


 柔らかい言い方をして、その男が神への好奇心を持っているらしい。同時に、その男の裏顔を見つけようとしている。


 限られる時間、故にその会話がただ一発の飲み干しのようだ。人気な人物でありながら、謎だらけの人間だ。地球上に動かせる歌を弾いているあの死人は桜井元春である。


「消えることもなく、永遠でもなくこの世界。やがてそれを支配するのはどんなものなのか?それとも、どんなものにも支配されないべきか?何れ、私たちがそれを知る。」


 ……おのれ……おのれ、ヘリウム!!


 また会えたら、最初に私の怒りを味わうのがお前だ。


 ——あの姿!?灰色の髪の男、若くもなく老いてもなく、まさかあの男は……。


「神と会ったのはもう久しぶりだ。今回は何神だろうかな?」


 第一人目、いなくなったはずの死人の祖、兼ねって神の猟師、テイネだ……。


“Things becoming unexpected is the blame for the ignorant one.”

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る