第32話Unobtainable/Steep

“A goal that is so precious that is ended up becoming a burden.”


 無理に決まっているのに、無茶に攻撃するなんて、一体何のためだ?そんな理不尽のこと、お前らしいじゃないよ。


 一分もない戦いだった。そういう力の格差なら、お前はきっと気づいていたんでしょう。なのに、何故まだ戦ったの?何も言わずに、ただ進んで、正気でも失ったか?


 こう思っても、本当は言えないよ、声にならない思いだよ。怒ってなんかない、ただお前のことに心配しすぎたんだ。こんなリアクションなんて当たり前なのね?


 倒した後に、あの代行者はただ構わずに去り行った。最初から奴を撃たなかったら、奴はお前もこの街も襲わなかったようだ。


 あんなことを予想できなかったのは本当にお前らしいじゃないんだ。論理的な考え方じゃないよ、それは。だから、お前らしいじゃないって。


 もう星屑になって消えていたんだ、その偉大な姿が。今見えているのは、地面に倒れているお前と、破壊された街、死亡した人々だけだ。


 せいにするつもりはないけど、全てがお前のせいであった気がしている、そう思いたくないのに。悔しいんだ、ただ悔しすぎる。


 何も言わなかったから、私も何も知っていないのよ。知っているのはお前がどうかもう変わってきたことくらいだ。どこが変わったか、それは分からない。


 沢山のことを聞きたいんだ。だけど、無意識のお前はまだこの嘆き声を聞こえないみたいだ。これって、私のせいなのか、それを聞きたいんだ。


 お前の肌に零しているこの涙は感じられないのか?何も告げられないのか?ねえ、どうか答えて。これは私の罪ならば、答えてよ。


 無駄だ。無力だから、何も変えられない、全てが無駄だ。代行者が今段々遠くなり、滅ぼされたこの孤独な街を残された。


 前にあった強力な一撃がただ幸運にすぎなかった。幸運だから、再びやっている術もない。それだけで自分の弱さが確実となった。


 あれこれを変えたいと言い続けていたくせに、今できることはただここで黙って座って、沢山の殺されたものに囲まれながら。


 遠い夢を追いかけたいのに、目の前にいるもの一つも守れなかった。理想家そういうものもなく、ただの可哀想な空想家だ。


 お前もそう思っていたから負けたのか、月島?私の戯言に信じて、論理を捨てて、愚かに正しさを求めていたのか?


 きっとこんな結末が来るとは知っているのに、結局まだ不可能な何かを望んでいる。残る希望があるよう、そういう馬鹿な思いだ。


 償うことができれば、もう一度そのチャンスが欲しいんだ。仮令、暗闇に飲み込まれて、大切な何かを犠牲にするとしても。


 真っ黒は悪の色じゃないと思う。確かに、真っ黒は全てを隠して、真実ほどを埋めても、それこそがこの世界には要られているものだ。白と黒の世界じゃない、適当な色を採るべき世界、それは現実の世界だ。


 身も心も真っ黒に染めさせ、あれは必要とされるものであれば、今の姿が真っ黒に飲み込まれて代えられても、私は構わない。


 知らない世界で、別の思いで、五感全てが真っ黒に身任せる自分の目撃者となれ、真新しい自分が生れることを知らせる。


「あなたは落ちた自分の希望なのか?それとも真の絶望なのか?ずっと心の穴に潜んでいたものか?教えてよ、あなたのことを。」


 真っ黒な光芒が空を高く貫いて、雲を一切に切り裂いている。直後、高い空から落ちて、光を刺した代行者が高らかに絶叫している。


 止まらずに、代行者が光線を放たせずに、地面からの暗闇が奴を纏い、容赦なく襲撃して、奴が地面に落ちたまで。


 暗闇の源、「黒」を発している真っ白な巨大が捕食者である獣のように、高速に走って、壊れていく街を構わずに、代行者を残酷に細断している。


「契約もしたか、歩美?カンカミと共にある、ラムの他のタイプ。それはスイナと呼ばれている。」


“May the darkness be the new light.”

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