第19話Calamity/Protector

“Twisted ways are also the method.”


 死ぬのがまだできぬ、果たせない夢がまだあるからと、瀕死の時こそ思い続けている。一回目でもなく、この記憶は飽きるまで繰り返されている。


 僕のような人物全てが甘いとよく言われている。本当はそう信じているけど、仕方ない部分もあるから、このまま生き続けたいと決めた。


 哀れな僕を見た人はどんな見方を持っているだろう。聞き続けて、理解しようとしても、自分の見方とは全然一致していない。知られるものの、分かられないものだ。


 長く終わりなき人生という旅の中、何を蓄えてきて、何を得てきたのか、こんな時こそ邪魔している。あんな思いは急に自分に訪れ、不意に始まってしまった旅の理由を見つけたい思いだ。


 独りになるなんか望んでいない。誰もそう思う、僕もそう思っている。だけど、独りになって仕方ないなら、その道を択んで構わない、心が寂しくなっていても。


 反面に、自分が孤独なんかないと思う。きっと世界のどこかで、同じ夢や理想を持っている人がいる。いつか、あの人たちと繋げられる、無理でもそう信じ続けたいんだ。


 だから、昨日も今日も明日も僕はこの旅を続けている。何回も崩れたら、すぐに立ち向かう。一度失った前向きな思いは誰にでも奪わせられない。


 燃えているその思いと共に、意識を失った瞬間を覚えている。ぼんやりでありながら、もっと歩き続けたら、その記憶を取り戻している。


 あの時の男性と少女が誰なのかもまだ分からずに、知らなかった誰かに救われた。街の騒音が聞こえたら、僕は目を覚まして、見知らぬ部屋からゆっくりと出ていた。


 見知らぬ2人と知り合い1人、この旅は4人の出会いとなった。同じく死人であり、ヴァーゲの故に会った。そして、あの男性と少女のことを知っている人はいない。


 ぶつかる思いならどんな時間でも必ずある。目標は同じの一方、択ぶ道が違うことがよくある話。理性を分かり合いながらも、議論が終わりなく続けている。


 自分もよく思っているのは、ナイーブな考え方を持ち続けている自分が必ず滅びに遭うこと。傷だらけの体を連れて、オンファロスに向かう自分を待っている不運は何だろう?


 馬鹿な選択だと認めながらも、一度動かせた心は誰にでも止められない。それは変なことと思っているのは他人だけじゃない、僕にも迷いがまだ残っている。


「救ってくれて本当にありがとうございましたが、やらなきゃいけないことを置いているのもできない。」


 親切な人たち、また出会えたらいい、特に平和な時間が来れば。本当に現実的な願望じゃないけど、あんな希望を抱えてもいいから、まだ抱え続けたいんだ。


「いっぱいだ。どこにでもあるけど。全部倒れられるのかな……」


 避難はまだ途中なのに、勝手に戦い尽くすなんて全く信じられない。市民の命が危ういのに、無茶

苦茶に乱暴しているなんて、久恵は一体何を思っているんだ?


 ヴァーゲを倒す限り、使命が果たされると思うか?彼女なら、そう思っているのは当然だけど、冗談であればいい。沢山の人の命が落ちたら、この戦いが無意味に決まっている。


 だけど、もしそれは仕方なくあり、それは正しくあれば、あんな戦い方をしないと、負けてしまう可能性があれば、そうしているのもやむを得ないだろう。苦境の戦いだ。


「ゾーンハン?ここで何をしている?」


 滑稽だ、忙しそうで去っていたのに、今は負傷している人としてここへ戻っている。河嶋さんはこれに対して何を思っているかな?


 10体のヴァーゲの出現のため、僕がここへ戻った。どうしても、気になっているんだ。ヴァーゲの数が沢山あれば、不吉な合図と呼べてもいい。


 月島さんにはまだ教えられないはず、その不吉な合図のこと。村山さんに聞いてみないと、僕も何も知っていないはず。


「ヴァーゲはただ神の欠片に汚染されて怪獣となった人間だ。ラムであるカンカミには匹敵してない。一方で、ヴァーゲと違い、直接“神”に送られた怪獣は奴らの代理人、強敵なものだ。種族は知らないが、俺なら奴らを代行者と呼ぶ。」


 短い通話時間でその情報を受けたら、段々ヴァーゲと代行者のことを気にしている。今なら、僕の力はまだ代行者を倒せないと凹んでいる。


 なら、月島さんの力ならできるか、それも気になっている。確実に代行者を倒したことがあるのはカンカミ・エンライテンドとあの男のカンカミだった。


 ラムの数は少なすぎる、絶滅危惧種みたいだ。代行者が今後、次々と現れているから、数が増やさないと危険だ。


「大きい~~!!何だろう、今は!?」


 晴れている空なのに、真っ赤な地面。喜びに満ちている騒がしさもなく、全てはただ悲惨な絶叫。悶える心の後、体を永遠に失った。空に近づいたら、地面も見えなくなる。


 守護者の名称を持つものは、殺戮の原因となれば、それはどう呼べばいいだろう?敵の痛みの声だけが聞こえ、救いを求めている叫びも聞こえない。


 行けるか行けないか分からないけど、試してみれば分かる。体がすごく痛くても、何もしない方がマシだ。


「……ゾーンハン、あんたは一体誰だ?」


 10体のヴァーゲを倒し方は山ほどある。だから、人を犠牲にする必要もない。特に、カンカミの強さなら、犠牲なんかあるわけがない。


「——何をしてるんだ!?馬鹿が!人を皆殺しするつもりか!?」


 10体のヴァーゲが一瞬で退治されたら、名前を知らないカンカミがカンカミ・カラミティの胴体を強く殴っている。久恵に怒っているだろう、ゾーンハンは。


 正直、私もそう思っている。地面が血色している、ビルも、見える何もかも。存在者はもう出血で死んでいた。残る人なら、避難できたものだけ。


 確実にこれは戦争の背景。常態化?死んでもさせたくない。この力があるから、人はみんなこんな背景を二度と見えないように望んでいる。現実は?正反対だ。


「ふざけんなよ!人が死んでゆくのに、何故まだ続いてたんだ!?ちくしょう!もともと人間じゃないあんただって、何も分からないだろう!?クソ……」


 彼女なら、今無感情な顔がしているだろう。どう考えても、もともと感情なんて彼女が持っていない。ムカつく、ラムの数が少ないのに、その力を持つ死人がいるなら、こんなものをしている奴か?残酷だな。


 あの人の言ったことには何の意味がありますか?何故怒っていますか?聞くと、何故痛くなりますか?私、過ちなのですか?


 失敗だ、失敗した人造死人だ。それは誰でもなく、僕の失敗だった。ごめん、村山さん、あんな化け物を作り出したことで。全てが僕のせいだった……。


 今なら、全てがもう冷静になっているようだ。避難された市民のことで、街で残られるのは4人しかいない。きっと、ゾーンハンはもう落ち着いたら、4人もここから離れる。


「もういいよ、月島さん。もう疲れているから、これを後にしても……」


「——危ない!!」


 高らかな咆哮と共に、炎色の光線が一瞬で放たれて、真っ白なカンカミに当たったら、その姿が星屑になって消えた。震動が強く感じられ、空に見上げたら、翼を羽ばたいている真っ黒な獣が大きく見えている。


 この感じは一体何ですか?ヴァーゲという敵、それを普通と同じく簡単で倒せるものです。ならば、何故私の体が動けないのですか?


「……逃げろ、月島さん。あれはヴァーゲじゃない、代行者だ。僕等には勝ってるチャンスなんかないんだ……」


 代行者?何だそれは?知らないものばかり、最近耳にしてきたけど、どちらでも意味が分からない。穏やかな日々だったのに、なんで急にこうなったの?


「ねえ、ねえ、この人助けてもいいのか?そして、なんかあの怪獣何かをしようとしてるみたいけど、何もしないの?」


 残酷な怪獣、知らないものの情報、殺戮の風景、死んでいく人々、倒されている味方、何もしていない味方、邪魔している友人。


「——煩い!!私ってまだ何も知らないわーー!!!!」


 雲を切り分けるほどの高さ、光速のほどの速さ、光が澄まさない真っ黒。代行者の悲鳴が聞こえたら、その「黒」が代行者を包んでいる。当てられないように、姿を消した。


 間違いじゃないのか?村山さんの言ったことは本当なのか?ヴァーゲと代行者はラムの力を持つ死人だけに倒されると、村山さんが言ったんだ。つまり、彼女は……。


「河嶋さん、あんたまさか……。」


“Things always happen quickly at the same time.”

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