死人対抗

第13話Serenity/Enigmatic

“A true beauty one had overlooked before.”


 定期的に、時間通りの眠りが最近できるようになってきた。だとしても、今と戦っている敵が実は極めて強まっていく。それでも、最近の風の行方が何だかもっと柔らかく方である。


 今日もいつも通りに、対峙する時が相次いでいても、疲労など少しでも感じていない。悩みなどのない日々に、楽な生き方で時間を過ごせるもの。


 嫌いなわけじゃないけど、まだ何かが正しくないと思っている。好きだと言えば、好きだけど、まだこの幸福を簡単に受け入れられないだけ。後少しではすぐに慣れるはず。


 こんなに安閑な心を持っているのに、何故自分だけが不満しているみたいだ?幸せな現実には相応しくないものなのか?ずっと願っていたのに。


 例え離れていても、組んでいなくても、全然気になっていない。みんなが別れているから既に数ヶ月、連中はそれぞれの生きる意味を見つけに行きそうだ。


 坂本は今も助教とし活躍している。そして、ナムリョンはまだ独行の途中、この戦いの全てを把握するように行動すると言って、すぐに戻ると約束した。


 紫織と二人で日々を過ごしている。時々、アシュリーがここに来て、その後すぐに去る。アシュリーは来るのが対峙の時だけ、一人で戦っている私を援助してくれる。


 強力な力を持っているくせに、紫織は全然地上殴殺ウライケに参加していない。自分がそれを願望していない同時に、正直私も紫織を参加させない方がいいと思っている。


 参加しなくても、ちっとも変わりなんかないだろう。しかも、今の紫織は不安定なところだ。助けるどころか、足止めになってしまうに決まっている。


 そもそも、死人である故に地上殴殺に参加する義務などないはずと思う。死人は人間と同じ、戦えるものがいるなら、戦えないものもいる。そして、生きる道を自分で選べる権利を持っているもの。それはあるべき現実だ。


 確かに、参加したら報酬がある。死人になって、屍者を切り倒すのは仕事の一つ。私だけじゃなく、他も死人協会から給与をもらっている。だが、人間と同じ、仕事を拒む権利もある。義務ならば徴兵制度とは同じだ。


 それはそうと、沢山の屍者を切り倒してきたから、贅沢な生活ができる。だけど、そんなに使わないから、大抵紫織が遊びで尽くしている。


 意外と、外で遊ぶタイプだ。沢山の場所へ行ってみて、一日中色んなことを試している。毎日が休日のように、嬉しすぎて、他の場所に行って屍者と対峙する私を気付かないこともよくある話。


 紫織に嫉妬している。地上殴殺の行方が良好してきたこの時、幸せそうな紫織を見る度に、正直羨ましいと感じている。


 それが本当でありながら、ありのままである紫織を見たら、何故かその幸せが必ず自分に反射されるようである。例え日々が辛くても、全ての痛みが一斉に溶けていく。


 そのままでいられるように願っている。じゃなかったら、前のようにまた苦しんでいるだろう。その上に、最初から共にする理由は縛り付ける苦しみから解き放つためであった。できないと、私が許せないだろう。


 子供みたいに、全然私から離れたくない。少し距離があったら、絶対に怖がる。今の紫織は私に依存しすぎるかな?


 家に戻ったら、二人きりの場所にいたら、紫織はもっと子供っぽいになる。面倒な家事に手伝わないに限らぬ、一人で眠るのもできない。


 それなのに、日々が経つほどに、段々紫織から離れたくなくなる。愛情と言うのか?知らない、あんなことが。こうなってきた理由なんかまだ分かっていないんだ。


 今宵、死人協会に報告した後、午後10時に寝る。紫織に抱かれながら、またいい夢を見る。それはこの日々がこのままで続いている夢である。


 次の日、第三次世界大戦記念碑に訪ねる予定だ。いつも通り、紫織の興味はあまり読めないものだから、分からないままに何もかも試し尽くすようである。


 今回、口喧嘩の後、紫織を一人で行かせることができた。もちろん、私は遠くから見守っているけど、やっぱり時々一人でいさせる方がいいんだ。


 ——そして、感じられた気配が異常に変わる。


 寒い感覚と、青色の風景。人並が騒いでも全てが静かに聞こえている。風が止まりそうな時には、向こう側に謎の女の姿が見えている。


「理念」と彼女をじっと見たら、それが急に頭に浮かぶ。何故だろう?彼女に伝えられるものなのか?あの女は一体誰?


 私を睨んでいるのか?何かを伝えに来たか?自問自答しながら、ただ彼女を睨んでいる。本物なのか?それとも幻想?それじゃ分からない。真ん中にいるのに、人々が彼女の存在を気付かなさそうだ。紫紺の髪の女に確かめられることは彼女が死人であること。


「河嶋歩美さんですか?」


「——うわああ!!?」


 謎の女に集中しすぎて、後ろから自分の名前を呼んだ人の声に驚かせてしまった。あれは見知らぬ女の声である。そして、その時にも謎の女の姿が消えた。


 丁寧語だけで話し、会社員のような女の名前は月島久恵であり、村山誠志郎に命令されてここに来たと言った。でも、その目標はまだ言ってくれない。


「……」


 微妙だ。彼女は私の言うことに短すぎる言葉で返答しているだけ。こんな人間はいるのか?確かに、死人であるけど、死人になってもこんな不器用なものがいるのか?


「ねえ、もっと口に出してよ。これじゃあんたがここいるだって意味がなくなるだろう。」


「——ああ、泥棒猫だ!!」


 また一つの問題が最低な時に起こる。急にこの二人を合わせるなんて絶対にこうなるのだ。本当に面倒だ。


「あんたって、歩美にとって何ものだ?友達?親友?まさか、恋人?嬉しいね、歩美の彼女になるなんて。うらやましいな。」


 紫織がやること、その口の悪い言い方も、簡単に予想できるもの。こうなったら、そうさせておけばいい。止めようとしても、全然聞いてくれないだろう。それよりも、月島は無口のままでできるなんて本当に偉すぎる。


「——あれは!!?」


 地が震える時、すぐに思ったことが正確にある。穏やかな晴れる日に、一体のヴァーゲが突然姿を川の中から現した。


 馬鹿な紫織は、それから逃げずに、ただヴァーゲをじっと見ている。後で面倒になるから、紫織を現場から連れるつもりだ……。


 月島は冷静のまま、ヴァーゲを見ている。その態度の意味を分からない私が、漂う赤色の星屑を気付かずに、偉大なことを目撃する。


 知ることのない巨大が現れ、体が青と赤と紫である。刃と盾で装備され、一体のヴァーゲと対峙する。それは真新しいカンカミ、月島に操縦されるカンカミである。


“The mystery hidden by another mystery.”

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