第3話 フランソアラ視点


 私はフランソアラ。

 ゲータ・ニィガ王国王国騎士団に所属する、16歳の女だ。


 私は平民の家の出身だ。

 元々は農家だったのだが、両親が魔物に食われてしまい、死んでしまい孤児になった。


 私には幼い病弱の妹がいる。

 彼女が生き続けるためには、高い薬を定期的に飲ませ続けないといけなかった。


 運よく、私に才能を見出してくれた騎士団長に拾われ、王国騎士団に入ることができた。

 私は必死になって努力した。剣をふり、技を極め、魔物を倒しまくった。


 薬のお金を稼ぐためでもあったけど、私には剣の才能があると言ってくれた、優しい騎士団長さんの恩返しもしたかったのだ。だから頑張った。


 ……しかし。

 あるひ、恩人たる騎士団長が、地方へ左遷されてしまった。

 理由は、新しい騎士団長が来たからだ。


 新しい騎士団長は、貴族の子息だった。 

 騎士団には貴族の次男や三男といった、家を継げなかった男の人たちも多く所属してる。


 新しい団長は、そういった貴族の人間だけで周りを固め、露骨に、貴族びいきをするようになった。


 それから、平民の騎士達がいくらがんばっても、その努力を認めてくれなくなった。

 それどころか、平民の騎士たちの手柄を全て横取りまでしてきた。


 女で、しかも平民の私への風当たりは特に強かった。

 でも私は騎士団を辞めようとは思わなかった。


 辞めてしまったら、妹の薬代が稼げなくなる。それに、騎士団に入れてくれた団長に、申し訳が立たない。だから、騎士団を辞められなかった。


 私は執拗な嫌がらせを受けながらも、騎士として必死に働いたし、努力もした。……報われないと、わかっていても。


 ある日、新しい団長から、仕事を割り振られた。

 さる有名な貴族の長男に、剣術を指南するという内容のものだった。


 本来なら新しい団長がやるべき仕事なのだが、自分には他にもやるべきことがあるからと、私におはちが回ってきた。

 ……ノアール家。


 黒い噂の絶えない貴族だと聞く。

 なんでも、世界に混沌を招いた最悪の闇の賢者、ノアールを祖にもつだとか。


 そんな家の息子に剣を教えるのが私の仕事。

 ……どう考えても嫌がらせでしかなかった。


 ノアール家長男、マルス・ノアールは、他の貴族と同様に平民を見下す、貴族らしい貴族だった。

 平民の女の言うことなんて聞けるか、といって私の指導を受けてはくれなかった。


 一度も、訓練に参加してくれなかった。一度もである。

 だが、意外なことに、私に対して、彼は嫌がらせを行なってこなかった。単に訓練をボイコットしてるだけだったのだ。


 思ったよりも、ノアール家で嫌な思いはしなかったと思う。

 お金も結構な額がもらえた。だから、私はこの仕事を続けた。


 私のマルス坊ちゃんへの評価は、平民を見下す貴族らしい貴族、以上でも以外でもなかった。

 まあ確かに悪い噂は耳にするけど、実害を受けたわけでもない。


 訓練をボイコットされるけど、それは彼が魔法使いの家に生まれたからだろう。剣に興味がないのは仕方ないことだ。


 ……と思っていた、ある日のこと。

 今日もどうせ訓練をボイコットされるのだろうなと思っていたのだが、マルスぼっちゃまが、自ら剣を教えてくれと頭を下げてきたのだ!


 あ、ありえない……。

 貴族の家に生まれたことに、誇りを持っている、あのマルスぼっちゃまが平民であり、しかも女である私に頭を!?


 どうしてしまったんだろうか。

 頭でも打ってしまったのだろうか、と私はうっかり口をこぼしてしまった。


 貴族に対して、大変ん失礼な口をきいてしまった!

 クビは免れない、そう思った。けど、クビにならなかった。


 マルスぼっちゃまは、私の失言を許してくれたのだ。それだけじゃない、腹を立てず、なおも剣を教えてくれと言ってきたのである!


 これが新しい団長や、他の貴族なら、ボコボコにされたうえ、減給もやむなし。下手したら首を刎ねられてもおかしくないような真似をしてしまったというのに。

 マルスぼっちゃまは、許してくれたのだ。


 その後、マルスぼっちゃまは真面目に訓練をなされていた。

 それどころか、打ち込み稽古の際に、私の剣を完全に見切ってみせたのだ。


 今まで彼が剣を握ってる姿を一度も見たことなかった。

 だのに、一度握って、少し手本を見せただけで、この成長。


 すごい……。こんなに才能のある人が、この世にいるなんて。


「マルスぼっちゃま……どうして、こんなに才能があるのに……今までどうしてサボってきたんだろ……あ! しまった! またうっかり」


「まあ、そうだよな……」


 マルスぼっちゃまは私の失言にたいして、怒ることなく、自分の非を認めてらっしゃった!

 すごい……貴族の人って、絶対に自分の間違いを認めないのに。


「フランソアラ。これからも、ビシバシ鍛えてくれないか?」

「! わ、私でよいのですか?」


「ああ。むしろ、君じゃなきゃだめなんだ」


 どきっ!

 と、心臓が高鳴った。うう、なんで……?

 なんだか告白みたいだったから、かなぁ。ダメだ! 相手は貴族、こちらは平民!


 分をわきまえないと!


「ど、どうして私じゃなくちゃ、ダメなのですか?」

「どうしてってそりゃ……俺のなかで、君の剣が一番だからな」


 !?!?!??!?!??!?!?

 そんな……。


 マルスぼっちゃまが生きてきた【15年間】のなかで、私の剣が、一番……だって……


「う、ううぅううううううう!」

「お、おい! 泣くな! なぜ泣いてる!?」

「ずびばぜん……うれじぐっでぇ」


 マルスぼっちゃまは15歳。15年も生きてて、しかも貴族だ。

 きっとたくさんの剣士を見てきたのだろう。


 そんな中で、私が、平民で、しかも女。見下されて当然の、剣を、1番だと言ってくれた!

 貴族らしい貴族である、マルスぼっちゃまに、そう言ってもらえたことがすごくすごく、嬉しかった。


 前の団長以外で、私の剣を認めてくれた人は、いなかった。

 貴族で、私の剣を認めてくれたのは、彼だけだった。


「大袈裟だなおまえ。ほら」


 そう言って、マルスぼっちゃまがハンカチを渡してきてくれた。

 や、優しい……。


 私、間違っていたな。

 マルスぼっちゃんは、すごく良い人だった。


 確かに私への風当たりは強かったけど、でもこうして接してみて、私が最初に抱いていた印象は間違いだったと気付かされた。

 本当のマルスぼっちゃまは、ううん、マルス様は、とても良い人だ。


「フランソアラ。おまえ、確か病気の妹がいるんだったな」

「は、はい」

「よし。今日からおまえ、ここに住め。妹も連れてきていいぞ」

「!? よ、よろしいのですか!?」


 妹は今、宿の横にある馬小屋を借りて、そこで住んでいる。

 正直、かなり劣悪な環境だった。


 最初は騎士団の寮に私と一緒に住んでいたんだけど、新団長になってから、関係ないものを中に入れるなと追い出されてしまったのである。


「こ、ここに二人で住んで良いのですか?」

「ああ。その代わり、訓練の時間を増やしてくれないか?」

「も、もちろんいいです!」


 妹がより良い環境で生活できるのであれば、訓練時間が増えるくらい、どうってことない!


「マルス様……どうしてそこまでしてくださるのですか?」

「そりゃおまえが大事だからだよ」


 だ、大事!?

 わ、私のことが、大事!? え、え、えー!?


 そんな、大事に、特別に思ってくれてただなんて!


「上級スキルもちって少ないからな。貴重なラーニング先だし、失うわけにはいかないんだ」


 失うわけにはいかない!?

 前半何言ってるのかわからなかったけど、後半確かに言った! 失いたくないって!


 え、え、えー!

 そんなに優しくされたら好きになっちゃうよぅ♡


 だめよフランソアラ。相手はお貴族様。

 天井人なんだ。私なんかが好きになっちゃいけない相手なんだから。


「フランソアラ。頼む。俺んちに来てくれ。お前が必要なんだ」


 はわわわわわ!

 これって、もう実質プロポーズじゃないかっ?

 

 え、え、えー!

 そんなぁ〜。貴族からプロポーズされたらぁ、断れないじゃあないか〜。


「は、はい! ぜひ!」

「そうか。よかった。これからよろしくな」


 やっぱりこれプロポーズだぁ!

 そんな真剣な目で言われたら、惚れちゃうよー!


「はい! 末長く、よろしくお願いします!」


 ああ、ベリン、私の大事な妹よ。

 お姉ちゃん、好きな人ができちゃったよ。と思ったらプロポーズまでされちゃったよ!


 まずはお友達からーと思ったけど、私マルス様のことすきになっちゃったし、このままゴールインで全然オッケーだよ!

 マルス様は優しいから、ベリンにもきっと優しくしてくれるはずだよ!


「さっそく家に帰って荷物とってきます!」

「手伝うぞ」

「大丈夫です! マルス様のお手を煩わせるわけにはいきませんので! じゃ!」


 私は急いで妹の元へ向かうのだった!

 ああ、マルス様、優しい、しゅき♡


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【キャラ名鑑】

フランソアラ

16歳

人間

上級剣士


【原作設定】

エタファン主人公の剣の師匠であり、最初のヒロインとなるキャラクター。

エタファンスタート時には、妹を病気で失ってしまってる。

師匠ポジションでヒロイン、そして整った容姿から、ファン人気の高いハーレムメンバーの一人、だった。

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