12 精神世界での鍛錬
「訓練道具……?」
「ええ、精神系の魔法を鍛える道具です。物理攻撃系の魔法なら、強力な防御結界が張られた訓練場が必要になりますけど、精神系の場合は基本的に外界には影響を及ぼしませんからね。道具を使って自分の精神世界に入り込んで鍛錬……というのが一般的です」
言ったところで、キサラはハッとした顔になり、
「す、すみません、こんなこと、レイヴン様もご存じですよね! つい説明してしまって……」
「いや、分かりやすく教えてくれて感謝するよ」
――というか、全然知らない話だったから助かった。
「で、その『精神世界に入り込む』ための道具があるわけか」
「ええ、すぐにお使いになるなら、今から宝物庫に案内しますよ?」
「頼む」
「では、どうぞ――」
キサラが先導する。
俺は彼女についていき、やがて宝物庫にやって来た。
確か中には数千種類の魔道具が入ってるんだよな。
キサラがいなかったら、俺一人で必要な魔導具を探し当てるのはまず無理だろう。
「今、取ってきますね」
言って、キサラが一人で宝物庫内を進んでいく。
俺はそれを待っている。
数分してキサラが戻って来た。
「早いな……」
「私、宝物庫の魔道具はあらかた記憶していますので。種類も、それぞれの保管場所も」
照れたように説明するキサラ。
「すごいな。有能だ」
「い、いえ、そんな」
「いや、キサラにはいつも助けられてるよ」
俺は彼女をねぎらった。
実際、俺が快適に過ごせているのは、キサラをはじめとする使用人たちの尽力が大きいわけだからな。
こういう機会に礼を言っておきたい。
「そう言っていただけると、私もお仕えする甲斐があります。嬉しいです」
キサラがはにかんだ笑みを浮かべた。
狐耳がふるふる震えているのが可愛い。
「……これが魔導具か?」
俺はそこでキサラから受け取った魔導具に視線を移した。
円筒形の道具――懐中電灯によく似た形状だ。
「はい、自分自身に向けてからスイッチを押すと光が出て――」
「やっぱり懐中電灯みたいだな」
「カイチュウデントウ?」
キサラがキョトンとした。
ああ、こっちの世界にはないよな、懐中電灯。
「なんでもない。説明の続きを頼む」
俺はキサラを促した。
「はい。スイッチを押すと光が出て,その光に照らされると精神世界に入ることができるんです。一度の照射で十時間まで連続で入っていられます」
とキサラ。
「なるほど……よく分かった」
じゃあ、さっそく使ってみるか。
「俺は今からこいつを使う。使っている間の肉体はどうなるんだ?」
「眠ったような状態になります」
「じゃあ、寝室に移動してから使うよ。そうだな……明日の朝までに戻ってこなかったら、キサラが俺を起こしてくれ。外から精神世界を解除できるのか?」
「私がこの魔導具を操作すれば、いつでもレイヴン様は現実世界に戻ってこられますよ」
と、キサラ。
「じゃあ、明日の朝七時に――いつも通りの時間に起こしに来て、俺がまだ寝ていたら精神世界の解除を頼む」
「承知いたしました」
キサラが一礼した。
――というわけで、俺はキサラと別れ、寝室に移動した。
「さっそく精神世界に入るぞ……」
俺はキサラの説明通りに魔道具のスイッチを入れ、自分に向けて照らす。
魔道具から放射された光を感じた次の瞬間、
しゅいんっ。
俺は見知らぬ世界にいた。
「なんだ、ここは……?」
暗い荒野が続いている。
「これが俺の精神世界……?」
随分と殺風景で。
すさまじく荒涼とした雰囲気の場所だった。
「ほう? この世界を訪れる者がいたか」
誰かが歩いてくる。
「お前は――」
俺と同じ顔、姿。
レイヴン・ドラクセルその人が、現れた。
****
〇『魔族のモブ兵士に転生した俺は、ゲーム序盤の部隊全滅ルートを阻止するために限界を超えて努力する。やがて下級魔族でありながら魔王級すら超える最強魔族へと成長する。』
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