第2話

「あののこと、好きでしょう?」

 入学式が終わった帰りの車の中で、凜々花りりかは優樹に聞いた。

「……ど、どうしてそう思うの?」

「そんなに顔真っ赤にしてたら、誰でも気づくわよ」

 車を走らせながら、凜々花りりかしずくの顔を思い浮かべた。

 あの様子だと、しずくもきっと同じだ。

 淡い桃色に色づいた頬や耳、優樹のことを見つめる瞳がなによりもの証拠だ。


 ──一瞬、しずくを見た時、ふとある人物が頭をよぎったことを思い出した。

 ──“あの人”にどことなく、似ている。

 そう思ったが、すぐさま、そんな偶然あるわけないと思考をそらす。

「お似合いね」

 凜々花りりかが言うと、優樹は「なに言ってるの!」と珍しく声を張り上げた。



          ◇



 優樹は魅力的な男だ、と凜々花りりかは評している。

 優樹は幼い頃から穏やかで優しい性格だ。

 それに反して、端正でクールにも思える顔立ち。

 元々、凜々花に似た、ぱっちりとした目。だが、少し切れ長な目元や、涼やかな薄い唇、細身で両親ゆずりの長身は、口数の少ない性格も相まってか、どこかミステリアスな雰囲気を纏っている。

 本人が望めば、すぐにでも華々しく芸能界デビューできるだろう、と凜々花りりかは思う。

 それは決して親の欲目ではなく、長年、芸能界に身を置き、多種多様な華のある見目麗しい芸能人を見てきたからこそ分かるのだ。

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