第31話 封印の崩壊

 砦の中心にたどり着いた玲二たちは、そこにある祭壇がすでに異変に見舞われていることを確認した。かつての封印は、強力な魔法陣によって守られていたはずだったが、今やその力は薄れており、魔王の強大な力が漏れ出していた。


「この封印、もう限界が近い……!」


 セリーヌが魔法陣を調べながら、驚愕の表情を浮かべた。魔法陣の力が薄れ、すでに魔王の影響が砦全体に及んでいることは明らかだった。


「封印が崩壊する前に儀式を始めないと……でも、まだ完全に準備が整っていない……」


 焦りがセリーヌの表情に浮かび上がる。彼女は魔晶石を祭壇の中央に置き、封印を発動させるための魔法を唱え始めた。しかし、その瞬間、砦全体が大きく揺れ始めた。


「来るぞ……!」


 玲二が叫び、エリザも剣を構えた。砦の中央から黒い煙が噴き出し、強烈な魔力が溢れ出した。そして、その中心から巨大な魔物――魔王が姿を現した。


「これは……!」


 魔王の姿は、漆黒の鎧に包まれ、全身から凄まじい魔力が放たれていた。その圧倒的な存在感は、玲二たちの周囲の空気を一瞬にして変えた。魔王の赤い瞳は、玲二たちを見下ろし、口元に不敵な笑みを浮かべていた。


「我が封印を破った愚か者どもよ……ここで終わりを迎えるがよい」


 その声は低く響き、砦全体に広がった。玲二たちはその言葉に戦慄を感じながらも、退くことなく立ち向かう決意を固めた。


「このままでは、魔王が完全に目覚める。何とかして時間を稼がないと!」


 玲二は剣を構え、仲間たちに声をかけた。エリザもすぐに剣を抜き、セリーヌは魔法の杖を握りしめて呪文の準備を始めた。彼らは魔王との戦いを避けられないものとして受け入れ、攻撃の機会を伺った。


「行くぞ!」


 玲二は叫び、魔王に向かって突進した。彼の剣は光を纏い、魔王に向かって振り下ろされた。しかし、魔王は軽々とその攻撃を受け止め、片手で玲二を弾き飛ばした。


「くっ……強い……!」


 玲二は何とか体勢を立て直し、再び魔王に向かって攻撃を仕掛けた。エリザも後に続き、魔王に連携攻撃を繰り出したが、そのすべてが簡単に防がれてしまう。


「無駄だ。お前たちの力では、我に届かぬ」


 魔王は不敵な笑みを浮かべながら、強力な魔法を放った。その攻撃は玲二たちを吹き飛ばし、砦の壁に叩きつけた。


「ぐっ……!」


 玲二は痛みを感じながらも立ち上がったが、魔王の力は圧倒的だった。彼らが手にした力でも、この敵に対抗するには不十分だった。


「まだだ……まだ終わらせない!」


 玲二は再び立ち上がり、魔王に向かって剣を構えた。エリザも負けじと剣を振り上げ、セリーヌは魔晶石を使って封印を発動させるための準備を続けていた。

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