第16話 計画の開始

 数日後、玲二たちが準備を終える頃、ついに三田村たちが動き出した。彼らは偽の情報に引き寄せられ、遺物が隠されているという場所へ向かうことに決めた。彼らはまだ、自分たちが玲二に罠を仕掛けられていることに気づいていない。


「よし、遺物を手に入れて、さらに強大な力を手にするぞ」


 三田村は自信満々に仲間たちに言った。彼らは自分たちがすでにこの世界で力を手にしていることに満足し、さらにその力を増すことしか考えていなかった。


 その夜、三田村たちは街の郊外に向けて出発した。玲二たちはその後を静かに追い、セリーヌの結界が張られた場所へと彼らを誘導した。


「さあ、あとは奴らが罠にかかるのを待つだけだ」


 玲二は冷静に呟き、エリザとセリーヌに目配せをした。彼らは周囲の気配を察知しつつ、慎重に三田村たちが到着するのを待った。


 三田村たちが指定された場所に到着すると、周囲は静まり返っていた。彼らは手に入るはずの遺物を探し始めたが、何も見つからないことに焦り始めた。


「どうなってるんだ? 遺物がここにあるはずじゃないのか?」


 三田村がいら立ち、周囲を見回したその瞬間、セリーヌの魔法が発動した。結界が一気に閉じ込め、彼らを包み込んだ。


「な、なんだこれは!?」


 三田村たちは状況が飲み込めず、必死にもがいたが、すでに遅かった。結界内で彼らの力は封じられ、逃げることができない状態に陥っていた。


 その時、玲二が静かに姿を現した。彼の目は冷たく、かつての仲間たちを見据えていた。


「よう、三田村……久しぶりだな」


 三田村はその声に驚き、振り返った。そこにはかつて自分が裏切った男――玲二が立っていた。三田村の顔には驚愕と恐怖が広がっていた。


「お前……死んだはずじゃ……!」


 玲二は冷笑を浮かべた。


「死んだ? そう思っていたのはお前たちだけだ」


 三田村たちは恐怖で体を震わせた。彼らは異世界で勇者として力を手に入れたが、目の前にいる玲二が、彼らを圧倒する存在であることを瞬時に悟った。


「罠だ……! 俺たちは……」


 三田村の焦りを無視して、玲二は冷静に続けた。


「そうだ、これはお前らを罠にかけるための計画だ。今度はお前たちが俺に追い詰められる番だ」

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