第7話 戦いと絆の深まり

 夜が更け、月が輝く中、玲二とエリザは村の外れにある森の中でオーガを待ち構えていた。空気は静まり返り、緊張感が漂う。


「来る……!」


 エリザが鋭い声でそう言った瞬間、森の奥から巨大な影が現れた。オーガはまさに恐ろしい姿をしていた。身長は4メートルを超え、筋肉質な体に大きな棍棒を振り回している。目は血走り、凶暴な気配が漂っていた。


「玲二、気をつけろ! あれは並の戦士では手に負えない!」


 エリザの警告にも関わらず、玲二は冷静に前へと進み出た。


「俺がやる。エリザは支援に回ってくれ」


 玲二は自信に満ちた声でそう言い放ち、オーガに向かって拳を握りしめた。彼の中に再び神から授かった力が沸き上がるのを感じた。全身に力がみなぎり、オーガに向かって一気に駆け出した。


 オーガが大きな棍棒を振り下ろすが、玲二は軽々とそれをかわし、そのまま拳を繰り出した。


「はあっ!」


 玲二の拳がオーガの腹部に命中した瞬間、衝撃波が周囲に広がり、地面が揺れ動いた。オーガは一瞬ひるみ、足元が揺らぐ。しかし、すぐに反撃に転じ、玲二に向かって再び棍棒を振り下ろした。


「遅い!」


 玲二は笑みを浮かべながら、再びオーガの攻撃をかわし、そのまま強烈な一撃を繰り出した。彼の拳はまるで鉄の塊のように重く、オーガの胸を貫いた。


「ぐああああっ!」


 オーガは苦しげな叫びを上げ、ついにその巨体が崩れ落ちた。地面に倒れ込んだオーガの姿を見て、エリザは驚きの表情を浮かべながら駆け寄ってきた。


「す、すごい……! 本当に君の力は並外れている」


 エリザは玲二に向かって微笑みを浮かべ、その表情には信頼と尊敬の念が込められていた。玲二は汗を拭いながら、軽く笑った。


「俺はまだこの力を使いこなせていないかもしれないが……これで少しは試すことができた」


 エリザは頷き、玲二に感謝の意を伝えた。


「ありがとう、玲二。君のおかげで村も救われた。君は本当に、この世界でも特別な存在だ」


 その言葉に、玲二は少し照れくさそうに微笑んだ。エリザの眼差しはこれまで以上に柔らかく、彼女は玲二に対して確かな信頼と興味を抱いているようだった。


「これからも、君の力を貸してくれるか?」


 エリザの問いかけに、玲二は真剣な表情で頷いた。


「もちろんだ。俺もこの世界で、もっと多くのことを知りたい。君と一緒なら、それができると思う」


 エリザはその答えに満足げに微笑み、玲二に寄り添った。彼女の距離感は少しずつ縮まり、彼女が玲二に対して抱く感情も変わり始めていた。

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