第8話 異変の兆し
その日は、晴れ渡る青空の下、二人は広大な草原を歩いていた。玲二は周囲の風景を見渡しながら、この世界の壮大さに感心していた。エリザは彼の横を歩きながら、これまでの旅路について振り返っていた。
「君が来てから、本当に多くのことが起きたな。まだ信じられないよ、君が異世界から来たなんて」
エリザの声に玲二は笑みを浮かべた。
「俺もだよ。まさか異世界に転生して、こんなにすぐに戦うことになるなんて思わなかった」
その時、玲二の視界の端に不自然な動きがあった。遠くの森の方から、黒い煙が立ち上っている。直感的に何かがおかしいと感じた玲二は、すぐにエリザに声をかけた。
「エリザ、あれを見ろ」
エリザもすぐに煙に気づき、表情を険しくした。
「ただの火事じゃない……これは、何か別のものが関係しているかもしれない」
二人は無言のまま、急いで煙の立ち上る方角に向かって走り出した。距離が縮まるにつれて、煙の正体が次第に明らかになっていった。森の中で広がる炎、その中心には崩壊した建物の残骸が見えてきた。まるで村が襲撃されたようだった。
玲二とエリザが現場に到着すると、そこに待ち受けていたのは、さらに恐ろしい光景だった。村が焼け落ち、その周囲には黒く巨大な獣たちが跋扈していた。獣たちは獰猛な牙をむき出しにし、村の残骸の中で生存者を探し求めているようだった。
「これ……ゴーレムか? いや、それにしては……」
エリザは息を呑んだ。玲二も、目の前の巨大な獣たちに驚きを隠せなかった。彼らの全身は石でできたように見え、炎の中でもまるで傷つく様子がない。
「強敵だな。エリザ、俺が先に行く」
玲二はすぐに戦闘態勢に入り、エリザに一歩下がるように指示した。だが、エリザもまたその獣たちに対して油断はしていなかった。
「気をつけて! これはただのゴーレムじゃない。魔力を帯びている……ただの物理攻撃では倒せないわ!」
玲二はエリザの言葉を聞いて、拳を握りしめた。自分の力がどこまで通じるか、この試練こそが今後の彼の道を決定づけるかもしれない。
「見せてやるさ。俺の力がどれだけのものか!」
玲二は走り出し、最初のゴーレムに向かって拳を繰り出した。だが、その瞬間、ゴーレムが突然動き、玲二の攻撃をかわした。玲二の拳が地面に叩きつけられ、地面が大きく裂けたものの、ゴーレムは素早く距離を取った。
「こいつ、思ったよりも素早い……!」
玲二は驚きつつも、冷静に次の一手を考えた。このゴーレムたちはただの物理攻撃では倒せない。何らかの魔力による防御が働いているのは間違いなかった。
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